小寄道

日々生あるもの、魂が孕むものにまなざしをそそぐ。凡愚なれど、ここに一服の憩をとどけんかなと想う。

中国とウクライナ、そして米の陰謀論

2022年03月04日 | エッセイ・コラム

今日から北京パラリンピックが始まる。国際パラリンピック委員会(IPC)は、ロシアとベラルーシの選手団に対して、中立的な立場の個人としての出場さえも認めないという判断を下したらしい。ウクライナの選手はもちろん参加する。中国政府はこれら一連の動きを把握している。

習近平は先のオリンピック開催に際して、ロシアのウクライナ侵攻については、開催中は中止すべきと申し入れたという。プーチンは了承し、オリンピックの終了を待って、その後直ちに作戦を実施した。また、両政府はともに、ウクライナ侵攻において、パラリンピック開催に関しては、お座なりの対応で国際世論をコントロールできると踏んだのであろう。

ともあれ、小生はウクライナの来し方を素人なりの情報収集でみてきたが、中国とは緊密な関係を結んでいることがわかった。中ロの専門家なら織り込み済みの事柄であろうが、両国間で「核に関する安全保障条約」を締結しているらしい。

かつて、1991年にソ連が崩壊したとき、独立したウクライナは当時、1240発の核弾頭と176発の大陸間弾道ミサイル(ICBM)があったとされる。これは、米ロに次ぐ世界3位の核保有国だったということだ(ベラルーシ、カザフスタンも核保有国であった)。

ウクライナはその後、核弾頭を海外に移転し、非核化の国となった(?)。1994年、アメリカは、ウクライナに対して非核化を受け入れさせるべく、見返りとなる財政支援を打ち出した。同時に、中国も動いた。1994年12月、「ウクライナへの安全保障の提供に関する声明」を発表した(追記2)

その内容とは、中国は核不拡散条約(NPT)が認める核保有国として、無条件に核兵器の使用や核の脅威を与える動きをしないことや、他の核保有国にも同様の保証をウクライナに与えるよう呼びかけることだった。つまり、「中国はウクライナをあらゆる核の脅威から守る」ということを保証した宣言である。(※追記)

当時、クリミアはウクライナの領土であり、軍港もあった。ウクライナという国は、ソ連崩壊時にあっては、核に関する技術・知識をはじめ、空母・戦闘機などの兵器や武器なども保有。ある意味、ソ連の第一線級の軍事リソースがそのままの状態であった。アメリカや中国が、その状態をのほほんと見過ごしているはずがない。

ウクライナはそれから、「自由と民主主義」の幻想に大覚醒したのかもしれない。欧米の財政支援をうけつつ、一方で武器等の輸出を通じて、中国とのパイプを太くしていった。もちろん、核に関する安全保障条約があったからであるし、ウクライナが製造した空母を中国に譲った(「遼寧」である)。その他、戦闘機などの最先端兵器もウクライナを介して、中国は自国生産できるまでになったといえる。

日本のお笑い芸人にタカ&トシがいて「欧米か(化)‼」というギャグで一世風靡したが、ちょうどそのとき(2005年前後)だろうか、ウクライナでは、生活面や文化において、「欧米化」は劇的に進化したといっていい。「美人の国」としても、世界の男たちは注目。ウクライナの女性たちが世界の先進国に進出したのもこの頃からだ(日本には1万人近いウクライナ人がいて、人気美人ユーチューバーも多いという)。

一方、ロシアは、エネルギー産業や軍需産業で国力を再建し、プーチンが国内統治を再編して、欧米からも一目を置かれる国に発展した。ロシア・ベラルーシ・ウクライナのスラブ三国国家主義者のプーチンが、欧米化に浮かれるウクライナに冷たい視線を送っていたのではないか・・。(「欧米か‼」のギャグを教える側近はいなかった。当たり前田か‼)

親ロシア派で東ウクライナ出身のヴィクトル・ヤヌコーヴィチは2004年大統領に選任されたが、選挙不正があったとされ解任。その後、ウクライナは政治的には、EU組とロシア組との間で混乱時期を迎える。その間、プーチンは様々な政治工作をしたという事実、情報はない。

しかし、2010年、すったもんだの選挙活動の後、ヴィクトル・ヤヌコーヴィチが大統領に就任。しかし、この親ロシア派の御仁は、欧米化に汚染されていたのか、不正蓄財と贅沢三昧な暮らしをおくり、国際刑事警察機構(ICPO)は2015年1月、ヤヌコーヴィチを公金横領などの容疑で国際手配した。2019年1月にウクライナの裁判所はヤヌコーヴィチに対し、欠席裁判であるが国家反逆罪等を認定して禁錮13年の判決を出す。本人はロシアに亡命したとされる。

かたや、2015年から2019年にかけて放送されたドラマ『国民のしもべ』で、圧倒的な人気を博したゼレンスキー。2019年5月、ウクライナの第6代大統領に選ばれた。以前に書いたが、ロシアのプーチンは、このゼレンスキーに対して特別な視線を浴びせはじめた、と思う。軽佻浮薄と思われるかも知らんが、小生、プーチンの心理分析というか見立てを書いてみる。

●俺と同じ低身長で小男だ。コンプレックスの塊でもあるな、俺と同じだ。
●小男だが、役者ができるほどハンサムだ。醜男の俺より女にもてそうだ。
●大学法学部卒、しかも弁護士資格所持。俺よりも高学歴で超エリートだ。(注・別記)

●就任早々、トランプと電話で直対話した。バイデンの息子のことらしい。
●NATO加入、EU加盟を打ち出した。何様のつもりで反ロシア活動するのか。
●西側は無理だが、全方位から軍事的圧力と武力包囲をしても完全無視した。
●いつの間にか国民人気復活? 欧米の後ろ盾? 米国のいいなり・傀儡か。

徒然なるままにプーチンの心理を勝手気ままに書き出してみたが、こんなことを小生が考えつくほどに、プーチンのカリスマ性は色あせ、正気をうしなった政治家にみえる。逆にウクライナの現大統領ゼレンスキーのヒロイックな行動も考えてみたくなった。

彼はいま、キエフの何処かにいて、国民にたいしてロシアに絶対屈してはならないと、ウクライナの成人男子を鼓舞している。SNSで自らの意気軒高な姿を映しだし、ロシア軍と闘えと、無精ひげとTシャツ姿で訴える。9000人のロシア兵に「死をもたらしたぞ!」(Fakeでないことを祈る)。こんな調子で、ウクライナの勝利を叫ぶ。(負けを認めない、核爆弾を落とされてやっと敗戦をみとめた、極東のある国を思い出してしまった)。

勝利を信じて、戦えば戦うほど、実際は、死者は多数出て、戦禍は積み重なる。ウクライナの国、国民はすべての財産その他を失う。ロシアにしても、兵士・兵器の損失はじめ国家財産を多大に損失する。これからは、産業は停滞し、財政も逼迫する。政治はもとより、金融面での国際的信用の大いなる失墜がもたらされるであろう。

これを見て喜ぶものはいるか。アメリカは少なくとも、いろいろな面で国益はある。ここで一々論うことはしないが、ウクライナから難民がヨーロッパ各国に移動し、ロシアもまた国力は確実に衰える。世界経済の均衡は崩れることは必至だが、アメリカの産業資本、金融資本が毀損することは考えられない。もちろん、潤うことは明白だ。

(中国はどう動くのか。いまはパラリンピックという国家行事に現を抜かしている。台湾有事のことなんか考えたくもないのは、小生もおなじである。)

さて、ブログ上でいろいろコメントをかわす「rakitarou」氏の記事で、最近刮目すべきウクライナ情勢を書かれていた。いわば陰謀論からみた情勢分析なのだが、「一極支配派」と「多極支配派」の二極分化によって、現在のアメリカが支配されているという見立てである。一極支配派は、ロックフェラー財団=米国民主党の勢力、「多極支配派」は、ロスチャイルド系財団=米国共和党の勢力という構図で、いわばアメリカの大手財団の陰謀によって、国際政治や紛争・戦争が起きているという。興味のある方は、下記のリンクから確認されたい。

        rakitarouのきままな日常    陰謀論から見たウクライナ情勢

個人的には、陰謀論は無視できないし、そうした勢力が実在することは認める。ロックフェラーやロスチャイルドは先の世界大戦でも暗躍し、アメリカの産軍複合支配体制を確立させた。しかし、今は両財団はその関係者、相続人ふくめて何千人、何万人と膨らみ、特定の実力者でも統治できないほどの組織になっているようである。いわゆる恣意的な陰謀を企んだところで、一国の政治をコントロールできるほどの陰謀的知能は(AIを除外して)成就しないという見方が多い。

確かにダボス会議というものがあり、世界の持てる者が結束して「Grate Reset」を打ち出した。そこにもロックフェラーとロスチャイルドの息がかかっているのか。rakitarou氏のように、新型コロナの厄災と世界経済の失調を関連付けて思考する際に、陰謀や「神の見えない手」をもってすればクリアカットに論じることはできる気がする。それは因果関係で事が論じられる欧米の合理主義と親和性が高い。小生としては、地頭がないせいか、まだ右往左往しながら考えていくしかない。

▲プーチンと同席していたゼレンスキー。ドイツのメルケル首相の存在がいかに大きかったか・・(ウクライナのNATO入りに反対した意味とは)。

 

(※追記)この記事を書いているとき、ウクライナ南東部にある国内最大規模の原発、ザポリージャ原子力発電所がロシア軍の攻撃を受け、火災が起きているとのニュースが入った。これに関して、中国政府およびウクライナのゼレンスキー大統領の公式コメントはない。中国の「ウクライナへの安全保障の提供に関する声明」の存在をゼレンスキーは知らないのか。それとも、彼は欧米だけを注視しているのか。中国はそれ幸いとばかりに、だんまり戦術を貫くのか・・。

(追記2)二国間の条約締結は、国際的にはそれほど重要なものとみなされないのか・・。ソ連が崩壊したことで、当時ウクライナが所有していた「核」を拡散しない、つまり「核不拡散条約」にベラルーシ、カザフスタンととも加盟したという歴史的事実がある。このとき、ハンガリーのブダペストにおいて、アメリカ合衆国、ロシア、イギリスの核保有3カ国の首脳が立会人みたいな立場で署名した。これは条約ではなく、日本語でいうところの「覚書」という文書扱いである。同席はしていないが、後に、中国とフランスは別々の書面で「若干」の個別保障をしている。この辺りの詳しい解説をしてくれる当時の政府関係者がいない。

なんだろうか「覚書」というのは・・(英語の表記は?)。核をもつことのもの凄い力、意味の重みをベラルーシ、カザフスタンそしてウクライナ3国は、自国独立の代償として放棄させられたのだ、その証左がここにある。であるからこそ、条約という正式な効力のない「覚書」で、核保有国からある種の「念押し」をさせられたというわけだ。このときロシアの大統領はエリツィンで、彼は権力の座になんら執着していなかった。自分の富と安全を約束してくれた男プーチンに、ロシアの未来を託していたのだから・・。

正式な核保有国5か国は、ウクライナはじめベラルーシ、カザフスタンに対して、「覚書」であっても安全保障を確約しているのである。その努力義務を負わねばならない。義務を放棄したならば如何なる制裁も受けねばならない。ロシア国民は、このことの意味を鑑み、プーチンという独裁者に真剣に対峙せねばなるまい。(以上、2022.3.22 追記

(注・別記):プーチンはサンクトペテルブルク大学の法学部を卒業している。ゼレンスキーと同等の高学歴だ。卒業後、KGBに就職。東ドイツのドレスデンで、政府要人への諜報活動に従事していた。が、プーチン自身は、鳴かず飛ばずの心境を保ち続けていたと思う。

 

 


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2 コメント

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国は引っ越せない (rakitarou)
2022-03-04 18:54:25
小寄道さん、ブログをリンク下さりありがとうございます。今回のような国同士のいさかい(戦争)というのは、自然に起こる事はないと私は考えています。Divide and Rule分裂させて支配せよ!が大国が他国を支配する常套手段でもあります。
日中関係でもいつも思うのは、日中が蜜月であることを一番苦々しく思うのは米国です。2012年、日中貿易額が史上最高を記録して、お互いの「決済は自国通貨でやりましょう」と話し合った途端、売国石原慎太郎が息子を総理にしてやると言われたのか、米国から「尖閣国有化」論をぶち、都が購入すると息巻いて一機に日中関係は最悪になりました。
ロシア・ウクライナが蜜月(資源と技術力が合体)になって困るのは欧米、ロシアとドイツが蜜月(これもエネルギーと技術)になって困るのは米国です。
常に損をするのは庶民ですが、得をするのは誰かを考えるとシナリオを書く人が解ると思います。陰謀論はトンデモ(でありえない事)という刷り込みが執拗になされてしまっているので常識的に考えられないだけで、一般社会の地域開発 でも会社の方針決定でもシナリオを作って画策するのは当たり前の事(20%位はうまくゆく)で、それの世界版というだけだと思います。
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rakitarouさま (小寄道)
2022-03-04 20:04:09
早速のコメント、ありがとうございます。
rakitarouさまの最新記事を読まないでこの記事を書き、少々後悔しております。もう少しましな文章になっただろうし、いま展開されている「ウクライナ戦争」の世界史的意味がさらに深く追求できたはずだと思っています。

おっしゃるように、一般庶民はいつも×××桟敷に置かれ、艱難辛苦を舐めさせられる。こんな結果に至った背景には、実はこんなシナリオがあり、それを仕切っていたのは数人の実力者だけだった。
それを信じたくない一般庶民は、事実や真相をトンデモ陰謀論として遠ざけるように刷り込まれてきた。

損を被ったことを皆で共有し、学習し、新たな知識として身につければ、世界はもっと開かれ、陰謀をたくらむ悪の知恵者も少なるというもの。

それにしても、ウクライナ発の悪の連鎖は、日増しに最終戦争への道筋をたどって行く雰囲気がありますね。
新型コロナを抱き合わせた「グレート・リセット」になるのか・・。それともアメリカ以外から、世界の崩壊を止揚する新たな知恵者が出るのか・・。
そして、前よりもいい方向に「巻き戻し」ができるのか・・。市井の老人は、漫然と見ているしか脳がありません。
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