
十条で酒を飲もうと思っていたが、「天将」はまだ休業中だった。まさか、このままフェードアウトしないよな。だって、緊急事態宣言が明けて、もうかれこれ一月。なんだか不穏な空気を感じる。
さて、どこへ行こうか。十条の「晩杯屋」の前を通ってみる。おや、そこそこ人が入ってる。今夜は「晩杯屋」はやめておこう。踏切の手前を右折。「斎藤酒場」へ。中を覗いてみると、店は空いてた。久しぶりに入ってみようか。一瞬、そう思ったが、素通りした。今夜は「ホッピー」が飲みたい。
踏切を渡った。
すぐ右側に、人気店の「馬ござる」。いつも通ると賑わっている店が、なんと客が一人もいない。いつか、行ってみようと思っていたが、今日はその日じゃなかった。「田や」に差し掛かった時に名案が浮かんだ。
そうだ、「新潟屋」に行ってみよう。激しい雨が降る中、急ぎ足で坂を降りた。この大雨だから、店は空いているだろうと予測していたが、なんと店は満席。二度目のチャレンジも実を結ばなかった。さすが、名店。コロナ渦も大雨も関係ない。
さぁ、行くところがなくなった。
気軽に安く、腹いっぱい食べて飲むなら、もう「サイゼリヤ」しかない。ここから、徒歩20分はかかるが、仕方ない。そうして歩くこと、約2km。土砂降りの中、ほうほうの体で現場に着くと、なんとイオンそのものが休業していた。
まさか。
しかし疲れた。十条から東十条まで歩き、更に南赤羽まで。しかもそこから家までまた15分歩かなければならない。今夜はもう帰るか。きっと、神様が飲むなと言っているのだ。釈然としない気持ちを抱えて、家に向かう途中、ふと思いついた。あの店に行ってみようか。町中華の皮をかぶった居酒屋。場所もよく覚えていないが、方角は分かる。住宅街をとぼとぼと歩き、なんとかその店、「栄楽」に着いた。
何年ぶりだろうか。
扉を開けたら、以前来た時の雰囲気とは違っていた。完全に町中華の小汚い店だったはずだが、こぎれいに様変わりしている。店内のレイアウトも確実に違っていた。あれ、リニューアルしたのか。
カウンターの奥に陣取り、「ホッピー白」セットをオーダー。以前来た時は、マスター一人で切り盛りしていたが、この日はマスターと女性がいる。
つまみは「ポテトサラダ」から。
実にオーソドックスというか、基本に忠実というか、でもこういうポテサラが、やっぱり一番うまい。
そして、「餃子」。
小ぶりなやつが5つ。抜群にうまい。以前は、そんなに好みでなかった、焼き餃子だが、最近は中華に行ったら必ず頼むようになってしまった。野菜たっぷりの餡が自分にはぴったりだ。
隣の席には2人のサラリーマン。はて、この近くに会社あったかしら。もしかして、あの大手印刷会社の人たちか。彼らはひたすら「ハイボール」を飲んでいたが、ある時、急にむせ始めた。どうやら飲み物が気管に入ったみたい。この時節柄、店でむせるのは危険だ。幸い、今夜は人けのない店でのアクシデントだが、満員の店ならひんしゅくものだろう。
〆は「炒飯」。
はなっから、〆は「炒飯」と決めていた。
うん。うまし。絶妙の塩加減。自分はいわゆるバラっパラの「炒飯」は好みではなく、ある程度、しっとりしている飯が好きだ。
帰り際に、店をいつリニューアルしたかきいてみた。すると、もうかれこれ4年になるという。しかも、驚くことに、店はリニューアルではなく、移転らしい。隣接する土地からの移転らしいが、それでも移転は移転である。
かつての店は外観は、完全に町中華。だが、今はもう中華のたたずまいはもう感じられない。町中華の皮は脱いだが、まだ中身はほぼ中華。それでも、刺身があったり、居酒屋メニューが豊富だったりして、客を飽きさせない。やっぱり、いい店だ。
かねてより、中華最強説を唱えており、中華飲むのが一番だと思っています。この店は、町中華から居酒屋に進化した店で、安くてうまい、使い勝手のいいお店です。