セピア色の映画手帳 改め キネマ歌日乗

映画の短い感想に歌を添えて  令和3年より

「眼下の敵」

2012-07-15 01:16:14 | 外国映画
 「眼下の敵」(「The Enemy Below」1957年・米)
   監督 ディック・パウエル
   出演 ロバート・ミッチャム
       クルト・ユルゲンス
       アル・へディソン

 駆逐艦VS潜水艦。
 男なら、もう、それだけでワクワクしてしまいます。(笑)
 時代的背景を含め1957年製作の戦争映画として考えると、非常に珍し
い米独対等映画で、馬鹿なドイツ兵(勿論、日本兵、イタリア兵も)が出て来
ません、それだけで好感度UPです。
 (頼りにならないヒットラー崇拝者が出て来るのは「お約束」)
 お互いが、正々堂々と戦い、正々堂々と騙し合う。(笑)
 戦争なんて非常に陰湿で汚い殺し合いだと思うので、ちょっと綺麗事に過
ぎるんですけど、見方を変えれば、これは戦争映画の形を借りたスポーツ
映画、特にアメリカ人の大好きなアメフト(オフェンスとディフェンスに明確に
分かれてる)の感覚に似た映画です。
 「悲惨と破壊に終わりはない、頭を切り落としても、また、生える蛇だ」(こ
の戦争が終わっても、又、次の戦争が始まる、人間が居る限り争いはなく
ならない)という重いシニカルな言葉も有るのですが、観終わった後に感じ
る清々しさは、その言葉を越えて、戦争映画というよりもスポーツの好試合
を観た感覚と言って差し支えないと思います。
 頭脳、体力、忍耐、自分(達)の全てを賭けて対等の相手と戦う、この男に
とって望み得る最大の理想を、この映画は見せてくれるんです、だから究極
の男の映画とも言えます。女の人、一人も出て来ません。(笑)

 アメリカ新鋭駆逐艦の新米艦長は、新婚の妻をアメリカへ帰国させる途中、
Uボートの攻撃を受け目の前で妻を失った男。
 Uボートのベテラン艦長は、ヒットラーが始めた戦争で二人の息子を戦死さ
せられた男。
 と言って、二人の艦長共、相手を呪うより戦争を憎んでいて、戦場に居るの
は「国民の義務」と思ってる。
 そんな二人が広い大西洋の真っ只中で出会い、命を賭けて戦う。
 「巨大な相手に怯む事無く戦いを挑む」というのはアメリカ人の大好きなパ
ターン、この作品でも、胆力あるドイツの親父に立ち向かう若いタフガイとい
う構図で、それが踏襲されています。

 アメリカの新米艦長は出港以来、一度も艦長室から出ずにいて、皆に「船
酔いしてる素人艦長」と馬鹿にされているのですが、それを一発で逆転し全
乗組員の信頼を得る描写は(上手くいき過ぎですが)巧みで、前半部で一番
好きなシーンです。
 この映画「絶対、最後まで観るぞ!」と思ってしまう程、スカッとさせてくれま
す。
 また、ドンパチ→頭脳戦→ドンパチ→心理戦→ドンパチと続くので、物語に
緩急があり、それが一層面白さをアップさせてると思います。

 ただ、今の映画テンポからすると冒頭の掴み部分が少し長い気がしないで
もない、C・ユルゲンスは説明が要らないくらい一目で人物が解るのですが、
R・ミッチャムの人物設定には、ある程度の説明時間が必要で、その部分を、
もう少し手短に描けていたら尚良かったかもしれません。
 (僕は、ここで作った充分なタメが、中盤、後半に生きてきてると思うのです
が)
  駆逐艦の艦長にR・ミッチャム、対するUボートの艦長はC・ユルゲンス。
 二人とも役に嵌って好演ですが、特にC・ユルゲンスの親父振りは強く印象
に残り、彼の代表作に数えられると思います。

 戦争映画は絶対見ない!という方以外にお勧めの作品。
 傑作と言って良いと思います。

※ドイツ人が英語を喋ってるのが残念と言われますが、当時のハリウッド製
 作の戦争映画で、ドイツ兵がドイツ語を喋ってるのは殆んど無いと思いま
 す、それくらい目を瞑りましょ。(笑)
※潜望鏡を覗きながら「魚雷・・・発射!」(「torpedo・・・lose!」<これは女性
 の方には理解出来ないと思うけど、男は多分、一度でいいから言ってみた
 い(やってみたい)言葉。(笑)



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4 コメント

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おはようございます☆ (miri)
2012-07-15 06:35:20
とてもかわった映画でしたね~。
4月に見たので、まだよく覚えています。

女性が出てこなくて、ドイツ人が英語しゃべって、キレイごと的で
それでも楽しめた戦争映画だなんて、はじめてかも?

>戦争映画というよりもスポーツの好試合
>を観た感覚と言って差し支えないと思います。

何と言うか戦争映画ではなくて、戦争ごっこ映画的な、
潜水艦ゲーム映画というか、残酷さが少ないというか、
そんな感じでした。

よくサッカーの試合を見て「引き分け」でも、
ひきまけ、のときと、ひきがち、のときがあるとおもうのですが、
この映画ではひきがち、見たことない種類の戦争映画で、
でも全然イヤな気持ちがしない、本当に珍しい作品でした。

私は戦争映画をあまり見ない女性にこそ 見てほしいような気がしまそた☆
・・・でもホントよく語られますね~目がパッチリ覚めました(笑)
こんにちわ♪ (鉦鼓亭)
2012-07-15 14:57:17
 コメント、ありがとうございます

この記事UPしたら、そちらへ伺うつもりだったのですが、修正してるうち睡魔に負けてしまいました。

男で40代以上の映画ファンなら、この作品は必修科目。
多分、殆んどの人が見てる。(勝手に断定)
それくらい人気のある作品だと思います。

潜水艦ゲーム>それは、言い得て妙、ズバリです、そこへチェスや将棋の感覚も加えた感じでしょうか。

ひきがち>映画だから両者に花を持たせる結末で(笑)、でも、双方が全力を出し切った後だからイヤな気持ちがしませんよね。
「では、もうロープを投げるまい」
「いや、きっと投げるさ」
このラストの台詞は、「冒険者たち」のリノとドロンの台詞に匹敵するくらい好きな台詞のやりとりなんです。

この映画、書こうとすると「凄く面白い作品です」の1行で終わってしまいそうで・・・。
なんとか行数を稼ごうと四苦八苦した為、ちょっと文章が落第点になってしまいました。
なるべく長広舌は控えようと思ってるのですが、あっさりしすぎてるのも自分らしくない気がして、いつも無用に長くなってます。(笑)
明けましておめでとうございます。 (宵乃)
2016-01-05 07:34:13
今年もどうぞよろしくお願いいたしますね~♪

伺うのが遅れて申し訳ありません。なんか忘れてると思ってたんですよ…(汗)
言われてみれば、本当にスポーツ映画のようでした。正々堂々、持てる力を持ってぶつかり合う男たち。爽やかですね~。
それでいて反戦はしっかり訴えているし、こういう戦争映画は初めてです。

>「船酔いしてる素人艦長」と馬鹿にされているのですが、それを一発で逆転し全乗組員の信頼を得る描写

ここよかったですよね~。自分たちの横を通り過ぎていく魚雷の影を目にしたら、いろんな意味でテンションあがりそう。信頼できる上司がいるってのはいいものです。
当時は「torpedo・・・lose!」と真似する少年たちがいっぱいいたんでしょうね~。
新年、おめでとうございます (鉦鼓亭)
2016-01-05 23:05:18
 宵乃さん、こんばんは
 コメントありがとうございます!

こちらこそ、本年も宜しくお願い致します。

こういう戦争映画は初めてです
>スポーツ感覚で言えば「大脱走」なんかも近いですね。
今と違って、当時の戦勝国(特にハリウッド)の戦争映画で米独対等というのは殆ど記憶にないです。
そういう意味でも極めて珍しい作品だと思います。

信頼できる上司がいるってのはいいものです。
>ドイツの方はパッと見で頼れそうですが、アメリカは民間出の新米艦長(眠たそうな顔だし)。
僕が兵隊でも蔭口叩いてたでしょうね(笑)、でも、あの手並みを見たら・・・惚れます!

子供の頃、ワンコインゲームで潜望鏡覗くの大好きでした。(笑)

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