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居酒屋さすらい 0773 - 土着の酒肴、地酒の力 - 「案山子」(新潟市中央区東堀前通)

2014-08-15 14:58:53 | 居酒屋さすらい ◆地方版

この辺りかなという直感で、わたしはバスを降りた。

勘である。

商店街が長く続き、辺りは少しずつ賑わいを見せてきた。歓楽街とはいえないまでもその兆候がうかがえる。

 

商店街に入ると、漫画「ドカベン」の像があちこちに設置されていた。新潟市は水島新司さんの出身地だったか。

小学校2年生くらいだったか。お袋は、具合が悪く、京成大久保の国立病院に通っていた。わたしもその病院についていかねばならず、とにかく長い待ち時間が苦痛だった。お袋はわたしに漫画を買ってくれた。「ドカベン」の3巻。わたしが初めて読んだ漫画だった。

しばらくいくと、水原勇気の像も出てきた。「野球狂の詩」もあったか。

小学校3年生くらいのことだった。岩手県のおばあちゃんチに行った折、従兄弟が「野球狂の詩」の単行本を持っていた。それを見たおばあちゃんが「やきゅうきょうのし」と読んだのを見て、従兄弟は「やきゅうきょうのうただよ」と言い返したことを覚えている。

 

今夜の居酒屋は実は決めている。

太田和彦さんお奨めの居酒屋「案山子」である。

せっかく新潟に来たのに、うまい日本酒が飲めなかったら意味がない。それならば手っ取り早く、太田和彦さんの「居酒屋味酒欄」で見つけてしまおう。そんなわけでついつい横着してしまった。

 

商店街を抜け、店を探す。一応、携帯のGPSを使いながらおおよその方角を掴んでいる。

すると、道の真ん中に長屋の建物が現れた。面白いことに、店が幾つかテナントされ、様々なものが売られている。焼き魚が串に刺されて売られていたりして、見ているだけで楽しい。この変わった通りは道幅も広く、もしかすると、以前ここは川や水路があったのではと感じさせる。今はすっかり暗渠になり、その上に、この変わった長屋が建てられたのではないだろうか。

 

そう思案するうちに「案山子」に辿り着いた。

「案山子」の住所は堀前通。やはり堀がかつて存在したのかもしれない。

「案山子」はきれいな作りだった。太田さんの本によると、数年前に改築されたのだという。木造と軽鉄骨を組み合わせた店作りの苦労の跡がうかがえる。

 

17時を過ぎたばかりの店内にはお客は誰もいなかった。

物腰の柔らかそうな大将がひとり。わたしはひとりカウンターに座り、ビールを注文した。

すると大将は、「こんなのもあるけれど」とわたしに勧めてきたのは、新潟の「ビイル」。「風味爽快にして」(560円)と書かれている。一見、地ビールかと思ったが、大将は「地ビールじゃないよ」とことさらに強調した。

本当だ。サッポロビールだ。このやたらと名前の長いビールは、なんと新潟県限定販売なのだそうだ。何故、サッポロビールが新潟県に。

これは後で分かったのだが、サッポロビールの創始者、中川清兵衛と大倉喜八郎は新潟県の出身であり、それに感謝を込めて作り上げたビールだという。

 

一口飲んでみる。

なるほど、さすがにその名称に恥じない、すばらしいスッキリ感。喉越しがいい。黒ラベルよりライトビールだが、喉越しを重視するとビールはこうなるのかというお手本である。

素晴らしい。

ついついゴクゴクと喉を鳴らし、その動きを止められない。

新潟は水がいいのだろう。うまくいえないが、水の粒子がなめらかだ。だから、喉越しも自ずとなめらかになるのではないだろうか。

 

酒肴には「のっぺ」。新潟に来たらもぅこれしかない。

里芋のとろみがなんともいえない。昨年、長岡の「冷やしのっぺ」を食べたが、温かいのもなんともいえない。

そして人参がこれまた最高だ。

これを食べたら、もう日本酒しかない。

 

大将におすすめの酒を尋ねると「麒麟山」を推してきた。純米のいわゆるグリーンボトルである。

もちろん、ご当地新潟県の地酒である。

これがふくよかでうまい。

柔らかみのあるおいしいお酒。これに「のっぺ」がよくあう。

そして、つまみはもう一品。これ外せない「栃尾揚げ」だ。

これも昨年、長岡で食べた。その長岡の店「居酒屋 呑んた」の「栃尾揚げ」は刻みネギたっぷりのものだったが、「案山子」のそれは納豆とねぎ。これが実に素晴らしい。

素朴にして、キラリ。地味だけど、料理は心を打つ。

地元の料理と地酒。地元というより、土着の料理と言ったほうが適当か。

土の香りがする魂の酒肴たち。

これぞ居酒屋の醍醐味をまさに堪能した時間となった。

 

その後、わたしは太田さんさんの助言にあった「白龍大権現」には手を合わさず、ついつい次の居酒屋に向かってしまった。

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