セピア色の映画手帳 改め キネマ歌日乗

映画の短い感想に歌を添えて  令和3年より

「冒険者たち」

2012-03-27 23:56:09 | 外国映画
 「冒険者たち」(1967年・仏)
   監督 ロベール・アンリコ
   音楽 フランソワ・ド・ルーべ
   出演 アラン・ドロン
       リノ・バンチュラ
       ジョアンナ・シムカス
       セルジュ・レジア二

 現在、40代半ばから60代の映画ファン、特に男達にとって一種のバイ
ブルとでも言うような作品。
 ロマンティズム、ファンタジー、ダンディズムを具現化した美しい抒情詩。
 秀逸な「青春へのレクイエム」
 だから、ちょっと感覚的な映画なのかもしれません、受け付けない人もい
ると思います。

 パリで、それぞれの夢の実現を目指す、パイロットのマヌー、カーエンジ
ニアのローラン、アーティストの卵レティシア、3人が織り成していく恋と友
情の物語。
 映画はトップ・クレジットが終わって10分程で3人の出会いと、それぞれ
の個性を手際良く的確に描いていきます。
 特に物語の最初の句点になる、ローランのレッカー車とレティシアを乗せ
たマヌーの複葉機が併走するシーンは、車と飛行機が、まるで飼い主にじ
ゃれ付く子犬のようで、実に楽しく美しい詩的なシーンになっています。
 やがて物語は、パリを離れ陽光煌くコンゴの青い海に、そして、フランス
西部ラ・ロシェルにあるボワイヤール砦へと・・・。
 
 この作品を成功させた主因は、アラン・ドロン、リノ・バンチュラ、ジョアン
ナ・シムカスの主役3人。
 この中の誰が欠けても、このような名作に仕上がらなかったと思います。
 そのなかでも、話の中心になるJ・シムカスは素晴らしく、清楚で端正な
顔立ちに秘めた強い意志と自我、大人の女を感じさせながらも遊び心に
溢れた少女っぽさが魅力的で、更に、スレンダーながらも、くびれたウエ
ストで抜群のスタイル。A・ドロンの美貌と野性に真っ向対抗出来るナチュ
ラルな美しさがありました。
 映画館の暗い世界で淋しい青春を送っていた野郎共にとって、J・シム
カス=レティシアは眩しすぎる永遠のマドンナになりました。
 そんなシムカスに負けず劣らず魅力的だったのがL・バンチュラ。
 中年に差し掛かろうとしてるオッサンではありますが、ドロン、シムカス
には無い人生の積み重ねによる渋さがあり、男の本当の格好良さを感じ
させます。この映画で、一番美味しい所を持ってちゃった人。
 A・ドロン、前半は天性の美貌、中盤はワイルドな野性味、終盤は陰りと
憂いを滲ませ切なさを感じさせる。
 これだけやっても3人の中で一番貧乏クジを引いた感じがしますが、A・
ドロンにとって、この作品は「太陽がいっぱい」と並ぶ代表作になったと思
います。
 最後のドロンとバンチュラの会話が有ってこその永遠の名作なのですか
ら。

 そして忘れてならないのが、フランソワ・ド・ルーべの音楽。
 主役3人に決して劣らない功労者。
 「レティシアのテーマ」における甘くも哀愁感溢れる口笛、ピアノ。
 クリスチャン・ルグランによるレクイエム「海底への葬列」の切な過ぎる
スキャット。
 映画「冒険者たち」は、ドロン、バンチュラ、シムカスとド・ルーべの音楽
で1セットの作品なんだと思っています。

 まるで数字のゼロを示すかのようなボワイヤール砦の空撮、青い海に
虚しく孤立する砦が徐々に小さくなっていく場面を観ていると、自分では
まるで大した事のなかった青春ではあるけれど、甘味で苦い青春の終わ
りを明確に感じさせてくれるのです。
 
 
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2 コメント

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この映画に出会えて良かったと心底思える作品の一つ (鉦鼓亭)
2012-06-21 23:04:25
コメント、TB、ありがとうございます!

僕達の世代だと、初見はTVの吹き替え版というのが殆んどだと思います。
野沢那智、森山周一郎、鈴木弘子のトリオなんですけど、これが本当にピッタリで、雰囲気が原版といささかも変わることがなかった。
それが、僕達の世代に凄く人気のある原因の一つなんだと思います。

「シシリアン」のバンチュラも好きなんですけど、やっぱり、僕はバンチュラといえば「冒険者たち」。
学生時代は、かなり憧れてました。(笑)
ドロンも、喰われちゃってるんだけど、この時のドロンが一番好きですね、特に髭面の時のドロンがいいです。

シムカスは、本当に眩しいって感覚。
財宝を「大粒、大粒、大粒、大粒。小粒、小粒、小粒、小粒~」って歌うように分配していく所は、コケッティッシュといかキュートというか・・・、ちょっと、言葉に出来ません。(笑)
メタル・ドレスも格好良かった。

3~4ヶ月に一度は禁断症状?が来て、DVDを引っ張り出してしまう作品なんです。
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雰囲気に浸れる作品 (宵乃)
2012-06-21 10:21:05
本当にこの3人の組み合わせと音楽があってこその作品でしたね~。前半は何だろう?と思って観てましたが、後半に入る頃にはぐいぐい引き込まれて、観終えてしばらくは余韻に浸れました。
バンチュラが素敵すぎて、ドロンの印象が薄いです。あのラストには欠かせない人ですけど(笑)
シムカスもいいですよね。彼女の長い髪が揺れると、なんだか惑わされてしまいそう。
昔の短い感想記事でちょっと恥ずかしいですが、TB送らせて頂きました。
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