セピア色の映画手帳 改め キネマ歌日乗

映画の短い感想に歌を添えて  令和3年より

「ひとりぼっちの青春」

2010-11-03 02:50:57 | 外国映画
 「バーバレラ」でロジェ・ヴァディムに愛想を尽かし、アメリカへ戻って出
演した最初の作品、ヴァディムへの反動、J・フォンダのこれからの10年
が暗示されてます。
 この映画に関して言える事は、「いい時に巡り会った」に尽きると思いま
す。
 高3と云うアンバランスで感受性が強く、そして、大人の世界を知らない
(今でも、解りませんが)微妙な時、受験勉強の合間、将来への不安、そ
して当時から強かった人間不信。
 そう云う感情と映画の内容が強烈に共鳴してしまった映画、地元の名
画座で「J・フォンダが出てる」とウキウキしながら観に行き、以後、映画に
嵌まる決定打になった作品、僕の1、000本近いリストの中で、洋画ベス
ト2の作品です。
 この映画は、他人に勧められる映画とは違います、内容は暗く、完璧に
救いは無く、有るのは絶望だけ。
 これを観たのは17の時ですけど、この映画が描写する、「人間は他人の
不幸を眺めて喜び、安心する」は、鉦鼓亭に強烈に刻み込まれました。
 その思いは、今もそれ程変わっていません、むしろ、今の風潮、自分より
上の生活をしてる者を妬み、許せずに、引き摺り下ろし、次の獲物を飽きる
事ない執念で探し回るのを見てると、映画の時代より一層浅ましくなってい
るのでは、とさえ思います。
 人間が永遠に持つ宿命、「欲望とジェラシー」が正義の名の元で合理化
されてハイエナ化していく。「009~ヨミ編」で悪の象徴「ブラック・ゴースト」
の最後のメッセージに納得してしまった僕が(勿論、ラストシーンの姉の台
詞にも共感します、交じり合えない善悪ニ元論ではありますが)、次に辿り
着いた例示が、この映画です。
 舞台は20世紀初頭、大恐慌時代のアメリカ西海岸、1ヶ月以上続く「マラ
ソン・ダンス」と云う競技の中で、出場者達が壊れていくサマを描いてる映
画です。
 映画を観終わって、救いようもない結末に暗然として、映画館を出て来る
のですが、すぐ解るんですよ、映画を観てた自分は、決して競技者と云う
見世物じゃなく、それをポプコーン口に放り込みながら見ていた観客と同じ
だって。それは、「自分は正しい」と思い勝ちな10代には強烈なパンチでし
た。

 こんな映画です。
 http://www.youtube.com/watch?v=612kUnqBM7o&feature=related
 用もないのに、マラソンに付き合って「どっと疲れる」、観終わった後、そ
んな感覚に襲われる映画です。(笑)

(注)「マラソン・ダンス」、大恐慌時代、アメリカで実際に行われていたが、
その「非人間性」が問題となり、景気の回復と共に中止された競技(?)。
 そのルール。 
 1.2時間踊り(身体を揺らし続ける)10分休憩、それが、昼夜問わず
延々と続けられる。
 2.食事は踊りながら摂る。
 3.静止状態、或いは膝が10秒以上地面に着くと失格。(レフリーが絶
えず監視している)
 4.男女のカップルで出場、どちらかが失格となった場合、24時間以内
に新しい相手(出場者の中で)を見つけないと失格。
 5.優勝カップルにのみ賞金が与えられる。
 
 実際はどうだったか解らないけれど、映画では1,000時間(一ヶ月以
上)を越えても、決着は付いてなかった。
 鉦鼓亭、こんな「見世物」やってた国に、人権問題を言われたくない。

(注2)邦題は、気を効かした(笑)タイトルになってますが、
    原作ホレイ・マッコイ「THEY SHOOT HORSES, DON'T THEY?」
    タイトル訳は30年の間、いろんなのが出ました、今のスタンダードは
   「彼らは廃馬を撃つ」、鉦鼓亭の訳は「だって、廃馬は撃ち殺すんだろ?」。


                                  H.21.9.21
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4 コメント

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Unknown (鉦鼓亭)
2013-10-23 22:25:59
 マミイさん、コメントありがとうございます

初見が40年前ですから、僕も充分にナイーブだった。(笑)
暗い高校生活と暗いテーマが思いっきりシンクロしたんでしょうね。
観てる最中は、完璧に二人と同化してました。

人は全ての事に疲れ切ってしまうと、トラウマのような強烈な記憶と習慣しか、脳神経に残らないのかもしれませんね。

「止めなよ、生きていれば何かあるかもしれないじゃないか」
あの状況で、それが言えるか、僕には自信がありません。
多分、同じ事をしたんじゃないかと・・・。
それ程、この映画の絶望感は強かったです。

終わらずに>あの「何事もなく」、の雰囲気がトドメの一撃。
一片の救いも無くって。

いい映画を紹介していただいてありがとうございました!>
こちらこそ、ド真っ暗な映画にお付き合い頂いて、只々、感謝です。
ありがとうございました。
返信する
Unknown (マミイ)
2013-10-22 21:20:18
>そう云う感情と映画の内容が強烈に共鳴してしまった映画
私も彼らと同年代に観たら非常にのめりこんだと思います。
精神崩壊寸前まで追い詰められていたかもしれません。
今はもちろん壊れたりはしませんけど、(笑)
彼らの気持ちはわかりました。
(既に過去形で思うのが年を取った証拠ですね。)

廃馬・・・・ロバートは精神が壊れてしまって
少年時代の思い出と現在を混同してしまっていたように思います。
自分たちを廃馬だと思ってしまうような状況が
せつない、やるせないなぁと思いました。
(マラソン・ダンス大会が終わらずに続いているのも
余計にやるせなかったです。)

いい映画を紹介していただいてありがとうございました!
返信する
ありがとうございました! (鉦鼓亭)
2012-09-29 23:37:39
 miriさん、こんばんは
 映画を観て頂き、ありがとうございます!
 お疲れになったのではと心配してます。

シドニー・ポラック>中期以降は随分丸くなっちゃいましたが、これは、まだ尖んがってた初期の作品なので毒気が一杯です。

良い時期>自分の中の虚無感と映画のラストの虚無感がピッタシ合ってしまったんだと思います。
「自分の存在に関係なく世の中は動き続け、カーニバルは終わらない」

題名に関しては昔から、ずっと?マークが抜けてるんですよね(小説の邦題)。
何かTHEYに拘りすぎてる気がします。
僕としては「人が廃馬を撃つのは何故か?」が一番意味が通ると思ってるんですが。
人は馬ではない>のですが、働き蜂になったり泥棒猫になったりします。(笑)

フラッシュ・バックの反対>フラッシュ・フォワードと言うらしいです。
僕は初めてだったので面白かったです、パズルみたいで。

力>負のパワーかも(笑)
派手な山場はダービーくらいしかないのに、ラストまで引きずっていかれる「得体の知れないもの」が確かに有ると思います。

最後のシークエンスの裏付けが弱過ぎて>リタイア→絹のストッキング紛失→発見→破ける
僕は、このシーンが一番「やるせない」です、ロバートの発砲シーンよりも。
張り詰めていたものが一気に無くなり、挫けて、それでも意地でつま先一つで踏ん張ってたのに・・・。
最後の一押しは小指一つで充分だったと思います。
だから、僕は最後のシークエンスに納得しています。

「マラソン・ダンス」なるものが本当に有ったのか、100%は信じられなかったのですが、今年始めに観た「お熱いのがお好き」の最初のほうで(闇酒場での演奏シーン)
レモン「何で欠員が出たたんだ?」
カーティス「マラソン・ダンス(の演奏)に引っこ抜かれたんだと」
ってのが有りましたから、本当なんですね・・・。
ちなみに記録では2000時間を超えるのも有ったそうです。
返信する
こんにちは☆ (miri)
2012-09-29 11:06:42
鉦鼓亭さんのブログを読ませて頂くようになってから
この映画のタイトルを何度も聞いたので、
気になっていて、借りて見ました☆
記事は鑑賞後に初めて読ませて頂きました。

>この映画に関して言える事は、「いい時に巡り会った」に尽きると思います。

そうでしょうね~。 良かったですね。
私はこの映画を見終わって、一番最初に思ったのは、
「この映画は一体ぜんたい誰に向けて、どんな想いで公開されたのかな~?」
という事でした。 ・・・答えが出ました(笑)。

>実際はどうだったか解らないけれど、映画では1,000時間(一ヶ月以上)を越えても、決着は付いてなかった。

一瞬・記録映画か?と思ったのですけど、
それは最後のシークエンスで、違うと分かりましたし・・・。

>以後、映画に嵌まる決定打になった作品、僕の1、00本近いリストの中で、洋画ベスト2の作品です。

前に、私も最初の一年目に見た作品は、他の年に見た作品と違うと書きましたが、
この文章の意味では、私の場合は、そうではないです・・・
それで考えたのですけど、やっぱり子供だったからではないかな~???と。

今の私の中で鉦鼓亭さんの仰る意味で残っている作品の多くは、
高3くらい~21歳くらいまでに見た作品のようです。
最初の1年ではフランス映画は一本も見ていませんしね(爆)。

・・・そう思うと、本当に良い時期に
(そういう意味での)良い作品群に出会われましたね!

先日「アイズ・ワイド・シャット」再見したばかりで、この監督が出演していたし、
いろんな作品に関わっていて、不思議な人ですね。
この作品はちょっと変わっていますよね・・・。

でも、この作品はものすごい力を持って、引っ張ってくれました。
最近では珍しいくらいの「力」で、です。

>今のスタンダードは「彼らは廃馬を撃つ」

私的には、人間は馬ではない、ですね・・・。
最後のシークエンスの裏付けが弱過ぎて、意味プーさんです。

あと、相手役の俳優さんが疲れてきてからはオダジョーに激似で困りました(爆)。
あの「フラッシュ・バックの反対」っていうやり方、好きではないです。
ある作品で見て、こりごりでした・・・反則的な感じで。
まぁこの映画の中では反則的ではなかったけど、分かりにくいですよね・・・。

でも、全体的には、見て良かったと思っています。
こういう強い力を持った作品は、内容とかではなく、
何かあるのだと思えますので・・・。
返信する

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