大黒さんの金魚鉢

黒金町の住人の独り言は“One”

One voice , one mission , one family

二宮尊徳伝(12)

2014年10月16日 | 労働者福祉
日本の少子高齢化現象は、まず地方から大きな影響を社会に及ぼしていきます。
人口減少に加え、ただでさえ数少ない若者が地方から都会へ転出していくからです。
そんな過疎の現状を受け止め、転入者を増やそうと未来に向けてチャレンジしてきた徳島県神山町の「神山プロジェクト」の話をお聞きしました。
講師はNPO法人グリーンバレーの大南理事長です。

大南理事長のお話で印象に残った言葉をふたつ紹介します。
「石の上に25年」…動き始めてから成果があがるまで25年かかりました。(やはり継続は力ですね)
「どこにもいるアイデアキラーに気をつけろ」…アイデアキラーの特徴は、なにかを提案すると「難しい」「無理だ」「できない」と発言します。
少しでも動けば「俺は聞いてない」「誰が責任を取るんだ」「前例がない」と声を荒らげます。
大南理事長はこんなアイデアキラーたちと張り合ってきました。
“できない理由よりできる方法を考えよう!”
“とにかく始めよう!”

神山町にできたサテライトオフィスから産まれた素晴らしい徳島県のプロモーション映像。
これもPJの成果物のひとつですが、全国的な注目を浴びているそうです。


どの時代にも、どの組織にも、アイデアキラーたちはいますよね。
さて二宮尊徳伝の続きです。

尊徳50歳の時です。
鳥山藩(栃木県)から飢饉に苦しむ民衆を救って欲しいと和尚がやってきました。
面会に応じた尊徳は和尚にこう教え諭し、応援することを断りました。
「飢えた民を救うのは藩主や家老のなすべき仕事です」
尊徳の意を汲み取った和尚は藩へ戻り家老に相談します。
家老も藩の窮状を憂いていましたから、殿様に話し、殿様の直書をもらって和尚と共に尊徳を訪ねます。

今度も尊徳は家老にこんこんと諭しました。
「あなたたちの任務は、天の生んだ民を預かって、これを養い、恵み、安んずることにある。
それなのに藩主も家老も、そのことを分からずに人の上に立ち、もっぱら衣食に飽き、安逸を貪っている。
それで任務を果たしているといえるのか」
家老は尊徳の厳しい叱責を肝に銘じて藩へ戻りました。
その後、藩で議決されると、本格的な仕法が始まります。

家老は尊徳の勧めに従って俸禄を辞退し、不急の軍備品を売却して仕法のための基金をつくります。
翌年は豊作であったことが幸し、家中には分度以上の収穫米が集まりました。
この分度外の扱いをめぐって家中で騒動が起きます。
藩士たちが自分たちの俸禄を増額するように求め始めたのです。
尊徳の強い忠告で家老はこれを拒否しますが、藩士たちは納得しません。
藩士たちは家老がいったん辞退した俸禄を再び受け取ったことを種にして個人攻撃を始めます。
殿様への訴えにまで発展し、いよいよ困り果てた殿様は仕法の中止を決定します。

藩から追放されて意気消沈してやってきた家老に尊徳はこう言いました。
「復興が成らなかったのはみなあなたの誠意が足らず、行いに欠けるところがあったからだ。
いったん辞退した録を食み、身の衣食を豊かにして事を成そうとした過ちから、ついに国家の大幸を失った。
これは藩士たちの罪ではなく、みなあなたが自ら招いたものではなかったか」
仕法完遂のためには、理論と方法だけでなく、それを実行できるような人物・人材が必要だということです。

また尊徳は指導する者の責務の大きさについてこう語っています。
「国を興し民を安んずることは大業であって、名誉や利益を追うともがらの企て及ぶところではない。
いやしくもこれに従事する者は、禄位や名誉、利益の念を絶ち、わずかに飢えと寒さを免れるだけを生活の限度とするのでない限り、その初めは忠実を表しているが、ついには一身の栄利を求め、事業を失敗に終わらせることとなろう。
人は飢えと寒さを免れさえすれば足りるし、わが身を害するようなぜいたくな衣食を用いる必要などない。
そんなことをしているとどんなに素晴らしい功績を上げたとしてもそれは薄れ見えなくなって、賄賂、飽食、暖衣の非行だけが人の指弾を受けることになる」
生涯を質素に生きた尊徳らしい言葉です。