岐阜の「大衆酒場 ホームラン」。「食べログ」には、11時半開店とある。以前、正午頃に店に行ったが、まだ開いてなかったことがある。その情報は疑わしい。また、「岐阜 立ち飲み」で検索すると、「ホームラン」がヒットする。けれども、この店は立ち飲みではない。
ホームランがヒットするってちょっと面白い。ホームランは、ヒットの延長とはよく言ったもの。でも、ホームランがヒットするって。
午後3時、店に到着。店は意外に賑わっている。店内の中央、カウンターのようなアイランドに腰掛ける。ごぼうサラダのお通しが運ばれてきた。
「生ビール」は、プレモル。が~ん。
「ホームラン」という店名に似合わず、店内は野球とはあまり関係のない装い。興味深いのは、店内に設けられた巨大な黒板。
そこにはきれいな絵が描かれている。ベースボールキャップを被った可愛らしい豚の絵である。これが、唯一、野球を感じさせるエッセンスだった。この豚の絵を眺めると、この店が、焼きとんをメインにした店であることが分かった。かなり、大箱の店で、大衆酒場を名乗ってはいるが、その源流は焼きとんにあるかもしれない。
では、その焼きとんを頼んでみるか。
「豚バラ」(150円)に「カシラ」を一本ずつ。それに、「ホッピー」(390円)。
「ホッピー」は、残念なことに、小売り用のそれだった。焼きとんは、それなりにうまいが、特筆するものではなかった。
少しずつ、店は混み始めてきた。岐阜にも早い時間から飲む人がかなりいるようで、何か嬉しい。
次に「とんちゃん焼き」(390円)をオーダー。多分、これが「ホームラン」の真価を発揮するメニューだろう。名古屋グルメの「とんちゃん」が、この岐阜にも。
ホルモンの味噌焼きという、いかにも名古屋らしい「とんちゃん」を、美しくアレンジしている。葱をたっぷりまぶし、やや上品に皿に盛られた「とんちゃん焼き」。これが、抜群に旨かった。豚の旨味をぎゅっと凝縮。味噌が嫌みなく、自然に調和している。正直、大衆酒場っぽい雰囲気はなく、むしろチェーン店臭い雰囲気を醸していただけに、この一品は価値ある逆転打となった。
柱に、古い写真が2つ飾られていた。見たところ、オブジェのような類いではない雰囲気がある。それとなしに、店の大将らしき人に尋ねた。すると、その写真は大将の母親であるという。約70年前に撮影された貴重な写真を店内に飾っている。いろいろな思いがこめられているのだろう。
「ホッピー」も料理も、それほど高くはなく、味も悪くない。ホームランを狙うよりも、どちらかといえばスモールベースボールだ。だからこそ、なのかもしれない。王貞治がそうであったように、野村克也がそうだったように、ホームランに憧れたからこそ、技術を磨いた。大衆が夢を見るのが、ホームランなのだと思う。
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