小寄道

日々生あるもの、魂が孕むものにまなざしをそそぐ。凡愚なれど、ここに一服の憩をとどけんかなと想う。

事実群のなかのツイッター、その未来

2022年04月27日 | エッセイ・コラム

テスラのイーロン・マスクが、遂にツイッター社を5.6兆円で買収した。

ツイッターとは、150字以内なら誰もが自由に言葉をつらね、場合によって主張を裏づける画像・映像を添付できるSNS(交流サイト)だ。自分の書いたもの、呟いたものが世界に発信できる。自分の投稿が多くの人に関心をもたれ、その後も注目してくれるフォロワーができる。投稿に広告主がつけば、収入も見込める。

そんなアイデアだけで起業したSNS企業が、最先端EV車を生産する会社のオーナーに金で買われた。いかにもアメリカ資本主義を象徴するニュースである。イーロン・マスクの狙いは、投稿規制を緩和すること、株式上場の停止(廃止?)だとされる。

ツイッターといえば、アメリカ元大統領トランプが、任期中にあることないことを投稿した。それがフェイクであっても、大統領発のニュースとして拡散し、アメリカ社会を混乱させ、人々を分断させた。ツイッター社経営陣は、やむなくトランプのアカウントを凍結、排除した。それが要因なのか分からないが、ツイッター社は会員数を減らし、広告収入も減収している。そんな中の買収劇だった。

イーロン・マスク氏が提示した金額に、ツイッター経営陣は驚き、目が眩んだのだろうか。それともSNSにおけるある種の限界を見極めたのだろうか。
ツイッターの社会におよぼす影響力は大きい。Qアノンという存在もツイッターがなければ、人々は信じ込まなかったかもしれない。小生は当初からツイッターに親近感を湧かない。たぶん年齢(世代感覚)のせいか、150字という文字数の制限が気に入らないからだ。

日本においては、ロシア軍事学で最近めきめき名前を売っている小泉悠は、かつてツイッターからアカウントが凍結される経験をしたという。
詳しいことは知らないが、投稿する記事が度々炎上したのだと思う。

本人は事実に基づく記事を書き入れた。その内容に納得いかない、目障りだ、フェイクニュースだという人が多かった。賛否の渦が拡散し、人々は混乱した。抗議を受けたツイッター社は、自社の規定により小泉の表現の自由を奪うことになったのだ。

イーロン・マスクのツイッターになれば、トランプ元大統領のそれが復活するのではないかと危ぶむ人もいる。小泉氏の場合はどうなることか? 真実かフェイクかの検証、その間のグレーゾーンの書き込みは大目にみられ、書きたい放題になってしまうのか・・。

小泉悠は、自分自身でロシアにおける数々の事実群を分析するために、民間の衛星通信会社と個人契約し、衛星写真の画像を配信してもらっている。もちろん、アメリカの軍事衛星のように、地上10㎠を捉えるほどの精密さはない。だが、建造物の様子や人の動きを確認できる精度はあるという。
信ぴょう性があるのか自分でしらべ検証する。学者としての姿勢は、実に正しいものだ。

彼はそうした事実確認、透徹した分析をもとに記事を書き、自分のツイッターに投稿した。それが賛否を巻き起こし、感情のコントロールができない人々のあいだで炎上した、たぶん。彼自身は、「自分の投稿が人を動かす」という、ある種の「快感を味わった」と語っていた。

ロシア学の泰斗、木村汎の後継だと小生は思っているが、ちょっと軍事オタク性が勝り、小泉悠は要注意かもしれない(笑)。

ともかく、ツイッターに上がった投稿に対して、それが真実であってもフェイクであっても、一般ピープルは他人の言葉を真に受け、左右される。あたかもツイッターそのものが「事実」として認識され、人々を動かす原動力となってしまう。この時点で自己決定という責任や倫理が発生しているのだが、自己都合上に不利になれば他者の言葉だからとして、言い逃れることもできる。そんな厄介な面もあるツイッターである。

前回の記事でもふれたが、SNSのなかの無数の事実群に照らして、人は自分の意見を述べ、その内容を担保するものとして引用したりする。かくいう自分がたまにそれを行う。たとえば、第三者のブログ記事を読んだとき、そこに確認できる引用記事があれば、そのリンクをたどり信ぴょう性、データ等の精度を検証できる。

それらの記事が英文であろうがロシア語であろうが、いまでは翻訳アプリを使って内容を一瞬に把握できる。AIがよほど進歩したのだろう、グーグルはかなりグレードアップした。それゆえに、外国語による記事を読み、その中の参照記事が別の外国語のリンクが出てきても、時間をかければ全容を深掘りして調べられる。

そうして自分なりに分かったことが2,3ある。ウクライナに関することだ。だが、今回の主題から大きくはずれそうだ。別の機会にしよう。

ともかくもイーロン・マスクによって、ツイッターが投稿の仕様が変わる。情報を知る、検索するという機能は基本だが、気になる人の今、出来事の今を確認するための、現代では必須ツールといえば聞こえはいい。それは否定しないが、人々の感情のみならず思考を混乱させ、判断ミスに導く要素が多いと感じる。

それと、記事中に占める広告スペースが大きく、その効果もかなり有効かと感じる。その辺の変更はあるのだろうか?また、トランプがすんなりと復帰できるかが注目されるだろうが、個人的には小泉悠氏がふたたびツイッターを再開できるのか、好奇の目を向けている。

 

 

 

 

 

 


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2 コメント

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小泉悠氏について (メロンぱんち)
2022-04-30 01:49:21
小泉悠氏への言及が記事中にありましたのでコメントさせていただきます。

週刊文春3月17日号なのですが小泉悠氏の個性に触れられていました。ツイッターでのアカウント名を「コスメ女子」や「丸の内OL」にしているという話で、それを文春に直撃されているんですが、「酒飲んで酔っ払って書いているから覚えてな(笑」らしいんですね。フェイスブックの方にも「働きたくない。この気持ちを50ヶ国語で世界に発信したい」や「昼間から酒をのみたい」と少々、風変わりな投稿をされているとの事。実はニートをしていた時代もあったのだとか。かなり個性派のようですね。
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不逞の輩だ(笑) (小寄道)
2022-04-30 16:26:48
「コスメ女子」「丸の内OL」・・ですか。ちょっと大人げないなあ。
近ごろ見ないクールさと、乱れのないロジックさの物言いで、若手の軍事評論家としてはピカイチだと思っていたんですがね。まあ、評価は変えませんけど、ちょっと斜めに見てしまうな、今後は。
こんなハンドル名で歯に衣着せぬ辛口のコメントを読まされたなら、けっこう頭に血がのぼる人は多かったんでしょうね。それで炎上するのを喜び、快感を覚える。小泉悠はたぶん自己を律するために、もの凄い努力をしたんだと思います。
娘さんが生まれてから、彼自身は大きく変わったようですけど・・。

コメント感謝です。『ナパニュマ』には、楽しませていただきました。ここにも書かせて下さい。
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