
立ち飲みラリー山手線編は五反田を終え、いよいよ品川へと足を運ぼうかと思ったその日にアクシデントが起こった。
五反田駅から、目黒駅へと歩こうかと五反田駅を降りた瞬間、西口の目の前に大きな看板が目に飛び込んできた。
「五反田バル」。
あんな店、ついこないだまでなかったけど。まさか、立ち飲みじゃないよな。
一応、店の前まで確認に行ってみた。
すると、その店は立ち飲みだった。
「バル」とは、この五反田に似つかわしくないと言ったら失礼か。
木製ドアがお洒落なカウンターだけの店。
世はバルブームである。
いわゆる南欧のカフェバーだ。スナックをお洒落にした店。今やどこもかしこもバルである。
この立ち飲みラリーも品川を抜けて、いよいよ文字通り山手にさしかかろうとしている。大崎は居酒屋自体が少なかったけれど、五反田を超え、そして目黒へと向かう。目黒、恵比寿はちょっと高い店が続くだろうと踏んでいた。だが、この五反田の地にもはやバルがあるとは思わなかった。
「五反田バル」はワインバーだった。
近年、やけに勢力を伸ばしたワインバル。
だが、ここは怯まずに入ってみよう。
かっこつけた店である。黒板に飲み物を手際よく示し、グラスワインは全て500円と書かれている。
「高いな」と思った。日本酒よりもぼっているとも感じる。
1合あるかないかのワインが500円である。
店の奥に陣取って、お兄さんに一言。「辛口の白」と注文した。
すると、お兄さんは思案するように顔をあげ、「チリのシャルドネがいいか、と思われます」という。
よく分からないから、「それで」とお願いした。
ワインの品揃えはかなりあるらしい。黒板にはそう書かれているが、その銘柄を見ても、果たしてどんなものがあるのか分からない。
お通し(300円)とともに白ワインが出てきた。
立ち飲みにお通し。バルになると立ち飲みの流儀もかなり変わる。
だが、ボクはちょっと納得いかない。立ち飲みにお通しは不要だ。
お店のお兄ちゃんに聞くところによると、店は数日前に開店したばかりなのだという。まだ、店のオペレーションも確立できておらず、店内はぎこちない。
メニューに目を転じてみると「牛すじ激辛煮込み」(480円)というものがあり、ボクはすぐさまそれを頼んだ。白ワインを飲んでいるということも忘れて。
ボクは白ワインばかり好んで飲む。だから、ワインバルに行くときはぶれない。辛口の白しか飲まない。
「煮込み」は汁が少なく、皿上に盛られて出てきた。
食べてみると確かに辛い。だが、「激辛」という表現は正しくない。「やや辛」といったあんばいだ。
ワインは好きだが、グラスワインが500円とはちょっと高い。ワインはがぶがぶと飲みたい。ボクは研究会などの懇親会でワインはついがぶ飲みでてしまう。だって、お金の心配がないからだ。
だが、500円ともなると、ちびちびと飲む。そのフラストレーションといったら。
結局、ワインはもう一杯同じものを頼んだ。
煮込みの味だけで判断はできないが、どれもあまり期待できるものではなかった。若い料理人があまりにも頼りなさすぎた。
だから、もうこれ以上はオーダーを止めるとするか。
この店も長くはないかも。そう思い、ボクは店を後にした。
いざ、目黒へ。まだ見ぬ、高給住宅地の只中へ。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます