夜中にラジオを聴きながら仕事をしていると
懐かしい歌声が流れて来て思わず手がとまってしまった。
ちあきなおみの深く優しい歌声だった。
いまや「伝説」となった女性歌手である。
彼女の歌はたまにラジオなどで聴くことはあるけれど
もう20年近くも生の姿を見ていない。
思わず聴き入ったのは「赤とんぼ」という曲だった。
吉田旺作詞、船村徹作曲、1988年のヒット曲である。
今日で店じまいをするという新宿駅裏の小さな酒場を舞台に
女将と客の心温まる交流を描いた名曲である。
ちあきなおみ 紅とんぼ
聴く者の心の奥底に語りかけるような歌声。
その切々たる表現力と説得力。
酒場大好きなオジサンは思わず涙してしまいそうな曲である。
彼女の活躍は今さら述べるまでもない。
「四つのお願い」「喝采」「矢切の渡し」など数々のヒット曲で一世を風靡。
独特のハスキーボイスと抜群の歌唱力は今も語り草になっている。
演歌にとどまらずポップス、フォークの名曲も数多くカバーし
ジャズ、シャンソン、ファドまでも歌いこなす幅広さは比類なき才能だった。
美空ひばりでさえ「私の後継者はちあきなおみ」と公言してはばからなかった。
歌だけでなく「役者」としても非凡なものがあった。
独特の存在感と演技力で映画やテレビドラマの出演も多く
バラエティー番組のコントなども実にコミカルな味があって大ファンだった。
そうそう、有名な「タンスにゴン」のCMも秀逸だった。
歌にしろ演技にしろ、まさしく「天性」のものがあったと思う。
1978年に俳優の郷治さんと結婚。
その後はテレビ出演などの機会は減ったが幸せな結婚生活だったようだ。
しかし、1992年、最愛のご主人が病死。
夫が荼毘に付される時、棺にしがみついて「私も一緒に焼いて」と号泣したと言う。
ご主人の死後は一切の芸能活動を中止、表舞台から姿を消した。
関係者の再三にわたる「復帰要請」にも応ぜず、沈黙を守り続けている。
彼女はご主人の死後、ずっと「喪」に服し続けているのだろうか。
引退した歌手や俳優がいとも簡単にあっけらかんとカムバックするご時勢
その「献身」はほとんど感動的ですらあると思うのだが・・・
そんな彼女の心情を歌ったような一曲がある。
ちあきなおみ 冬隣.
作詞の吉田旺は現役時代から彼女が最も信頼するパートナーで
今でも歌手ちあきなおみと交流がある数少ない人物である。
それだけに彼女の「沈黙」の意味を誰よりもよく知っているのではないだろうか。
「♪地球の夜更けは淋しいよ・・・」というフレーズは
実に哀しく、切なく、男女の関係の「普遍」を語っていると思う。
それだけ愛する人を思い続けられることは素晴らしいと思う。
自分には到底できそうもないように思う。
ちあきなおみの復帰を心ひそかに待ち望むファンの一人ではあるが
このままそっとしておいてあげたいとも思う。
皆さんも、もう一度、この天才歌手の歌声をぜひ・・・
渡された歌詞を見て、ちあきさんが愕然とした――ということだったらしいです。
わたしはこっちを信じます。
「天才」というのは、ドラマを引き寄せる力を持っているから。
冬隣も、まるで彼女の人生の「予知夢」のような歌ですね。
「四つのお願い」も大好き。オハコだよん!
喝采については諸説あるようですが、よくわかりませんねえ・・
確かにドラマを生みだすようなオーラはあったのでしょうね。
なるほど「予知夢」ですか、言い得て妙です!
今度、ぜひ「オハコ」をたっぷりと!