
仕事の約束13時まで、あと30分。
お昼ごはんを食べるには絶望的な時間だが、どこかで無為に時間を過ごすには長すぎる。
すると一軒の喫茶店が現れる。
白い木の板を組み合わせ、頭上に掲げられた看板が、妙にかっこいい。
とりわけ、彫りこまれた赤いフォントが斬新だ。
遣り過ごそうとしたボクは思わず足を止めた。店に入るつもりは全くなかったのに、ボクはまるで、磁力に吸い寄せられるように店に入ってしまった。
店に入って、また驚いた。
左右の壁には、おびただしいほどの本、本、本。
その蔵書の数に圧倒される。
本のある空間は美しい。
そして、本のある人生は豊かである。人は一体、一生のうちで、どのくらいの本と出会うことができるだろうか。
しばし、ボクは呆然として、その蔵書に見入った。
お店の奥にカウンター。その手前にテーブル席。
ひとりのご婦人がたたずんでいる。
白い部屋に白いテーブル。
13時の約束まで、あと25分。コーヒーをいただくつもりで入ったが、メニューにあるカレーに強く惹き付けられてしまった。
俊巡してる暇はない。
ボクはカレーとコーヒーを注文してしまう。
ここから先は
旅するランチ 020 - あんぬママ謹製カレー(ポーク)- 「cafe 杏奴(annu)」(足利市通)
のとおりだ。
何故、当欄で再び、この喫茶店を書こうと思ったか。
練馬でお店を営業されてから、この足利に移転をした「杏奴」。
まるで、タンポポがその種子を飛ばすように、新たな地でその文化を開花させた。
本と人が出会うように、喫茶店に人が集まり、また新たな出会いを繰り返す。喫茶店とはそういう場所だと思う。
今まで違う時間を過ごしてきた人同士が、喫茶店という場所で交錯する、その不思議。
ボクはその不思議さに、この店を通じ、改めて気づかされた。
喫茶店。
この「杏奴」以上の喫茶店を見つけることができない。
そういう金字塔的な店をこのさすらいシリーズに入れなくてはならないと思ったからだ。
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