小寄道

日々生あるもの、魂が孕むものにまなざしをそそぐ。凡愚なれど、ここに一服の憩をとどけんかなと想う。

心のなかの暴力、刃 ①

2022年06月01日 | エッセイ・コラム
「どーか誰にも見つかりませんようにブログ」というブログがある。いま私を刺激し揺さぶってやまない。哲学・思想・歴史から芸能・音楽・事件風俗など硬軟・古今東西をとりまぜた、多彩なジャンルに言及している個人ブログだ(左側の「ブックマーク」にリンクあり)。単発の重厚な記事があれば、シリーズ化したもの、何年にもわたり追求されているテーマの記事もある。 それらが毎日休まず書かれ続けていて、たいへんに胆力のあ . . . 本文を読む

プーシキンの見た オデーサの海

2022年05月10日 | エッセイ・コラム
さようなら 海よ わたしは永遠にわすれないおまえのたえにおごそかな美しさを。たそがれどきの おまえの深いどよめきはながくながく わたしの耳にのこるだろう。わたしはおまえの思い出に胸をみたされおまえの岩を おまえの入江 光と影をはてしなきその潮騒を はるかな森へことばなき 荒野のはてへたずさえてゆく。  (『プーシキン詩集』から。金子幸彦訳) その筋の観測から外れてプーチンの演説は、単にウク . . . 本文を読む

事実群のなかのツイッター、その未来

2022年04月27日 | エッセイ・コラム
テスラのイーロン・マスクが、遂にツイッター社を5.6兆円で買収した。 ツイッターとは、150字以内なら誰もが自由に言葉をつらね、場合によって主張を裏づける画像・映像を添付できるSNS(交流サイト)だ。自分の書いたもの、呟いたものが世界に発信できる。自分の投稿が多くの人に関心をもたれ、その後も注目してくれるフォロワーができる。投稿に広告主がつけば、収入も見込める。 そんなアイデアだけで起業し . . . 本文を読む

爬虫類のように冷たい男

2022年03月28日 | エッセイ・コラム
昨日の東京新聞、一面のコラム『筆洗』は、アメリカの元国務長官マデレーン・オルブライト氏を追悼していた。享年84歳。 亡くなるまでロシアのウクライナ侵攻を非難していたそうである。記事の書き出しは、彼女がプーチンと初めて会ったときの印象を紹介している。「小柄で、青白く、は虫類のように冷たい」「(プーチンは)自国に起きたことに屈辱を感じ、その偉大さを再建することを決意している」    マデレーン・ . . . 本文を読む

ワクチン推奨の専門医が、未接種かつ重症化した事実。その真相

2022年03月16日 | エッセイ・コラム
美術史家&作家の中野京子さんのブログを拝読していたら、子供たちがマスクすることの哀しさ、やり切れなさについて書かれていて、最後にこんな文章が付されていた。 「ところで、例の注射、テレビで盛大に勧めていた分科会の専門家が、自分は接種していなかったことがバレた。これは詐欺ではないの? なんて嫌な世の中になったのだろう。」 上記の文章に続いて、ネットのアドレスがあり辿ってみたら、救急救命(ER)の元 . . . 本文を読む

嬉しい「想定外」、ロシアの「失敗の本質」

2022年03月14日 | エッセイ・コラム
まず初めに、前回の記事に誤りがあったことをお詫びして訂正しなければならない。 「ロシア人は実に忍耐強い。ロシア人は、何百回となく同一のことを繰り返して倦むことをしらない。彼らは、何事をなしとげるためにも時間というものがかかること、しかもたとえ時間をかけても成果があがらないことすら十分心得ている」という木村汎のロシア人観を紹介した。 よく考えると、ウクライナ人にも同じことが言えるのではないか。民 . . . 本文を読む

中国とウクライナ、そして米の陰謀論

2022年03月04日 | エッセイ・コラム
今日から北京パラリンピックが始まる。国際パラリンピック委員会(IPC)は、ロシアとベラルーシの選手団に対して、中立的な立場の個人としての出場さえも認めないという判断を下したらしい。ウクライナの選手はもちろん参加する。中国政府はこれら一連の動きを把握している。 習近平は先のオリンピック開催に際して、ロシアのウクライナ侵攻については、開催中は中止すべきと申し入れたという。プーチンは了承し、オリンピッ . . . 本文を読む

ウクライナに関する2,3の私見

2022年02月22日 | エッセイ・コラム
ビデオニュース(会員20年)でロシア政治の専門家・慶應大学総合政策学部の廣瀬陽子教授をゲストに招き、一触即発の危機だとされるウクライナ情勢論議が放送された。以前、ロシアがクリミア半島を電撃的に併合したときにもゲストに招聘された廣瀬氏。穏やかな語り口ながら、その緻密な情勢分析には確たる論拠があり、成程と唸らせるものがある。偏ったロシアプロパーではなく、アメリカを基軸にした国際関係論にも精通している研 . . . 本文を読む

賢太と慎太郎②

2022年02月15日 | エッセイ・コラム
前回の続き まず前置きとして、石原慎太郎について詳しく知らない。だから語る資格はないし、知ったようにものを書くのは不遜である。では止めますというのでは、読者に失礼だ。この身のダブルバインド状態を、ちと伝えたかった次第である。以上 優れた「石原慎太郎論」はあるか。巷では江藤淳のものが評価高い。江藤は神奈川の湘南高校にいたとき、石原慎太郎と同窓生であった。石原が35歳のとき国政選挙に打って出た。文 . . . 本文を読む

賢太と慎太郎①

2022年02月13日 | エッセイ・コラム
  西村賢太氏の作品の魅力はその人生の公理といおうか虚構といおうか、人々が実は密かに心得、怯え、予期もしている人生の底辺を開けっぴろげに開いて曝けだし、そこで呻吟しながらも実はしたたかに生きている人間を自分になぞらえて描いている。それこそが彼の作品のえもいえぬ力であり魅力なのだ。私小説は日本独特の領域ともいわれるが、私はそうは思わない。優れた作家は誰しもがどの作品の中でも己の一部を . . . 本文を読む

極私的アメリカの点描その④ 終わりなき銃社会

2022年01月16日 | エッセイ・コラム
アメリカが銃社会であることは、日本人なら誰もが知っていると思う(子どもは除く)。 だいぶ前のことで恐縮だが、マイケル・ムーア監督の映画『ボウリング・フォー・コロンバイン』は、コロラド州ジェファーソン郡立コロンバイン高等学校で起きた銃乱射事件を扱った傑作ドキュメンタリーだった(いじめられたことを苦にした二人の男子高校生が、12名の生徒と教師一人を射殺した凄惨な事件。その真相を探るために、ムーア監督 . . . 本文を読む

年頭に思う由無しごと

2022年01月08日 | エッセイ・コラム
●原子力発電はクリーン・エネルギーだとして、先進諸国で見直されはじめている。原発推進、その政策転換を示したのは、まず英仏。反対運動はあるや無しや、報道は皆無だ。アメリカ、日本もそれに続く気配濃厚で、先進諸国がこの体たらくなら、発展途上諸国はそれに倣うのが必定となる。 SDGs目標として原発そのものは適合するのか。科学者による検証とか、あらゆる観点からの評価はどうなのか。あな恐ろしや。 脱炭素の . . . 本文を読む

吉村昭の遺言、作家の矜持

2021年12月18日 | エッセイ・コラム
▲『万年筆の旅 Vol.16』の表紙から。吉村昭記念文学館が発行するパンフレット   11月終りの頃、東日暮里にある日暮里図書館に行った。その一角に「吉村昭ギャラリー」があることを偶然に知ったのである。 いや、その前に中野京子さんのブログ「花つむひとの部屋」に、『吉村昭氏の遺言』という記事が掲載された(11月23日)。 中野京子の「花つむひとの部屋」(※) 端正かつ簡潔な記 . . . 本文を読む

極私的アメリカの点描その③

2021年12月10日 | エッセイ・コラム
〇TVドラマ『ブレイキングバッド』にみる、アメリカの麻薬問題の闇および文化的発現 ドイツ文学者であり『怖い絵』シリーズの美術評論で著名な中野京子さんから推挙された本『ヒルビリーエレジー』に続いて、アメリカのTVドラマ『ブレイキングバッド』の全巻を視聴した。コロナ禍だからということもあったが、全部で約80話ほどもあるドラマを視聴したのは初めての経験である。 このドラマの放映が始まったのが20 . . . 本文を読む

高麗山から湘南平へ、低山ハイキング

2021年12月07日 | エッセイ・コラム
先日の日曜日、いつものメンバーで神奈川県大磯近くの低山ハイキングに行った。絶好の行楽日和であり、東海道線の普通列車に乗車したのも何十年ぶりで、いつにも増して心は浮きだった。東海道線は今や、高崎線と繋がっていたり、湘南新宿ラインとやらが横浜、鎌倉にまで伸びているらしく、東海道方面はだいぶん便利になったようだ。 大磯町の後背地は、海抜200メートルにも満たないなだらかな丘陵地が南北に連なっている。駅 . . . 本文を読む