ハアハア言いながら走っていると
風にのって何やら甘く高貴な香りが・・・薔薇だ!
公園の陸橋下の花壇は、いま、色とりどりの薔薇が真っ盛り。
にわかカメラマンも、にわかではないカメラマンも
中にはスケッチブックを抱えた、日曜画家もこぞって大集合。
そこだけ人口密度が急増している有様だ。
ただ、私はと言えば、これまで薔薇に格段の興味も関心もなく
作家の端くれなのに、ちゃんと「薔薇」という字が書けるように
なったのも、恥ずかしながら、つい最近のこと。(関係ないか・・・)
薔薇と言えば、やはり西洋のもの・・というイメージが強く
美しいと思いつつも、どこか近寄りがたい金髪碧眼女のようで
遠慮していたようなフシもあるのだが・・
この薔薇は「紫雲」という名前で国産種だと言う。
なるほど、決して派手ではないが品があって
画家の安井曾太郎が描くような、どこか日本的な侘びた美しさがにじみ出ている。
昔から「綺麗なバラにはトゲがある」と言うが
実際、綺麗なバラを育てるには並大抵でない苦労があるらしい。
ちなみに私の叔父は、お堅い役所勤めの身ながら
ある日、突然「薔薇づくりがしたい」と家族に宣言し
定年の5年も前に勝手に役所を辞めて、庭の仙人となってしまった。
ことほど左様に「薔薇づくり」には得体の知れない不思議な魅力があるようだ。
大学時代、それこそ薔薇のような「小悪魔的」な女性と
3ヵ月間だけ同棲したことがある。
まだまだ純朴だった私は、彼女の奔放さに右往左往し、打ちのめされ
その容赦のない「トゲ」に血だらけになって
ほうほうの体で逃げ出したのだったが・・・
いま、彼女はどこで、どうしているのか?
美しい「トゲ」はあの時のままなのか?
五月晴れの空に薔薇を想う、青春を想う・・・