祝 「午前10時の映画祭」にて上映決定!
鉦鼓亭の1番好きな洋画、ほんわか温かく、ちょっぴり切ない大人の御伽噺。
「フォロー・ミー」 1972年 (米)
監督は「第三の男」、「落ちた偶像」のキャロル・リード。(これが遺作)
脚本は12年後「アマデウス」でアカデミーを獲るピーター・シェーファー
音楽は「007」で有名なジョン・バリー
ギリシャ神話のオルフェウスとユリシーズ(ローマ神話表記で勘弁)のエピソード。
突然、死の国へ行ってしまったユリシーズ、連れ戻そうと死の国の王ハデスに会い
に行く恋人オルフェウス。
そんなオルフェウスにハデスが突き付けた条件、
「太陽を見るまで、オルフェウスは後ろに居るユリシーズを決して見ても喋ってもい
けない、それができたら、お前はユリシーズを再び得ることができるだろう」をヒント
にした物語。
舞台はロンドン、主人公は3人。
ロンドンの上流階級に属し一流会計士のチャールズ(M・ジェイストン)、その妻で
ヒッピーのような生活をしながらロンドンに流れ着いたアメリカ人のべリンダ(M・ファ
ロー)、チャールズに雇われる探偵クリストフォルー(トポル)。
独身貴族だったチャールズが、ふとした切っ掛けでちっちゃなレストランで働きだし
たべリンダと出会う、2人は自分に無いものを相手に感じ、目出度く結婚。
だが、その結婚生活は上流階級の堅物ジェントルマン、チャールズと自由な空気
の中で生きて来たベリンダの価値観の違いから、急速な失望に変わる。
やがて窮屈な家庭生活に耐え切れなくなったベリンダは、ロンドンの街をほっつき
歩くようになり、それを浮気と疑念を抱いたチャールズが探偵社に調査を依頼する。
この映画、良い所が一杯なんですが、やはり、多くの人を魅了したのは、ジョン・バ
リーの柔らかで優しい音楽の中、無言のまま繰り広げられるベリンダとクリストフォル
ーの街歩きのシーンだと思います。
そのシーンは2つ、クリストフォルーがチャールズに調査第一日目の報告をするシ
ーン、もう一つはベリンダがチャールズに、ここ数日の出来事を告白するシーン。
このシーンの数々がとても素敵なんです。
白いスクーターに乗り、白いコート&ハンチングという、やたらに目立ついでたちの
探偵、どこへ行っても変な白い男がくっ付いて来るので最初は気味悪がってたけど、
悪い男でも無さそうだし、自分と同じ仲間のような気がして親近感を抱いてしまうベリ
ンダ。
家庭に居場所が無いベリンダと、空虚な自分と向き合うのが怖くて何十回と職を転
々としてきたクリストフォルーの楽しい追跡劇が始まります。
2人は思いつくままロンドンの街を歩き回ります、ハイド・パーク、ウエスト・エンドの
劇場街、パブ、ナショナル・ギャラリー。
いつしか、それぞれが案内役になって見せたいものを見せるようになっていきます。
ベーコン通り、胡椒通り、ダチョウ街、プリン横丁、名前だけは楽しい横道の数々、
ハンプトンコートの迷路、キュー・ガーデンの温室。
決して喋らず一定の距離を置いたまま。
この映画が好きで、映画に出てくる場所を捜し歩いた日本人も随分居るみたいです、
残念ながら現実は映画のように美しくはないようですが。(笑)
楽しかったひと時は、ベリンダが事の真相を知る事で終りを告げます。
「don't touch me!!」
そう言い捨て、二人の前から姿を消すベリンダ。
失ったものの大きさに初めて気付くチャールズ、探偵も探偵で、キュー・ガーデンで
見付けたベリンダの心が、まだチャールズに有る事を知ります。
そして・・・、失踪から数日後。
テムズ河の遊覧船に白いコートを着たチャールズ、その2つ手前の席には、そ知ら
ぬ顔をしながらも嬉しそうなベリンダの姿が・・・。
まあ、そんな内容の話なのですが、無言のデート?を描いた作品だから、きっと静
かな映画なんだろうとイメージするかもですが、このシーン以外は登場人物達が実
に良く喋るので結構賑やかなんです、そのポンポン飛び交う台詞がシェークスピアみ
たいな警句交じりで、これが又、面白い。
「娼婦と客はお互いを軽蔑しながら抱き合う」
「秘書の居る所、スプーン有り」(これは関係ないか)
そんな台詞の数々を聞いてるだけでも、楽しいんです。
閑話休題、良くレビューなんか見るとM・ファローとトポルは大好評なんですが、M・
ジェイストンの評判がイマイチなんですね、でも、あの役は堅物で面白味の無い男と
いう設定なので上手く演れば演る程、魅力の無い男になっちゃう。
これは同じ監督の「第三の男」で主役ホリー・マーチン(J・コットン~ハリー・ライム
役のO・ウェルズは脇役です)が、やっぱり上手く演じるほど情けない男そのものに
なってしまうのと同じです(実際、J・コットンは一世一代と思える位の好演だった)。
イギリス出身の同業ヒッチコックに、いつも美味しい所を持っていかれるリード監督
の分身の一つなのかもしれないけど、ちょっと貧乏クジで気の毒だと思ってます。
長々と書き連ねましたが、もう、何と言うか頭の先から尻尾の先まで大好きな映画
なんです。
最初の回想シーンの始め、テーマ曲が流れ出し、ハイド・パークの階段をクリストフ
ォルーがこちらに向かって登ってくる、白いハンチングが見え、顔、白いコート、そして
全身が現れる、もう、このシーン見る度にツーンときてしまうんです、恥ずかしながら。
口下手な日本人にとって、一言も喋らずに恋が出来ると云うのは実に楽(笑)で魅
力的なのか、この映画、日本で一番人気が有ります。
周防監督が1996年に作った「Shall We ダンス?」は、この映画をヒントにしてま
すね。
「Shall~」では構図が逆で、夫の行動に不審をもった妻が探偵を雇います、訪ねて
行った探偵社の壁には、ちゃんと「フォロー・ミー」のポスターが貼られてるんです。(笑)
ただ、探偵を女性にすると夫と恋愛関係になってしまい草刈民代さんの出番が無く
なるので、探偵は柄本明でしたが。
隠れた名作(佳作)、人気のある映画なんですが何故かDVD化されてません、鉦
鼓亭が大好きな、もう一つのラブコメ?「ウィークエンド・ラブ」もDVD化されてない、関
係ないけど、ブラック・コメディで一番好きな「魚が出てきた日」もDVDない。
お願いだから、どっかでこの3点DVD化してくれ~~~!!
※原題は「Follow Me! 」、アメリカ以外では、このタイトルで公開されました、アメリカ
でのタイトルは「The Public Eye」、これは私立探偵を意味する「Private Eye」に引っ
掛けたものと言われてます。
・本編とは音楽と画面が一致してないんだけど、これが一番「フォロー・ミー」の雰囲
気を伝えてると思います。
http://www.youtube.com/watch?v=DNWGCJCOQ_Y&feature=related
・「フォロー・ミー」16分割
http://www.youtube.com/watch?v=GvlQ1I0uC1s
H.22.3.13
鉦鼓亭の1番好きな洋画、ほんわか温かく、ちょっぴり切ない大人の御伽噺。
「フォロー・ミー」 1972年 (米)
監督は「第三の男」、「落ちた偶像」のキャロル・リード。(これが遺作)
脚本は12年後「アマデウス」でアカデミーを獲るピーター・シェーファー
音楽は「007」で有名なジョン・バリー
ギリシャ神話のオルフェウスとユリシーズ(ローマ神話表記で勘弁)のエピソード。
突然、死の国へ行ってしまったユリシーズ、連れ戻そうと死の国の王ハデスに会い
に行く恋人オルフェウス。
そんなオルフェウスにハデスが突き付けた条件、
「太陽を見るまで、オルフェウスは後ろに居るユリシーズを決して見ても喋ってもい
けない、それができたら、お前はユリシーズを再び得ることができるだろう」をヒント
にした物語。
舞台はロンドン、主人公は3人。
ロンドンの上流階級に属し一流会計士のチャールズ(M・ジェイストン)、その妻で
ヒッピーのような生活をしながらロンドンに流れ着いたアメリカ人のべリンダ(M・ファ
ロー)、チャールズに雇われる探偵クリストフォルー(トポル)。
独身貴族だったチャールズが、ふとした切っ掛けでちっちゃなレストランで働きだし
たべリンダと出会う、2人は自分に無いものを相手に感じ、目出度く結婚。
だが、その結婚生活は上流階級の堅物ジェントルマン、チャールズと自由な空気
の中で生きて来たベリンダの価値観の違いから、急速な失望に変わる。
やがて窮屈な家庭生活に耐え切れなくなったベリンダは、ロンドンの街をほっつき
歩くようになり、それを浮気と疑念を抱いたチャールズが探偵社に調査を依頼する。
この映画、良い所が一杯なんですが、やはり、多くの人を魅了したのは、ジョン・バ
リーの柔らかで優しい音楽の中、無言のまま繰り広げられるベリンダとクリストフォル
ーの街歩きのシーンだと思います。
そのシーンは2つ、クリストフォルーがチャールズに調査第一日目の報告をするシ
ーン、もう一つはベリンダがチャールズに、ここ数日の出来事を告白するシーン。
このシーンの数々がとても素敵なんです。
白いスクーターに乗り、白いコート&ハンチングという、やたらに目立ついでたちの
探偵、どこへ行っても変な白い男がくっ付いて来るので最初は気味悪がってたけど、
悪い男でも無さそうだし、自分と同じ仲間のような気がして親近感を抱いてしまうベリ
ンダ。
家庭に居場所が無いベリンダと、空虚な自分と向き合うのが怖くて何十回と職を転
々としてきたクリストフォルーの楽しい追跡劇が始まります。
2人は思いつくままロンドンの街を歩き回ります、ハイド・パーク、ウエスト・エンドの
劇場街、パブ、ナショナル・ギャラリー。
いつしか、それぞれが案内役になって見せたいものを見せるようになっていきます。
ベーコン通り、胡椒通り、ダチョウ街、プリン横丁、名前だけは楽しい横道の数々、
ハンプトンコートの迷路、キュー・ガーデンの温室。
決して喋らず一定の距離を置いたまま。
この映画が好きで、映画に出てくる場所を捜し歩いた日本人も随分居るみたいです、
残念ながら現実は映画のように美しくはないようですが。(笑)
楽しかったひと時は、ベリンダが事の真相を知る事で終りを告げます。
「don't touch me!!」
そう言い捨て、二人の前から姿を消すベリンダ。
失ったものの大きさに初めて気付くチャールズ、探偵も探偵で、キュー・ガーデンで
見付けたベリンダの心が、まだチャールズに有る事を知ります。
そして・・・、失踪から数日後。
テムズ河の遊覧船に白いコートを着たチャールズ、その2つ手前の席には、そ知ら
ぬ顔をしながらも嬉しそうなベリンダの姿が・・・。
まあ、そんな内容の話なのですが、無言のデート?を描いた作品だから、きっと静
かな映画なんだろうとイメージするかもですが、このシーン以外は登場人物達が実
に良く喋るので結構賑やかなんです、そのポンポン飛び交う台詞がシェークスピアみ
たいな警句交じりで、これが又、面白い。
「娼婦と客はお互いを軽蔑しながら抱き合う」
「秘書の居る所、スプーン有り」(これは関係ないか)
そんな台詞の数々を聞いてるだけでも、楽しいんです。
閑話休題、良くレビューなんか見るとM・ファローとトポルは大好評なんですが、M・
ジェイストンの評判がイマイチなんですね、でも、あの役は堅物で面白味の無い男と
いう設定なので上手く演れば演る程、魅力の無い男になっちゃう。
これは同じ監督の「第三の男」で主役ホリー・マーチン(J・コットン~ハリー・ライム
役のO・ウェルズは脇役です)が、やっぱり上手く演じるほど情けない男そのものに
なってしまうのと同じです(実際、J・コットンは一世一代と思える位の好演だった)。
イギリス出身の同業ヒッチコックに、いつも美味しい所を持っていかれるリード監督
の分身の一つなのかもしれないけど、ちょっと貧乏クジで気の毒だと思ってます。
長々と書き連ねましたが、もう、何と言うか頭の先から尻尾の先まで大好きな映画
なんです。
最初の回想シーンの始め、テーマ曲が流れ出し、ハイド・パークの階段をクリストフ
ォルーがこちらに向かって登ってくる、白いハンチングが見え、顔、白いコート、そして
全身が現れる、もう、このシーン見る度にツーンときてしまうんです、恥ずかしながら。
口下手な日本人にとって、一言も喋らずに恋が出来ると云うのは実に楽(笑)で魅
力的なのか、この映画、日本で一番人気が有ります。
周防監督が1996年に作った「Shall We ダンス?」は、この映画をヒントにしてま
すね。
「Shall~」では構図が逆で、夫の行動に不審をもった妻が探偵を雇います、訪ねて
行った探偵社の壁には、ちゃんと「フォロー・ミー」のポスターが貼られてるんです。(笑)
ただ、探偵を女性にすると夫と恋愛関係になってしまい草刈民代さんの出番が無く
なるので、探偵は柄本明でしたが。
隠れた名作(佳作)、人気のある映画なんですが何故かDVD化されてません、鉦
鼓亭が大好きな、もう一つのラブコメ?「ウィークエンド・ラブ」もDVD化されてない、関
係ないけど、ブラック・コメディで一番好きな「魚が出てきた日」もDVDない。
お願いだから、どっかでこの3点DVD化してくれ~~~!!
※原題は「Follow Me! 」、アメリカ以外では、このタイトルで公開されました、アメリカ
でのタイトルは「The Public Eye」、これは私立探偵を意味する「Private Eye」に引っ
掛けたものと言われてます。
・本編とは音楽と画面が一致してないんだけど、これが一番「フォロー・ミー」の雰囲
気を伝えてると思います。
http://www.youtube.com/watch?v=DNWGCJCOQ_Y&feature=related
・「フォロー・ミー」16分割
http://www.youtube.com/watch?v=GvlQ1I0uC1s
H.22.3.13
観たのは一度きりなんですが、鉦鼓亭さんの記事を読んでたら、わたしはまだこの作品を味わいつくしてないなぁと感じました。
この作品は雰囲気がとてもよくて、それにひたっているだけでも満足できちゃいますよね。
だからこそ再見の楽しみがあるのかな?
>M・ ジェイストンの評判がイマイチなんですね、でも、あの役は堅物で面白味の無い男と
いう設定なので上手く演れば演る程、魅力の無い男になっちゃう。
確かに。わたしの感想では、彼について一言も触れてませんでした(笑)
次ぎ観る時は、彼のこともしっかり観たいと思います!
ギリシャ神話からヒントを得た話>公開当時は、よく雑誌にそんな事が書いてあったんですけど、最近は見かけませんね。
この記事をUPする時、当時のパンフレット引っ張り出して探したんですけど、そこにも無かった。(笑)
でも、話の骨格は似てるんで間違いないと思います。
(去年、「のだめカンタービレ」読んでたら、モーツァルトの歌劇「魔笛」第2部にも似たようなシチュエーションが有るんで吃驚、西洋人の作劇法と神話は、やはり密接なんだなと思いました)
M・ ジェイストン>舞台の人で、シェークスピア劇の役者という事だから、下手というのは無いと思います。
トポルが温室でミアを発見したシーン>最初、何とか「自分と暮らさないか」みたいにアタックを掛けるんですが、ミアの心が、まだ夫に有ると解って・・・、
温室の入り口の所で見せるトポルの表情が、何とも切なくていいんですよね。
お散歩シーン以外では、ここが一番好きです。
この映画、2度目に嵌る人が多いんですよ。
初見の時は、どうしても最初の20分位がカッタルイって印象を持っちゃうんだと思います。
TBありがとうございます。
こちらからも、させて頂きます。
※記事中にある「魚が出てきた日」、見直してみたら限りなく凡作に近かった。(大汗)
観終わった後、いい気分になれました。
>無言のまま繰り広げられるベリンダとクリストフォルーの街歩きのシーンだと思います。
良かったです。
二人の微笑み、駆け引き・・・・・素敵でした!
>M・ジェイストンの評判がイマイチなんですね
表情豊かなトポルさんと比べると
オイシクない役どころでしたよね。
でも、ラストの船上でミア・ファローに対して浮かべる微笑み、
冒頭のトポルと比べると何十倍も固くてぎこちない微笑みなんですけど、(笑)
彼なりの愛情が伝わってきてとてもよかったです!
「サボテンの花」に出てきたアパート?取り壊しを眺める場面、
確かに本作にも似たような場面がありましたね!
観てくれたんですね、ありがとうございます!!
観終わった後、いい気分になれました>
この作品が日本で人気があるのは、多分、そこが一番、日本人の気性に合ったんじゃないかと思っています。
柔らかな気持ちになれて、恋に憧れたり、恋をしてた頃を思い出したり・・・。
街歩きのシーン>偶にですけど、この映画を思い出して、ゆで卵を頭で割ります。(笑)
M・ジェイストン>最初の頃は、「この堅物が!」なんて思ったこともありましたが、
結婚してみると、彼の言い分がよく解かる。(笑)
何度も観てるうちに、この三人をセットで大好きになりました。
この作品、映画館で映画を観るようになって2本目の作品だったんです(本当に好きになったのは、半年後に再見した時)、最初の頃だったから、個人的に思い入れの、とっても強い作品なんです。
マミイさんのアップでまた再、再、再見したくなりました!
(根強い人気のフォローミーは、やはり記事後まもなくDVD化されました)
TBしましたがうまく着地できてたら良いのだけど・・・。
着地失敗ならマミイさんのとこには先ほど届けています。時間があればお読みくださいませ。
実は僕も「フォロー・ミー」を検索してた時、しずくさんの記事にぶつかりまして・・・。
いつか、この作品の事で伺おうと思ってたのですが、「思い入れ」(お互いに~笑)の強い作品のようなので、こちらも、「心して行かねば」と思ってるウチに時間が経ってしまいました。(汗)
若い頃(僕は高3でした)、これを観る事が出来たお陰で、ベリンダ、チャールズ、クリストフォルー、それぞれの思いを無理なく実感しながら歳をとる事が出来ました。
若い多感な時に出会えて「幸せ」だったと思っています。
TB、無事、着地成功。
ありがとうございます。