
80年代のミュージックシーンにあって、sionの登場はひとつの光明だった。
時代はバンドブーム前夜。しゃがれた声を絞り出す強烈なメッセージとグラムロックの出で立ちに加え、謎めいた名前で一気にミュージックシーンを駆け上がった。
音楽はもとより、その存在感が与えた影響は少なくない。福山雅治が尊敬してやまないことは言わずもがな。ミュージシャンズ・ミュージシャンという言葉は彼から始まったといっても過言ではないだろう。
sionというミステリアスでファンタジックな名前も一般社会に定着した。事実、現在の小学生の名前に少なからず存在している。
三ノ宮を歩いていて、ふと気になったカフェがあった。北欧風の白いペンキで塗られた木の小屋調のかわいいカフェである。なによりも店名が気になった。「cafe si^on」とある。
ボクは、気になって入ってみた。
優しい雰囲気のカフェだった。かわいい女性が切り盛りする小さなカフェ。こんなに雰囲気のいいカフェに当たるのも久しぶりだ。
多分、店名とsionには何の関係もないだろう。
ホットコーヒーを頼んだ。
意外なことに、コーヒーはガラスのカップで出てきた。なんとも変わったカフェである。
温かい気持ちになれる雰囲気が素晴らしい。
コーヒーの値段以上に気持ちが落ち着く。働く女性らも、笑顔が優しい。一見のボクにも優しく接してくれた。
この雰囲気は何ものにも変えがたい。これはお金の問題ではないのだ。
装飾はお金を出せば、ある程度は作れるが、お店の雰囲気は、いくら金をつんでも作れない。パーソナリティの問題である。
温かみのあるカフェは、あこがれですらある。
「cafe si^on」は、この11月をもって閉店されるとのこと。ボクはたった一度だけ、コーヒーをいただいただけ。それでも、その温かみに包まれた時間は、とても貴重な機会だった。あれだけ雰囲気のいいカフェはそうあるものではない。カフェの命は雰囲気だと思う。
たった一度だけ、時間を共有できたことに感謝したい。
ありがとうございました。
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