蔵っ子日記

これは中堅(?)蔵人の日々を綴った素朴な日記です。
だんだん「蔵っ子」と言えない歳になってきたか?でもよろしくね。

見る・観る・看る・診る・みる?

2008年01月31日 21時42分03秒 | 日本酒
今日会ったお客様との話。

お客様「酒造りが一人前にできるようになるには何年くらいかかりますか?」

なかなか答えが難しい。色々な要素があります。

思うに、日本酒を造る製造工程を覚えることは、案外に早いかもしれません。本を読んで、現場を体験し、他人に説明できるくらいのことは難しくありません。この後、「では、自分の蔵ではどうやっているのか?」「それは何故か?」を考えるとどうでしょう。そして「毎年同じようにすればいいのか?」「同じように造れば出来たお酒も同じなのか?」これまた核心をつく質問で、答えは「No」ですね。つまり毎年が一年生。臨機応変に対応していく必要がある仕事なのですね。殊に自然、生き物が相手ですから。

職人の世界でよく言われる「経験」と「勘」。こればかりに頼るマイナスイメージではなく、これをおろそかにしてはいけないという考えが、杜氏と一緒に仕事をすればするほど強くなります。合理化・効率化を目指す最近の考え方とは、すこし逆行するかもしれませんが。

写真は暖気樽を抜いてしばらくした酒母の表面です。暖気樽で真ん中あたりを部分的に温めた結果、周囲と明らかに違う様相になってます。目では見えませんが、中心部と周辺部では、酵母の働き、元気度が違うようです。よく「みる」こと。意味によって漢字は違うようで、酒造りの「みる」はどれだろう?観察する?判断する?試みる?調べる?診察する・・・(は違うか)

理論だけじゃない。今日もいろいろな状態の酒母、もろみを「みて」経験値を上げていかなきゃ。


男前な嫁② 槽搾り編

2008年01月29日 21時04分30秒 | 日本酒
昨日は寒かった!この冬一番でしたね。私の職場「酒母室=(通称)もとば」は昼間で5.5℃。どげか~い?(出雲弁で「どうなってんの~?」の意)皆さんの地域はいかがだったでしょうか?

そんな気候にもめげず、昨日も純米吟醸酒を絞りました。袋吊り&槽搾りです。手間のかかる搾り方ですが、出来る酒はやはりいいものになる、と信じております。杜氏さん他蔵人総出で頑張りました。

写真は「槽掛け(ふながけ)」と呼ばれる作業。嫁さんが頑張って酒袋を並べております。そうですね、身近な作業で例えるなら、「お風呂の浴槽の底を洗うときに手を伸ばして頭突っ込みますよね。その状態で底に縦長の座布団を並べるような感じ、しかも何個も」・・・分かったかな?

この酒袋の中にもろみが入っていまして、整然と並べて、上から押すと酒が搾れるという仕組みです。ただ並べる作業は体勢もきついし、ちょっと技術が要るので、誰でもすぐに、というわけにはいきません。そこはさすが手先の器用な嫁さん。頑張っております。これから後半の搾りはこの槽搾りも増えてきます。がんばれ、負けるな嫁さん!
(そういう私はちゃんとやってるのかって?ふっふっふ・・・、気合は十分ですよ・・・)

あ゛~、朝がきつくなってきた~

2008年01月26日 22時45分24秒 | 日本酒
11月6日に蔵入りし、今日で82日目。クリスマスも正月も過ぎ、毎日の仕事をしっかりやっているうちに、どんどんお酒も搾られています。振り返ると、早い、早すぎる…。

酒蔵の朝は早い。うちの場合、4時半に起きる。しかも毎日、土日もない。すばらしき規則正しい生活!しかし、最近ちょっとこたえてきましたね~、朝も寒くなりましたし。もちろん蔵の皆さんは当たり前のようにやってますし、杜氏さんは更に早く(3時頃かな?)起きております。負けられぬ・・・が、なかなか真似出来ない・・・。

でも布団から出て顔を洗ったらスイッチ入りますよ。7時のご飯まで次々に仕事をし、移動も小走りするくらいです。おかげでおなかもすきますが(笑)

写真はもろみの分析作業です。今年は嫁さんが毎日担当しております。これが侮る無かれ、朝5時半頃から朝ごはん、その他の仕事もはさんで10時頃までかかってるかなあ、
でも、これは手早い方なんです。すごい、さすが手先の器用な嫁さんだ。

というわけで、明日も朝早いけど、今日も汲み掛け作業中。寝るのは12時かな。あ゛~

酒造りの将来=自分の将来・・・?

2008年01月25日 21時12分08秒 | 日本酒
ただいま酒造り最盛期にて、とても忙しい。机に向かう時間はなく、あっちこっちと物を持っては移動、洗っては移動、2階と1階を行ったりきたり。5分とボケッとする時間がありません。(ただし皆との休憩時間はきちんと取りますが)

そんなときに隣県の酒蔵さんがとある企業に事業譲渡されたとのニュース。う~ん、社長さんも銘柄も良く知っている・・・、正直、頑張ってるなあ、と思っていた・・・(全国金賞とか受賞していた)。最近に限らず、私がこの道に入ってから(5年程度で)続々と廃業や酒造りを止める蔵が出ている・・・。

「ビールや焼酎に押されて」は聞き飽きた言葉ですが、それは他人のせいにしているだけかも。現状、60歳以上の人間で保たれている製造現場・・・いつまで続けるのか?、季節雇用に変わる新しい体制を考えているのだろうか?どのようなお酒を造り販売して行きたいのか?自分は本当に真剣にこれらのことを考えているのだろうか?自分の将来の問題なのに・・・。

「痛みを伴う改革」、自分はこの言葉は好きですね。いままでもぬるい環境よりは厳しい環境のほうがチカラがついていたと思います。自ら決断してその道に進むこともよくありました。でも今は・・・すこし迷っているかも。遠慮してるのかな。いろんなことに負けないで、また勇気をもって頑張ってみよう!

※ビジネス雑誌を久しぶりに読んで感化された蔵っ子でした。

泡あり酵母と泡無し酵母

2008年01月23日 20時55分23秒 | 日本酒
「酵母」とはこの日記を読んでいる貴方のまわりにも既に居ます。生き物です。その中でも日本酒造りが得意な酵母を「清酒酵母」と言いまして、種類はたくさんあるのですが、そのなかでも大きく「泡あり酵母」と「泡無し酵母」にグループ分けされます。

ひとくちに「泡」といっても皆さんの想像はどんなもんでしょうか?カプチーノの泡くらいかな?クリーミーで、表面をふたするくらい?

いえいえ違います。泡ありの場合、例えて言うと「外国映画の女優さんの入浴シーンで出てくる泡ばっかりのお風呂のその泡!」のようにボコボコと高い泡なのです。
写真の泡の跡、分かります?表面から30cmは泡が立ってましたね。写真は酒母ですが、量が増えてもろみともなると、この泡あり、泡無しははっきりします。そしてこの泡は、かい入れするたびに落ちていきますので、この泡の跡をこまめに掃除しておかないと、発酵等いろいろと影響します。

泡ありと泡無し。今年も両方仕込みますが、出来る酒の違いは如何に?また機会があればお話しますね。


朝日が差し込む中、放冷中。

2008年01月22日 21時28分33秒 | 日本酒
昨日は大寒だったそうで。どおりで寒かったはずですね。ここのところ、雪こそ降りませんが出雲は毎日寒いです。気温が低く、いいんだけど、難しかったりします。当たり前ですが気温が低いと、同じようなお世話の仕方(品温管理等)では思うように行きません。ここのところが難しくもあり頭(勘)を使うところでもあります。

酒母担当の私の仕事も終盤。今日もまた一本酒母を仕込みました。写真は酒母仕込直前の蒸米(掛米)の放冷作業です(前回の写真はこの作業が済んだもの)。この作業は、例えるなら「炊き立ちの電子ジャーのお米をひっくり返して手で広げている」ようなものです。気温が低いせいもあり、見事に湯気がたっております(もわもわっと)。うちの場合、基本的には4日に一本酒母を仕込みます。お米の量は違いがありますが、4日に一回のこの風景。蒸米のいい香りがしていい感じです。是非、現場をお見せしたいところですが・・・。まあとにかくもまたひとつ世話する酒母が増えましたぞ~次こそは!(・・・?)。

蒸米を「放冷(ほうれい)」中

2008年01月18日 23時56分51秒 | 日本酒
ここのところ寒いです。酒造りにはバッチリのようです。大吟醸が蔵の奥で静かに発酵しております。ゆっくり、じんわりと低温で発酵が進む方が全般的に良いお酒になるようです。

そして今日も一本仕込が終わりました。夏場に人気、また女性の方にも人気の「純米大吟醸 淡雪仕立て」になるもろみです。今年も上手くできればいいが、これから約30日間のお付き合いです。じっくり、ゆっくり・・・。

さて、写真は今日仕込んだ「淡雪仕立て(予定)」の留蒸米を放冷しているところです。仕込とは麹・水・蒸米を一緒にもろみの中に投入し、攪拌することですが、留仕込とはその最終仕込のことを言います。仕込温度が低いため、できるだけ低い品温の蒸米を投入する必要があるわけで、このように広げて、人間が米の塊をほぐしながらしっかり冷まします。これが体を動かさず、手先だけの作業なので寒い!手もかじかみます。しかし機械でこれをほぐしつつ冷ますのはなかなか難しい作業です。機械化は進んでいてもやっぱり手作業に頼るところも大いにありますね。これが酒造りのいいところ?(大変なところ?)かな。

♪しるし が回る。

2008年01月16日 22時21分10秒 | 日本酒
今日は毎年この時期恒例?の、酒造技術指導がありました。広島国税局から酒類鑑定官の先生他、税務署、技術センターの先生が来蔵され、麹、酒母、もろみを利き、また色々な情報、指導を頂きました。忘れないようにきちんと頭に入れておきたいと思います。

さて、話はガラッと変わりますが、最近急にあの歌が頭の中をめぐっております。思わずCDを衝動買いしてしまったほど・・・。ご存知の方は多いでしょうが、サビだけご紹介。

♪ダーリン、ダーーリーン、いろ~んな角度か~ら~、君を~見ていた~・・・(by Mr.Children)

酒母を毎日見ていると、なんかこんな気分になっています。「室温は低いな」「外側は冷えるが全体はどうだ?」「泡はあるけど成分がまだ追いついてないか?」「氷を入れるべきか?」「酵母たちはこれから活発になって、温度が上がるはず」「分けは明日か、今日の午後か?」・・・

例えば、この写真は明日の朝までに品温を1℃だけ下げたい酒母。真ん中の筒は冷温器(氷)。部屋はかなり寒い、氷が要るのか?酵母が元気なら氷1本では負けてしまう、外側と内側では温度は違う・・・、考えて、最終的には信じてみる。自分の考えと酵母の力を。

・・・酒母、先生方の評価は○でした。よし!明日も歌いつつ世話しよう。

十旭日、広島出張です。

2008年01月15日 21時37分55秒 | event
今日も寒かった~。雪こそ降りませんでしたが、蔵の中はほぼ外と一緒だし大変です。暖房のきいた部屋で、パソコン叩いてた頃が懐かしい。でもたくましさは今の方がありますよ、多分ね。

ところでお知らせです。毎年この時期に行われているイベントですが、「島根ふるさとフェア in 広島」が今年も開催されます。

■島根ふるさとフェア2008
 日時:1月19日(土)・20日(日) 10:00~17:00
 場所:広島県立総合体育館
 詳しくはこちら>島根ふるさとフェアHP(テレビ新広島様リンク)

広島は私の故郷(正確には父親の)ですので、是非行きたい!ところですが、酒造りがめっぽう忙しくいつも断念しております(泣)。ということで、私は(嫁も)行けないのですが、広島ではなかなか手に入らない「十旭日」を販売に参ります。この日記をご覧になった方はのぞきに来て頂きまして、是非清き一本、ご購入よろしくお願いします!(って選挙か?)。もちろん、今年の新酒「しぼりたて生酒」「にごり酒」(12月にしぼったばっかり)あります。期待してくださいね。

このイベントはお酒だけでなく、また出雲市だけでもないので、とにかく見に行って損は無いと思います。帰るときにはいろいろといいものお買い物していると思いますよ。それでは、お知らせでした。



お米を水きり中です。

2008年01月14日 21時32分22秒 | 日本酒
最近少し寒いですね。冬らしい感じです。ま~当たり前っちゃ、当たり前かな。
世の中は三連休でしょうか。ちょっとこの週末、出雲大社に用があって出かけたのですが、やっぱりすごい人、駐車場までの車の列がすごいこと・・・、出雲でこの風景は他には無いでしょうね。さすがだわ。

さて、仕込みのほうも順調に進み、最近は大吟醸含め、高精白ものが続いております。簡単に言うと、高精白=高級酒=大事な酒=造るのは難しい酒=美味しい酒=好きな酒=いろいろ挑戦したい酒・・・、ということで、より一層みんな力が入っているわけです。

写真は洗米したお米を干している(=水切りしている)ところです。米の品種、精米歩合、米の温度、米の持つ水分等によって、適正な吸水程度は違い、この水分(吸水率)がのちの蒸し、麹、またもろみに影響してきます。作業分担上、なかなか一緒に作業が出来ないのですが、この勘どころは身につけなければならないとても重要なところです。

それにしても毎日大量のお米相手にしてるなあ・・・。以前よりご飯が好きになったかも。軽い洗脳か?