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BASEBALL馬鹿 BLOG

オレたちの「深夜特急」~インド編 アーグラー 1 ~

2015-11-15 23:44:14 | オレたちの「深夜特急」

気が付けばわたしはベッドの上だった。

四方の白い壁がまぶしく、わたしが寝かされているベッドのシーツも真っ白で、清潔である。一瞬ここはインドではないとさえ思った。

インドにこんな清潔なところがあるのか。

そういえば、旅に出てからの、この半年間というもの、わたしは純白のシーツなどほとんど見なかった。アジアの安宿にはそんなものは皆無だった。ぎしぎしときしむベッドにねずみ色をしたシーツやベッドカバーが備わっているのがお決まりのパターンである。ともすれば、もう何日も、いや何か月も洗ってないようなものが敷かれていることもあった。

ここは病院か。わたしは病院に運ばれたんだっけ。

わたしが横たわっているのは広い個室。一人で使うのはもったいないような。

 

すると、思いだしたかのように襲ってくる強烈な便意。わたしはとっさにベッドから起きあがろうとしたが、右手に強烈な痛みが走った。

右手の甲には人工的な何かが刺さっていた。

点滴だった。

わたしはキャスターがついた点滴のシステムとともに個室内にあるトイレに走り、急いで用を足した。

排出されるものは水である。それもほんの僅かしか出ず、一度出すと便意はおさまるのだ。そしてベッドに戻ると、すぐまた便意が襲ってきた。

わたしは記憶を取り戻した。

 

アーグラーのバス停に到着し、バスのタラップを降りた瞬間、近くにいた7~8歳の子どもら5人に囲まれた。何かの物売りだと思ったわたしは、おおいに警戒したが、どうやらそうではなかった。仕切りに何か歌を唄えとけしかけてくる。わたしは自分の好きな歌を日本語で唄うと、彼らは大喜びして手拍子で応えてくれた。

この時まで、わたしは体調が悪いという自覚はなかった。

問題はこの後であった。

バス停から10分程度歩き、ニューデリーの宿で情報交換したゲストハウスにチェックインした頃から、わたしは体調の変調を覚えるのだった。

シングルルームを運よく確保し、部屋のドアを開けて、バックパックを床に下した際に、わたしは少しふらついた。「おかしいな」と思うと同時に、自分がどうやら熱っぽいことに気が付いた。おでこに手をやると、熱があることが分かった。

そのあとは、坂を転がり落ちていくように、体調は一気に悪化した。

ベッドに寝ころんだものの、躰がだるくて、起き上がれないのである。いつものわたしなら、バックパックを下すと、すぐさま部屋を出て、街の散策に出掛けるのだが、そういう気力が湧いてこない。

これはまずいことになった。

 

この数日、ちょっと無理をしすぎてしまったかもしれない。チベッタンキャンプで蚊の襲撃に合い、一睡もできなかった翌日、ボブネッシュと炎天下のチャンドニーチョウクを4時間も歩き通した。そして、深夜の鈍行列車に揺られて、マトゥラーへ。わたしは知らず知らずのうちに体力を消耗し、疲労が蓄積していったのだろう。

とはいえ、どの程度ベッドに寝ころんでいただろうか。不意に強烈な便意に襲われた。

トイレに駆け込み、インド式の便器にまたがると、すでにわたしの便意の源は液体と化し、過走行車のインジェクションのように劣化した霧を噴射したのだった。突然のことにわたしはいささか驚いた。和式よりも全長が3分の2程度の便器に収まり切れない粗相をしてしまったからだ。

発熱だけでなく、腹の具合まで悪いのは、少し厄介かもしれない。

暗澹たる気持ちになりながら、ベッドに戻ると、間髪入れず、次の波が再び襲ってくるのである。そうやって、わたしはだるくなった躰を起こし、2m先のトイレまで歩いて用を足した。

その繰り返しが延々と続いた。

はっきりとした記憶はそこまでである。わたしは薄れかけていく意識の中、ゲストハウスの玄関前にデスクを置いたホテルの男に具合が悪いことを訴えたところで、ぷっつりと記憶を手繰り寄せる糸は切れている。

その後、どうやって、わたしはこの病院に連れてこられたのか分からない。わたしが想像するには、ゲストハウスのフロントを務める男に体調を訴えた瞬間、わたしはその場で倒れたのかもしれない。フロントの男は急いでクルマを確保したか、救急車を呼んで、わたしをこの病院に搬送させたのではないだろうか。

 

わたしは、着の身着のままだった。部屋にはバックパックはなかった。ということは、わたしは部屋を借りたまま、ここに搬送されてきたらしい。

持ち物はパスポートと僅かなお金だけだった。

そうしている間にも、間断なく続く便意に抗えられず、わたしはトイレとベッドの往復を繰り返すのだった。

コメント (4)    この記事についてブログを書く
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4 コメント

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おおぉぉぉっっ! (ふらいんぐふりーまん)
2015-11-16 23:01:58
遂にきたねえ、この時が。(笑)
そうかあ、真相はこんな感じだったのか。

それにしても記憶が無い状態で病院とはまた穏やかな感じじゃあなかったんだね全く。

しかし、「過走行車のインジェクションのように・・・」って・・・。声出して笑っちゃったよ。

さて、この後は、俺の捏造した死神がやってくる夜になるのかな。読むの&トラックバック貼るの楽しみにしてるよ。(笑)
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Unknown (熊猫)
2015-11-16 23:55:08
師よ。
楽しそうだね。随分と。
自分は瀕死の状態だというのに。

しかし、残念ながら、今回は出てこないよ。
死神は。
この時じゃないんだ。師よ。
こんなのは、まだ序の口なんだよ。

まだしばらくかかるが、気長に待ってくれたら嬉しいよ。

師よ。
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なんだ (ふらいんぐふりーまん)
2015-11-17 22:58:53
 まだ死神出てこないのかあ。(笑)

 ちなみに、俺がすごく楽しそうなのは、まあ、過去の話しで今では笑い話になってるからだよ。もちろん、師も分かってると思うけど。

 それに、そんな風に書いてるけど、師も俺のデンジェラスネタとか好きでしょ。(笑)

 人は人の不幸ネタが好きなんだよ基本、って、ああ!もしかするとにわかブッディストになったから、そんな風な俗な気持ちはなくなっちゃったか?師よ。
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Unknown (熊猫)
2015-11-18 08:49:05
しかし、不思議なもんで、師の捏造した死神が、だんだん本当に見たような気がしているんだよ。
記憶なんてそんなものなのかもしれないね。
多分、だいたいの記憶って、盛ってると思うね。釣った魚がだんだん大きくなっていくのと同じように。

冤罪だって、「お前がやったんだろ」って何十時間も言われていると、「自分がやったのかな」というようになると思う。

デンジャラスネタ、大好きだよ。
不幸なネタも大好きだよ。

そこから解脱しないといけないと思う今日このごろだ。
それがにわかから、真性に行くプロセスだと思っているよ。

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