秋葉原側から万世橋を渡り、万世橋mAAchを超えると急にみすぼらしい建物が現れる。
その落差がものすごい。
「ラジオガァデン」の時代がかったフォントの看板。ラジオの部品商は、かろうじてまだ秋葉原の余韻を残す。
その建物の中にある開け放しの店。
ソフトクリームの巨大な置きもの。赤提灯。そして「ビールあります」との表示。
店の看板を見たら「肉の万世 本店直売所」とある。
「肉の万世」なら、通りを渡った対面に巨大なビルが建っている。それにも関わらず、ここで何を売っているのだろうか。
ボクは足を止めて店の敷地内に足を踏み入れた。
「牛すじ煮」、「もつ煮」が300円。
日本酒400円。
え?これ立ち飲み屋?
4畳半程度のスペースに丸テーブルが2つ。通路を挟んだスペースにお店の人がいる。
ボクはそこで生ビール中(300円)と「もつ煮」を頼んだ。
若い男性定員が対応してくれる。
「もつ煮」を出してきて、レンジに入れる。その間に青年はビールを用意する。
ビールはプレモル。この際、文句は言えない。
「もつ煮ができたら、声かけますんで」と青年は言った。
ボクはビールを持って4畳半に戻る。
テレビを見ながらコップを傾ける。うまい。
何かの待合所のような部屋でビールを立って飲む。いいなぁ。
黄昏の街を帰宅する人々が店の前を通り過ぎていく。
彼ら、彼女らは、立ってビールを飲むボクに冷たい一瞥をくれる。
そうするうちに「もつ煮」ができたと告げられた。
お椀に盛られた「もつ煮」。さすが肉屋だけあって、もつの質も悪くない。もつはシロのみ。スープは白味噌。
それにつけても、この店は何なのだろうか。
立ち飲みなら「肉の万世」の1階にある。わざわざ道を挟んだ対面に立ち飲みを作る理由はない。
それとも、この土地も「肉の万世」のものなのだろうか。
道を挟むと商圏が変わる。もしかすると、この店は「万カツサンド」を逆サイド側の商圏に訴求した店なのかもしれない。
それがいつしか様々なものを売るようになったとか。
「万カツサンド」とビールは相性がいい。
ボクは羽田から飛行機に乗るときはいつも「万カツサンド」とビールで旅立ちの一杯をやる。
「もつ煮」を食べながら、ふと店の片隅に目をやると、ゲーム機とディスプレイが置いてあるのが目についた。
「電車でGO!」である。
なるほど。この店を運営する人は余程センスのいい御仁なのかもしれない。
この店の隣にある旧万世橋駅のmAAchはもともと鉄道博物館である。その旧鉄博の矜持の意味が込められているのだろう。「電車でGO!」はその細やかな証なのだ。
このゲーム機、自由に使っていいらしい。
やっぱり、この店の存在自体が謎である。
最後に「万カツサンド」をいただく。
カツサンドは数々あれど、ボクは「万カツサンド」が一番好きだ。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます