
世の中には、敷居の高い蕎麦屋から、そうでない店まで、ごまんとある。だが、元々、蕎麦は、江戸の庶民のもので、駄蕎麦が普通だったのではなかったか。
そうであるのなら、安価に食べられる立ち蕎麦や駅蕎麦こそが本流と呼べるのではないだろうか。
最近よくそう思う。
近年の立ち飲み屋には、立ち蕎麦と立ち飲みの二毛作の店が多くなってきた。
最近の一押しは田町の「がんぎ」である。この店は蕎麦もお酒も本格派だ。立ち蕎麦だから、立ち飲みだからといって小ばかにしてはいけない。
むしろ、そういう小さな店の、庶民派蕎麦のほうが冒険心があふれている。ボクは最近そう思う。
昨年、蕎麦屋さすらいをスタートさせると意気込んだ。
結果的に和装で蕎麦屋を巡ることが実現できていない。
なにしろ、新年明けてから土曜日にほとんど出勤している有様で、実はそれどころではないというのが実情だ。
先月、土曜日出勤の折、2回ほど、会社の近所にある「ゆで太郎」に行った。
ボクが最も普段使いしていた路麺である。頼むはたいてい「おおもり」(420円)だ。
この1年ほど、行く回数が激減したのは、2つ理由がある。
ひとつは、店長のおばちゃんが、人の悪口ばっかり言っているから。2年前は、店員が皆男性でいい雰囲気の店だったが、一昨年頃だったか、店員が皆入れ替わり、女性ばかりで再スタートした。店長と思しきおばちゃんが仕事中に発する小言や愚痴を毎回聞かされているうちに、ボクは少しずつこの店から足が遠のいた。
もうひとつが、「粉から自家製麺」を標榜する蕎麦が実はそれほどおいしくなかったという事実に気が付いた。
あれはいつだったか、アキバのカレーを巡る旅をしていた頃、ひょんなことからアキバの昭和通り、仲御徒町寄りの「富士そば」に入って、「もり」をいただいたところ、蕎麦の味のわいの違いに愕然としたものである。
麺のこしが違うのである。もっと言えば麺の弾力である。
「ゆで太郎」のHPによると同店のそば粉比率は55%。一方の「富士そば」は40%だという。後者は蕎麦殻も挽きこんでいるのだろう。若干黒い麺である。「ゆで太郎」の方が麺は白いが、実は薫りが乏しい。「富士そば」はつなぎが多い分だけ、もっちり感もある。実はボク、「富士そば」の方がおいしく感じる。
しかしながら、そば汁は「ゆで太郎」の方が辛くておいしい。アキバ界隈の路面では「ゆで太郎」が断然の辛さである。だから、そば猪口に入った汁は少ない。うっかりつけすぎると最後は蕎麦湯が楽しめなくなる。
この辛さ、キリッとしているだけに、麺のバランスがよければもっと引き立つような気がするのだ。
昔、男性店員が店を切り盛りしていた頃、ねぎは山盛りで出してくれたが、今ではほんのちょっぴりの刻みネギになった。それも残念である。そのうえで、先述したように店のおばちゃんの愚痴大会。正直言って、ボクはこの「ゆで太郎」の店舗にいい印象を持っていない。
いや、うちの会社のT見君、そしてT根も同じことを言っている。
蛇足だが、たねものも食べてみた。
「かき揚げそば」(420円)。
これは丼に巨大なかき揚げがドーンと入ったしろもの。しかもかき揚げがはみ出ている。
実はたねものの方がそばのおいしさが引き立っているように感じる。この辺はゆでたての真価が発揮されていると感じる。
明日も土曜出勤。
「ゆで太郎」に行くか、ちょっと迷う。
江戸時代とかに蕎麦が安かったのは、単純に江戸の近場で蕎麦の生産量が多かったからだと思う。
一方の上方では近場で蕎麦があまり作られてなかったから、うどん文化に。
って事で現代では、輸入のものも含めて蕎麦粉自体が高いから、特に国産のものは高級食材みたいになってるけど、だからといって安くするために、配合比率が元来繋ぎだった小麦の方が高くなっていいとは、俺は全く思わないなあ。
蕎麦というならやっぱり配合は二八まででしょ。とか言いながら、俺が食ってる市販の乾蕎麦とかも、小麦配合率が高い奴は一杯あんだろうけどね。
食べてみて、配合まで分かるっていうのは、素人では無理だよ。
元来、配合比率で食べているわけではなく、実際の食感こそ重要なわけで、うまいと感じて満足できれば、それでいいんだと思うよ。
「蕎麦みたいなうどん」では、詐欺と変わらないと思う。
まあ、安い食品の多くにそういう物が多くあることは事実だろうけど、俺はそれを良しとはしたくない。蕎麦食べたい欲をしばらく我慢して、蕎麦比率が高いと思われる蕎麦を食べたいと思う派だよ。
まあ、師が知っている上でそれでいいっていうのを否定する訳じゃないんだけど、多くの人が知らずにそういうのを食べてるっていうのは、詐欺的だなと思ったもんでちょっと熱くなったよ。
師のいうことはよく分かるよ。
そんなのを挙げれば、ごまんとあるよ。
魚も酒も野菜も全て。
本物が手に入らなくなってきたんだろうね。
でも、いつしかフェイクが本流になってしまう時もあるはずだよ。
それは市場の原理で決まるんじゃないか。
実は神田やぶそばに行って蕎麦前をいただき、最後にせいろを食したのだが、蕎麦比率9割。本物はやっぱり違うな。
消費者ニーズの話だけど、「ココ壱」の廃棄食品の横流しだって、消費者ニーズがあるからなんだろうね。
安価な立ち飲みを応援しているこのブログはそういうニーズを求めているうちのひとつだよ。