国立大学職員日記
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■はじめに
 今回のエントリーは「旅費」についてです。
 国立大学(あるいは国家公務員)の「旅費」と聞くとどうもカラ出張やら不正経理というイメージが強く流布しているようですが、その詳細については思ったより知られていない印象を受けます。そこで今回は、国立大学における旅費について、その内容や実際の支給額の比較などを行ってみました。
 先月、大阪大学で出張に絡む不正経理事件があっただけに、国立大学関係者としてはあまり偉そうに講釈たれる身分に無いのですが、まぁそういう不正経理事件を糾弾するに際しても情報はいろいろ必要だと思うので、とにかくそういった何やかやの一助になれば幸いです。

■そもそも「旅費」とは何か?
 厳密な定義はその手の専門家に譲るとして、「旅費」とは簡単に言うと「出張に対し支給される手当」のことで、国家公務員や国立大学における「旅費」は「鉄道賃」「船賃」「航空賃」「車賃」「日当」「宿泊料」「食卓料」「移転料」「着後手当」「扶養親族移転料」「支度料」「旅行雑費」「死亡手当」の13種類で構成されています。
 このように列記すると、その数の多さから「国家公務員や国立大学の旅費」は「非常に高額なものである」という印象を覚えるかもしれません。しかし、実は上記13種類の多くが特殊な場合や例外的な場合をカバーするために含まれているもので、実際には「旅費」という概念は「交通費」(「鉄道賃」「船賃」「航空賃」「車賃」の総称)「日当」「宿泊費」の3要素で処理されている、といっても過言ではありません。
 下の図は上記13種類の「旅費」を支給する場合のそれぞれの出張類型と、その頻度を分かりやすくまとめたものです。上記13種類の中には「赴任」に関するものが3種類ありますが、これは「出張に関する手当」というよりかは「採用にかかる手当」に近いため、今回はそれが存在することだけの紹介に留め、その詳細については省略させていただきます。



■国立大学における旅費規程の違い
 さて、先に「国家公務員や国立大学の旅費」と表現しましたが、「国家公務員の旅費」と「国立大学の旅費」には明確な違いがあります。それは「支給根拠となる法令の違い」です。
 国家公務員の場合、その支給根拠は当然に「法律」であり、具体的には「国家公務員等の旅費に関する法律」(通称「旅費法」)に支給根拠が置かれています。一方、現在の国立大学は法人化しているため、各国立大学の旅費の支給根拠は、各国立大学の「就業規則」の一つである「旅費規程」に置かれてます。つまり、「国家公務員の旅費」を理解するなら「国家公務員等の旅費に関する法律」を調べれば良いのに対し、「国立大学の旅費」を理解するためには各大学の合計86個の「旅費規程」を調べなければならないわけです。
 これだけでもかなり面倒くさいですが、さらに厄介なのはこの「旅費規程」の内容が国立大学によってかなり違う、ということなのです。
 一つの例として「宿泊地区分」というものがあります。これは都市部などの「宿泊費」を、他の地方よりも多く支給するために設定されているものです。「国家公務員等の旅費に関する法律」には「宿泊地区分」が設定されている一方で、国立大学においてはこの区分を「設定している国立大学」と「設定していない国立大学」の2種類が存在します。
 また同様に、「職員区分」というものもあります。これは学長を含む「国立大学の役員クラス」などの旅費を、他の職員よりも多く支給するために設定されているもので、これについては「設定していない国立大学」は無いものの、「2種類ある国立大学」「3種類ある国立大学」「4種類ある国立大学」と、「宿泊地区分」以上に規程の内容が分かれています。
 このような違いは他の項目にも見られますが、まずはこの2項目のみで旧帝7大学の分類をしてみたのが次の図です。



 ごらんのようにたった2項目に注目しただけで、旧帝7大学が「職員区分2つ・地方区分無し」「職員区分3つ・地方区分無し」「職員区分2つ・地方区分有り」「職員区分4つ・地方区分有り」の4種類に分かれてしまいます。たった7つの大学を例にとってすらこのペースですので、86個全ての国立大学の分類はさすがに行えませんでした。そこで今回のエントリーは、上の表でも挙げた「旧帝7大学」に絞って旅費の分析を進めたいと思います。またその内容に関しても、先に挙げた内容が異なる13種類の要素全てについて説明することは煩雑かつ無駄が多いため、今回はほとんどの旅行で処理される「交通費」「日当」「宿泊」の3要素に限定して分析等を行います。
 以上のように、今回のエントリーは題名こそ「国立大学における旅費について」と偉ぶっていますが、実態は「旧帝7大学における「交通費」「日当」「宿泊費」「+α」の比較」くらいの題名が妥当な、実に羊頭狗肉なエントリーです。この点は個人ブログの限界としてご容赦くださいますよう、お願いいたします。

■「職員区分」について
 さて、旅費の具体的な金額に入る前に、先ほど例に挙げた「職員区分」についての説明です。
 これも先ほど説明したとおり、「職員区分」とは「役員クラス」と「それ以外等」を区別するために用いられるもので、上に上げた13種類の各要素(交通費・日当・宿泊費の主要3要素を含む)は大体全てこの「職員区分」に応じて支給される額が変わります。そのため、まず主要3要素の説明をする前に、この「職員区分」が各大学によってどのように設定してあるか、の確認から入ります。
 そこでさっそく下の図をご覧ください。



 これは「旧帝7大学」の「教員」の職員区分です。職員区分は「教員」に限らず、国立大学に勤める職員全員を対象にしていますが、大学によってはその分け方が細分化しているため、今回は「教員」に限定して話を進めます。
 まず目に付くのが「役員」の部分です。「役員」枠の存在は旧帝7大学の全てに共通であり、またこの区分の支給額が最も高くなっているのも同様に共通です。
 「役員」以外の部分についてはかなりの違いがあります。大きく分けると、「役員」以外の部分をそのまま「役員以外」で一括しているタイプ、「教授・准教授」をやや優遇しているタイプ、「給与の級号数」によって細分化しているタイプ、の合計3タイプがあるようです。またさらに、非常勤職員などが入る「その他」を設定している京都大学のような、さらに特殊なものもあります。
 以下「日当」などについて、その具体的な支給額を見ていきますが、一つの大学の中にも複数の支給額があるのは、このような「職員区分」の存在によるものであることを予めお含みおきください。



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