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居酒屋さすらい 0935 - 角打ちに流れる時と思い - 「川木酒店」(明石市魚住町西岡)

2015-11-17 11:22:18 | 居酒屋さすらい ◆立ち飲み屋

訪問先を間違えなければ、この店を知ることもなかった。

ぼくは、取材先に伺うため、魚住の駅を降りた。ところが、取材先には店舗が2つあった。

この日、ぼくは取材対象者がいる店とは違う店舗に向かったのだった。

その時、見つけたのが、この「川木酒店」である。

 

ぼくには、なんとなくピンとくるものがあった。

角打ちの予感というものだろうか。

店の中を覗くと、やはり角打ちだった。

テーブルの上に、手書きで「立ち飲みは5時から」と書かれたボードが乗っていた。

 

「仕事が終わったら寄るか」という予定は必ずしもうまくいくわけではない。

イレギュラーなことがいくつも起きては、予定を頓挫させる。

この日も、仕事が終わると、先方から、気を利かせていただき、西明石の駅まで送ってもらった。だが、そこで美人姉妹がきりもりする「どりーむきっちん」という立ち飲みを見つけて、気持ちよく飲んだ。

人生なんて、こんなもんだ。

人生万事塞翁が馬なのである。それは因縁とも言い還られる。

 

明石に行く機会はそうそうない。

けれど、それから約2年後、再訪が叶ったのである。

 

17時を過ぎた「川木酒店」には、2人の先客がいた。

その中に入って行くのは、勇気が必要だった。お店は商売ベースではなく、極めて個人的にやっていらっしゃる感じに見受けられた。

ご隠居さんらの集いの場。

つまり、夕方酒が飲みたくなっても、ご隠居さんの立場上、難しい場面もあるだろう。だが、「散歩に行ってくる」と出掛けて飲む場があれば、事はまるくおさまるのだ。しかも、飲み友がいればなおいい。

ローカルな角打ちは、公共性の機能がある。

 

さて、店の前まで来て、そんな思いに捕らわれ、ちょっと躊躇したが、ここは決心して入店することにしたのだった。

「ちょっと飲んで、すぐ帰ろう」。

そう思って、店に入った。

 

先客の御大らと店のおじさんは予想どおり、わたしの乱入に戸惑いを見せた。

おしゃべりが途切れたのだ。

やっぱり、パスタイムを邪魔しちゃったんだなと少し後悔した。

 

ぼくは瓶ビールをお願いした。ここは注文という言葉は適当ではない。

飲ませていただいてると考えたほうがいい。

キリン一番搾り。しっかり冷えている、その瓶を握り、小さなコップにそれを注いだ。

こぽこぽと音をたて、ビールは泡立った。

それを一息で、ぐ~っと飲み干して、一日の時間を思い返す。

角打ちの良さはここにある。ジョッキに注がれた生ビールでは、ここまで深い思い返しをしないだろう。

ともあれ、ビールを飲んで一息つくと、気持ちにゆとりが出た。

 

ちらりととなりに立つ御大らに、かるく挨拶をした。これは重要なことである。

自分がいる世界で、もし自分が生きづらいと感じるなら、それは自らの行動で変えていくことは可能ではないだろうか。

少なくとも、ぼくが挨拶をしたことで、場は少し和らいだ。

 

「お兄さん、どっから来たの?」「あ~、東京ね」「いつ帰るの?」「今日?もっとゆっくりしてきなよ」。

そんな会話がしばし、交わされたのである。

 

ビールのお供に「明石焼き」(640円)をいただいた。

仕込んでいたものをチンしたが、そこは手作りだから、本当においしい。

ローカルフードは現地にて食べるに限る。

「明石焼き」にまぶされた三つ葉が口のなかでアクセントになっていた。

 

なんとも不思議な時間である。

居酒屋ならともかく、店というより、半分他人の家で飲んでいるようだ。

だから、少し心細く頼りない気持ちもあるが、この時間はボクだけのものだ。

 

瓶ビールを一本飲み干し、ボクは店を出た。

「お邪魔してすみません」。

「いや、なんもなんも」。

 

こういう会話が角打ちでの一番の肴なんだと思う。

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