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まろの公園ライフ

公園から世の中を見る

ツバキ文具店

2016年12月06日 | 日記

久しぶりにいい本を読んだ。
面白い小説というよりいい小説だった。
ふと誰かに手紙を書いてみたくなるような本だった。

ツバキ文具店。
本屋の店頭で見かけた時から
そのタイトルがずっと気になって仕方がなかった。
文具店という古めかしい呼び名に
何か郷愁のような懐かしさを覚えたのかも知れない。

海と山に囲まれた古都・鎌倉。
鶴岡八幡宮にほど近い大きな藪椿の木の脇にツバキ文具店はある。
鎌倉で十一代も続く老舗の文房具店だ。
幼い頃から「ポッポちゃん」の愛称で呼ばれる雨宮鳩子は
一通りの文房具をあつかいながら
本業は今ではめずらしくなった『代書屋』である。
依頼の手紙やハガキを代筆することで
その人の果たせなかった夢や心残りを実現させる。
伝えられなかった大切な人ヘの想い。
あなたに代わって、お届けします−。
先代(祖母)から受け継いだその家業が
鳩子の生きがいである。



ツバキ文具店にはさまざまな依頼が舞い込む。
一般的な年賀状や暑中見舞いから
恋文、離婚報告、長年つきあって来た女友だちへの絶縁状
中には借金を無心した相手への拒否状や
中には亡き夫の<天国からの手紙>という風変りな依頼もあって
それぞれが秀逸なドラマになっている。



鳩子が書いた代書はそのまま本書に掲載されている。
当然、書体も体裁も違うのだが
一通、一通の手紙へのこだわり方がとにかく凄い。
内容だけではなく、筆記具から便箋、封筒、切手、インクに至るまで
徹底的に細部にこだわったオーダーメイドの代書の数々。
文面や字体まで当人になり切った代書は
まさしく「憑依」を思わせる。

小川糸という作家を初めて知った。
ボーイッシュで軽やかでなかなか素敵な女性ではないか。
生活雑貨にもさまざまな「こだわり」を持った方で
こんな写真集も出ていて興味深かった。
映画化された「食堂かたつむり」や
ドラマ「つるかめ助産院」などの著者でも知られる
人気のベストセラー作家らしい。
知らなかった・・・

鎌倉の四季折々の自然を背景に
その風土や伝統、そこに生きる人たちをこよなく愛しながら
鳩子はつつましく、しなやかにに生きている。
自宅の裏庭にある文塚で
人の思いがこめられた手紙を焼く「手紙供養」などという
古くから風習なども出て来て心温まる思いだった。
恰好の「鎌倉案内」にもなっているので
ぜひ一読を・・・


 


さらば留萌本線

2016年12月05日 | 日記

テレビのニュースを見ていて
誰かのコンサートか何かと思ったのですが・・・
列車のラストランでした。

北海道は留萌本線の増毛駅。
100年近い歴史を誇る留萌線が廃止になるとあって
全国から鉄道ファンが集結したのでした。
私が足繁く通うブログの作者であるすみごんさんが
先日、北海道を旅して留萌本線に乗った記事を書いておられ
それで初めて「廃線」を知ったのでした。
巨額赤字を抱えたローカル線が廃止されるのは宿命とは言え
やっぱり寂しいものですねえ。

いい風景ですねえ・・・
背後に見えるのは日本海です。
北海道の北西部、留萌と増毛を結ぶ留萌本線は
ニシン漁が盛んだった頃は乗客も多く大いに賑わったそうですが
今ではすっかりお荷物になってしまいました。
そうそう、留萌本線と言えば・・・
どうしても健さんのあの映画を思い出してしまいます。

高倉健さん主演の『駅 STATION』ですね。
八代亜紀の代表曲「舟歌」が
圧倒的な迫力で挿入されているのが印象的でした。
健さんが連絡船の時間待ちで入った増毛駅前の赤ちょうちんで
孤独な女将を演じていたのが桐子(倍賞千恵子)でした。
結局、シケで船は欠航となり
その夜、二人は自然の流れで男女の仲になるのですが
コトが終わった後で桐子が不安顔で・・・

  「私、大きな声を出してなかった?」
  「いや、別に・・・」
  「そう、よかった」

そんなやりとりの後、健さんが心の中で・・・

  「樺太まで聞こえるかと思ったぜ」

思わず笑ってしまいましたが、せつないシーンでした。

増毛駅は「髪の毛の聖地」だそうです。
薄毛に悩む世の男性たちが
全国各地から「ご利益」を求めて続々とやって来るそうです。
男のハゲはある意味カッコいいと思いますけどねえ。
ニコラス・ケイジとかショーン・コネリーとか・・・
ソフトバンクの孫社長は

 「髪の毛が後退しているのではない。私が前進しているのだ」

なんて堂々としていますし
要するに自分に自信がないから悩むんですよ。
私も頭頂部はすっかり薄くなりましたが
かろうじて踏ん張ってます。(笑)



全国から集まった「鉄ちゃん」たち。
普段からこれだけの乗降客があったらといつも思いますが
言っても詮無いことですねえ。
最終列車が行った後
留萌本線には厳しい冬の時代が待っています。


バラ園イルミネーション

2016年12月04日 | 日記

夕方も5時を過ぎると
この季節はもうあたりは真っ暗です。
その暗闇の中を自転車で帰路を急いでいると・・・

あらら・・
公園のバラ園に電飾が輝いています。
一瞬、除虫菊のハウスでも出来たんかいなと思いましたが
イルミネーションなんですねえ。

ショボいと言えばショボいです。(笑)
雪の結晶のような電飾がピカピカと明滅しているだけです。
素朴と言えば言えないこともありません。
でも、イルミネーションのような気の利いたものは
今まで公園には皆無だっただけに
ちょっと意外と言うか、画期的なことでした。(笑)

私のお気に入りのバラ園です。
ここのパラソルのあるベンチに腰かけて
ほのかなバラの香りにつつまれて沈思黙考するのが
最近のマイブームです。
数あるバラの中でも希少種のバラが多いらしく
いつも三十代らしき作業着姿の女性が
熱心に世話を焼いておられる姿がとても印象的です。
「せっかくですからイルミネーションでもしませんか」などと
彼女が園長に提案したのでしょうか。



団地のベランダにもXmasイルミネーション。
いいですねえ。
いつも電気代のことを心配しますが・・(笑)
最近は都心に出かけることもめっきり減ってしまいましたが
丸の内あたりは今年も輝く光の海でしょうか。
あまり華美なのも考えものですが
イルミネーションには心浮き立つものがありますね。
イヤなことつらいことがあった日も
一瞬、それを忘れさせるような不思議な喚起力があります。
今年もイルミネーションの季節です。


神ってる

2016年12月03日 | 日記

今年の「新語・流行語」大賞が発表されました。
とくに関心がある訳でもなくて
今年もそんな季節がやって来たかという程度でした。

この催しも長いこと続いていますねえ。
言葉は「生きもの」ですから常に世相を反映しています。
なるほどと思う年もあれば
なぜその言葉が選ばれたのか大いに首をひねる年もあって
まあ、いい加減と言えばいい加減でしょうか。(笑)

今年の流行語大賞は『神ってる』に決まったそうです。
と言われてすぐにわかる人は
熱心なプロ野球ファンかよほど世相に敏感な方でしょうか。
私は大のタイガースファンではありますが
関東地区はあまり中継がない上に
ゆっくりプロ野球を観戦を楽しむ時間もありません。



広島カープの新星・鈴木誠也の活躍ぶりを
緒方監督が「今風に言えば神ってるね」と表現したのが
流行語になったきっかけと言われています。
でも、そんなに流行りましたっけ?
確かに今年の鈴木選手の活躍ぶりはちょっと異常なほどで
ある種「神がかり的」なものはありましたが
何でもかんでも言葉を短縮形にする風潮がイヤですし
そもそも「神」という言葉の歴史的経緯に
日本人は鈍感すぎると思いますね。



ノミネートされた流行語で私が選ぶとすれば
やはり築地市場の豊洲移転をめぐる「盛り土」問題でしょうか。
なぜ「もりつち」ではなく「もりど」なのか?
土木関係の専門語か符牒かと思ったら
そうでもなくて広辞苑には両方の読み方が併記されています。
うーん、どうもよくわかりませんねえ。

わからないと言えば・・・
この汚染まみれの危険極まりない土地を
東京ガスはどうして巨額の金で都に売却できたのでしょうか。
明らかに癒着の構図が想像できるのですが
真相は今もって闇の中です。



このフリップもイヤというほど見ました。
汚染土壌を洗浄してその上に新しい土を盛るという計画が
どこでどう間違って盛り土が中止され
地下につくられた謎の空間から汚染水が流れ出るという
最悪の事態を招いてしまったのか?
今さら犯人探しをしても何の問題解決にもならないとは言え
真相の解明はしっかりやって欲しいものです。
石原都政に始まって、猪瀬、舛添と続く都庁の伏魔殿に
小池知事がメスを入れる日は来るのか・・・
世間を騒がせたという点では文句なくこれが大賞でしょう。



公園のモミジが真っ赤です。
写真を撮る人が鈴なりでさながら観光地です。
それでもって私の今年の流行語大賞は何だったのか。
ツラツラ考えても浮かびません。
つまり流行とは無縁のところで過ぎた一年でしょうか。
ああ、ああ、と深いため息です。(笑)


『この世界の片隅に』

2016年12月02日 | 日記

話題の映画を観て来た。
新聞各紙の映画評はもちろんネット上でも絶賛の嵐である。
早くも今年のベストワンに推す声も多い。



原作はこうの史代さんの漫画作品である。
彼女の出世作となった「夕凪の街 桜の国」は私も読んだが
それに続く「戦争と広島」をテーマにした作品だ。
絵が得意な主人公の浦野すずは広島で幼少期をすごした後に
夫の北条周作と出会い、呉の北条家に嫁ぐ。
軍港である呉は毎日のように空襲に襲われ防空壕に避難する日々。
戦時下で物資が不足する中、すずは不器用ながら
懸命にささやかな暮らしを守りぬく。
まさにこの広い世界の片隅の物語である。

映画『この世界の片隅に』予告編


すず役の声を演じているのはあの能年玲奈だ。
事務所問題のゴタゴタで芸能活動から遠ざかっていたが
新たに「のん」という芸名で再出発。
このモノローグがまさに「声で演じている」といった印象で
グイグイと物語に引き込まれていく表現力だった。
この映画の主人公は彼女かも知れない。
本当に才能のある女優さんで彼女の復活は心から喜ばしい。



これは戦争映画ではない。
あからさまに反戦を感じさせるシーンもなければ
悲惨な場面もそれほど多くはない。
時代は過酷な戦時下ではあるが暗さはなくユーモアさえある。
たとえ戦争でも人々は日々ご飯を食べ
恋愛をし、たまには冗談の一つも無言いながら懸命に生きて行く。
そんな人の営みを描いた「人間賛歌」である。



その生活のディテールの描き方が
実に丁寧で細やかで、心がこもっていて素晴らしい。
人間の底知れぬたくましさを感じる。
そして何より、全編を通して人々の暮らしに独特の陰翳を与えている
広島弁のやわらかなイントネーションが秀逸である。
広島弁は奥が深いけえのう!



いつもほんわかとトボけた印象のすずなのだが
唯一、感情を高ぶらせる場面がある。
不発弾の爆風によって義姉の娘を死なせてしまった上に
自らの右腕まで失ってしまう不幸。
もう二度と好きな絵が描けなくなってしまった。
さらに広島に巨大なキノコ雲が湧き上がり、続いての玉音放送。
自分が生きて来た戦時下のささやかな暮らしが
根こそぎ否定されたこの瞬間
すずは激しく慟哭し地面をたたいて悔しがる。
この持って行き場のない悲しみこそが映画のテーマだろうか。

それでも最後まで泣けなかった。
前に観た「君の名は。」の時もそうだったのだが
私には「アニメ」には感情移入できない何かがあるのだろうか。
それとも感性がすっかり鈍ってしまったのだろうか。
スタッフロールが流れ終わり
劇場の灯りが点いてゆっくり立ち上がったのだが
誰一人立ち上がらぬ観客を見て思わず狼狽してしまった。(笑)