思わず呟いてしまった。
「きてんな」。
本州東京の最南端、六郷の「天龍」の外観を見たときについ。その佇まいはまさに町中華。くたびれた店舗、ほのかに漂う昭和感。一体何年営業しているのか。昼飯を食べるつもりではなかったが、思わず入店してしまった。
外観の凄まじさに比べれば、店内は比較的きれいだった。世の中の汚い店を渡り歩いてきたつもりだが、全く問題なし。真紅のテーブルが眩しく、目が痛いほどだった。
このあたりは秘かに旅館が建ち並ぶ。東海道の川崎宿まで辿りつけなかった人のための宿なのか。それとも、日雇いの簡易宿泊所なのか。狭い路地に旅館が軒を連ねる風景はちょっと異様だ。そうした地域の腹を満たす役割を、この「天龍」は担ってきたのか。恐らく、オープンは平成ではあるまい。多分昭和だ。
「肉野菜炒め定食」をオーダー。店のお母さんとおやじさんは意外に若い。もしや二代目か?一瞬そんな思いを抱かせる。
ほどなくして、「肉野菜炒め定食」が到着。ご飯多目の丼に、中華スープとたくあん。肉野菜炒めはつゆが少なく、ちょっと散らかってる。外観のインパクトに比べれば、料理は迫力不足だった。
この労働者の町で、もう少しガシッとくるボリュームの定食がくると思っていたが。それは自分の思い過ごしだったか。肝心のお味はといえば、やはりちょっと濃い味付け。やはり、労働者テイストだったか。
メニューには「カレー」もあるし、これはもうれっきとした町中華。しかも食事はほどほどながら、小汚い外観はもう、町中華遺産だ。一年に1~2回しか行かない六郷土手だが、きっとまた来るぜ!と心に誓った。
イメージとしての「肉野菜炒め」って、ボリュームがあってスタミナ感がありますね。
中華昼飯のド定番です。