セピア色の映画手帳 改め キネマ歌日乗

映画の短い感想に歌を添えて  令和3年より

「シベールの日曜日」から、あれこれ

2010-11-03 11:47:01 | 外国映画
 「シベールの日曜日」と「フォロー・ミー」、この2本の映画を考えると「時代は変
わった」なんて年寄りじみた感慨を抱きます。
 どちらも30~40年前の映画なんですけど、今なら「シベールの日曜日」はロリ
コン映画、「フォロー・ミー」はストーカー映画ってレッテル張られるのが必定。
 思えば僕の10代から20才過ぎくらいまで、変質者による少女への犯罪もスト
ーカーによる深刻な被害も、今みたいに日常茶飯ではなかったから作れた作品
なのかも知れません。 
 鉦鼓亭、「フォロー・ミー」は洋画で一番好きだし、「シベールの日曜日」もずっと
記憶に残る好きな映画です。
 シベール化粧品の名は、この映画に感動した創業者が自社名にしたなんて逸
話もあります。
 「シベールの日曜日」(「Cybele ou les Dimanches de Ville d'Avray」(「シベー
ル、或いはビル・ダヴレィの日曜日」1962年 (仏) 監督セルジュ・ブールギニ
ョン)
 インドシナ戦争で記憶喪失になった男と、親に捨てられ心を閉ざしたまま孤児
院で暮らす少女シベールが、パリ近郊の街ビル・ダヴレィで織り成す心の交流。
 やがてそれは、周囲の大人達の無理解によって或る結末を迎える。
 鉦鼓亭も若い時分は大人達の無理解に「酷いなぁ」なんて思いました、単純な
んで。
 でも、今、年頃の娘を持つ親になってみると、「まあ、悲惨な結果ではあるけど、
致し方ないのでは」なんて思います、それだけ感性が鈍ったと言うか汚れたんで
しょうかね、ただ、弟も娘が居るんで、この感想は全く同じでした。
 この映画、記憶喪失の男を演じたH・クリューガーもいいんですが、少女シベー
ルを演じたP・ゴッジが滅茶苦茶いいんです、まあ、だからロリータ映画の元祖な
んて言われるハメになっちゃったんだけど。
 少女が一時期持つ、儚さと可憐、その裏にある傲慢と独善、デリケート過ぎる心
の揺れ、そう云うものが非常に上手く表現できてる~その歳でしか出来ない演技
でもあるけど。
 その2人が遊ぶ冬の公園、白黒撮影の傑作の一つに数えられるほど美しい叙
情的な画面。
 名手H・ドカエが日本の墨絵を参考にして撮影したといわれる美しいシーンの数
々、個人的な感想を言えば、P・ゴッジの好演とH・ドカエの撮影で不朽の名作の
一つに数えられる映画になったとも思えます。
 白黒が美しい?
 全てとは言いません、が、白黒撮影の傑作は決してカラー作品に劣るものでな
いと鉦鼓亭は思っています。
 例えば「第三の男」や「椿三十朗」、「赤ひげ」のコントラスト、「羅生門」や「用心
棒」の白と黒の間の無限のグレー、これはカラーでは表現できないと思います。
 カラー作品の欠点は見た目の色が完全に指定され、想像力を働かす余地が無
い、見た目の赤色はそれ以上でもそれ以下でもなく、それだけなんです。
 対して良く出来た白黒映画は色が無い分、沢山の色を感じさせてくれるのです、
「七人の侍」をカラーで観たいと云う人がいますが、僕からすれば考えられない事
です。
 墨絵には墨絵の良さが、ゴーギャンやゴッホにはゴーギャン、ゴッホの良さが
有ると言う事です。
 それと映画という虚構は、色にしろ画質にしろクオリティーが高すぎるのは馴染
まない気がします。
 TV時代劇にビデオ撮影が導入され画面が鮮明になったお陰で(「水戸黄門」)、
時代劇という虚構が現実に引き寄せられ過ぎて虚構としてのリアリティが失われ、
却って安っぽくなってしまったと思うのは僕だけのでしょうか。

 ロリータって言えば、「小さな恋のメロディ」も少年と少女の愛を描いた映画と思
われがちなんだけど、あれは、鉦鼓亭の解釈だと結婚制度とイギリスの階級社
会を笑い飛ばした風刺劇、一部ではアイドル映画とも間違われてますね、風刺
劇としては非常に良く出来た映画だと思ってます。
 少年と少女の初恋物語としては、73年のアメリカ映画「ジェレミー」も有りまし
た、ちょっと「恋・メロ」の柳の下を狙った感じもしますが、悪くはなかったと思って
ます。
 こっちは典型的な初恋物語で決着のつけ方も思いっきりありきたりなんだけど、
2人のHシーンが有るのがちょっと異色、今じゃ問題になるかもですけどね、あと、
ヒロインのG・オコーナーが如何にもというか、どこにでも居そうなアメリカ少女で、
それ程可愛くないのが妙にリアルっぽかった。
 でも、とってもピュアな感じのする映画。
 あ、もう一つ、男の子を演ってたロビー・ベンソン、今もまだ現役だそうで、こうい
う役を演った子って大概は消えてくんだけど、しぶとく生き残りましたね、大したも
んです。

 また、だらだらと書き連ねてしまいました。 
 何か、世の中、どんどん潔癖になってきて、ちょっとした事でも許す事ができな
くなり、鉦鼓亭、酸欠の金魚みたいな気分で憂鬱です、根が思いっきりズボラで
すから。

※(5.2追記)
 ロリコン趣味(鉦鼓亭はロリコン嫌いです、大人の女の色気が好きです)が暴走
してる今、この映画も巻き添えを食って排除、封印されてるみたいですね。この映
画は絶対ロリコン映画ではなく、記憶喪失で子供に帰った男と孤独な少女の心の
交流を美しく描いた作品です、この二人に性は感じません、むしろ、この映画、「性」
を排除してるとさえ思います、男・ピエールと恋人兼看護婦のマドレーヌとの間でさ
え「性」は排除されてる気がします。
 そのマドレーヌの台詞、(自分の同僚に向けて)「病気なのは貴方達の方よ、これ
っぽっちも理解しようとしないで、排除するだけ・・・」
 ただ少女と男の話と云うだけで誤解を怖れて葬り去ろうとする人々、砂利と真珠
の選別が面倒だと云って一緒くたに排除してしまう事なかれ主義、40年前の彼女
の台詞は今の時代にも充分通用するんじゃないかと思います。
※「病気なのは貴方達の方」で同時代の同じ国の映画を思い出しました、タイトル
は「まぼろしの市街戦」 町外れの精神病院の中で平和に明るく暮らす患者達、折
りしも町では戦争中の両国が衝突、双方の軍は全滅、それを眺めてた患者たちが
「気が狂ってる」って呆れかえる。アイロニーとエスプリに満ちた名作です。
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2 コメント

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Unknown (マミイ)
2014-01-07 20:51:05
鉦鼓亭さん、こんばんは。
トラックバックありがとうございました。

>「まあ、悲惨な結果ではあるけど、
>致し方ないのでは」なんて思います
やっぱりそう思いますよね。
当人同士の思いはどうあれ、
他人はそういう判断をしてしまいますよね。

>少女シベールを演じたP・ゴッジが滅茶苦茶いいんです
本当に愛らしくって目が釘づけでした。
実は、続けて「かもめの城」を観たのですが
シベールのイメージを払拭できず
「かもめの城」の方はイマイチでした(^^;
(後ほどかもめの記事にお邪魔します。)
返信する
Unknown (鉦鼓亭)
2014-01-07 22:58:53
 マミイさん

こちらこそコメント、TBありがとうございます。

これを初めて観たのは高2の頃だから、どうしても立ち位置が二人の側なんですよね。(笑)
大人になってから観ると、昔みたいに「純粋」に酔えなくなるのは仕方ないコト。

でも、とっても綺麗な映画だし、「伝わるもの」は、大人になって観ても、しっかり伝わってくると思います。
P・ゴッジは目が可愛い(笑)、着てる服も、あの頃、「フランス人って子供でもオシャレなんだ・・・」と思ってしまうくらい印象的でした。
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