栗野的視点(Kurino's viewpoint)

中小企業の活性化をテーマに講演・取材・執筆を続けている栗野 良の経営・流通・社会・ベンチャー評論。

レッドクリフ1、早すぎるTV放映の背景

2009-04-13 17:30:00 | 視点
 昨日、「レッドクリフ1」がTV朝日系で放映された。
劇場公開されたのが昨年11月1日。
それから半年にも満たない5か月ちょっとでのテレビ放映である。
あまりにも早すぎる。
これではわざわざ映画館に行って観なくてもTV放映を待てばよかった、という声を聞くのも納得する。
パート2の上映が4月10日だから、TV放映はパート2を観に映画館に足を運ばせるためのPRなのは間違いない。
それにしても、なぜそこまでしなければならなかったのか。

 通常の手順で行けば、パート1の上映。
それからしばらくたってDVDの発売。
さらにしばらくしてTVで放映、という順だろう。
最初の上映からTV放映まで短くても1年はスパンを取るのが普通だ。

 ただ「レッドクリフ」は従来の映画制作からすれば異例である。
例えば赤壁の戦いとうテーマを2回に分けたこと。
通常なら続編を作るか、「シリーズ1」、「シリーズ2」とするかだが、「レッドクリフ」は「パート1」「パート2」と銘打っている。
日本語風にいえば「前編」「後編」だ。
つまり最初から1本のものを上映時間等長さの関係でパート(部分)に分けたわけだ。
それ故、2本の上映期間を近接せざるをえない宿命を最初から背負っていたのだ。
 同じような作り方をした映画にチェ・ゲバラの生涯を描いた「チェ 28歳の革命」「チェ 39歳 別れの手紙」がある。
「レッドクリフ」「チェ」の両作品がほぼ期を同じくして上映されたのも興味深い。(映画としては「チェ」の方がよかった。「レッドクリフ」はスケール、CGを駆使した戦闘場面の見せ場を誇る最近のハリウッド映画の典型で、それ以上でもそれ以下でもない。制作費が話題になる映画には得てしてこの手が多い)

 このような作り方をするメリットは別々に2本作るより制作費が安く付く、あるいは資金をまとめることでスケールの大きなものが作りやすいことだろう。
 「レッドクリフ」の制作費は100億円。
エイベックスの関係者がエイベックスなくして「レッドクリフ」は作れなかった、と言っていたが、資金のかなりの部分は同社が負担したようだ。
ジョン・ウー監督自身も「私財を投げ打ち」10億円を負担したとのことだが、この辺に一つの答えがありそうだ。

 要は制作費の回収をどのような形で行うかである。
1時代流行った角川映画は本とのタイアップでの相乗効果を狙った。
あるいは今風に言えば、映画制作のリスクヘッジを本で行った。
 このリスクヘッジがその後、本からDVDに替わっていったが、TV放映料もその中の一つだ。
特に今回のようにパート1上映から間がなくTV放映をする場合、放映料も通常よりは高く取れるはずだ。

 もう一つの背景は昨秋以降の世界不況だろう。
映画制作の場合は企画から上映までに数年かかるのが普通だ。
その間、資金が寝ることになり、資金効率は悪い事業である。
そこに持ってきて、昨秋から急激に世界経済の悪化に見舞われた。
この影響をもろにかぶっているのは間違いないだろう。

 それでなくても出資者は早めに資金を回収したいところだ。
出資した資金が多ければ多いほど回収時期の遅れは自らにダメージを与える。
それどころか、昨秋以降の経済情勢では致命傷になりかねない。
もはや猶予はない。
一刻も早く資金を回収したいはず。
そのためにはまとまった資金が入るTV放映料は格好の材料だ。
DVDなどはハードの制作費が要るし、在庫も抱えなければならないが、TV放映の場合はそれらが不要な上、まとまった資金が即座に入るから効率がいい。
 早すぎるTV放映の背景にはこうしたことがあると思われる。

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この頃ちょっとおかしい、行政の対応(2)

2009-04-13 00:42:45 | 視点
 岡山県総社市は三菱自動車の下請け企業が市内に数多く存在することから、同メーカーの新車を購入する市民、法人に1台あたり10万円を補助する制度を始めた。ただし200台に限りだ。

 広島県でも同じようなことをしたが、こちらは公用車を、市内に本社があるメーカーの低排出ガス自動車に替えるというもの。台数は約420台。このほかにもテレビやパソコンを購入するとした地方自治体もある。
 こうした動きは危機に直面したときに助け合う日本的な美しい精神と見ることができるか、それとも近視眼的な愚策というべきか。

 これらの自治体に共通しているのは「支援は地域の下請け企業や技術を支えることになる」という理屈である。
ただし支援の対象は特定企業であり、ある特定企業を支援するのに税金を使おうというのだから、問題視する声が出るのは当然だ

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