大黒さんの金魚鉢

黒金町の住人の独り言は“One”

One voice , one mission , one family

二宮尊徳伝(5)

2014年10月07日 | 労働者福祉
国会では消費税10%への引き上げ問題で論争が続いていますが、増税論議ばかりで身を切る覚悟はまったく見えてきません。
今も昔も借金で苦しむお上の姿は同じですが、尊徳が現在の1000兆円の借金を知り、庶民だけに始末を押し付ける姿をみたら何と言うでしょうか?


さて二宮尊徳伝の続きです。

借金で苦しんでいたのは家老だけではありませんでした。
尊徳は服部家をはじめ小田原藩士たちの窮状を救うためにあることを思いつきます。
さっそく小田原藩の殿様と掛け合って、殿様の手元金から千両を借り出すことに成功します。
借り受けた千両の運用をまかされたのです。

そのうちの700両を年利8%という低利で貸し出し、藩士たちの古い高利の借金の肩代わりをさせました。
償還期限も10年から15年の長期にして、その間に家計の立て直しができるよう計らいました。
藩士たちは大喜びです。

残り300両を原資にして、かつて奉公人たちに対して行った「五常講」を使い、下級武士たちの救済にあたりました。
五常とは、儒教の基本的な五徳“仁・義・礼・智・信”のことです。
「五常講」とはこのような倫理的・道徳的な自覚の上に立って、金銭の貸し借りをしようとするものです。

下級武士たち100人を単位にいくつかの大きな組に編成します。
それらの組をさらに何人かずつの小さな班に分けていきます。
希望する班には、無利息で一人1両から3両までを貸付け、100日で順繰りに回していきます。
その班が借りたお金は、班の責任で100日以内に返さなければなりません。
返済しない者がいた場合は、講の仲間が連帯責任で弁済する仕組みです。
下級武士たちも大喜び、高利貸しの借金から解放されたのですから、必死になって倹約し返済に充てました。

借りた者は、借りた時の感謝の気持ちを忘れずにきちんと返済すれば、それが“仁・義・礼・智・信”の五徳を実践したことになるのです。
権利の行使や義務の履行は信義に従って誠実になされるべきである、というのが尊徳の考え方です。
道徳的なルールと経済的な行為とを調和させ融合させようとすること(道徳経済一元)は、尊徳哲学の大きな特徴のひとつです。