小寄道

日々生あるもの、魂が孕むものにまなざしをそそぐ。凡愚なれど、ここに一服の憩をとどけんかなと想う。

ジェルメーヌ・リシエほか春の美術展

2024年01月25日 | 芸術(映画・写真等含)
★新収蔵&特別公開 ジェルメーヌ・リシエ《蟻》小企画展          会期2024.1.23–4.7 会場:東京国立近代美術館2Fギャラリー4     美術館サイドの紹介記事(転載) フランスの彫刻家ジェルメーヌ・リシエの彫刻《蟻》(1953年)を初公開します。リシエ(1902–59)は、第二次大戦後における女性彫刻家の先駆的存在の一人 . . . 本文を読む

ゴジラ-1.0、IMAXで観る

2023年12月16日 | 芸術(映画・写真等含)
  噂では聞いていたが、IMAX(アイマックス)というシステムを完備した映画館でみる『ゴジラー1.0』は、やはり想像を超えるド迫力だった。この齢でIMAXを経験しないのは悔いが残る。そんな✖✖な、笑わせるなという人はいるだろうが、正直にいえば、死ぬまでには一度観て体感したかったことは確かだ。当然のごとく、小津安二郎をIMAXで見るのはお門違いだ。今回の『ゴジラー1.0』はまさにIM . . . 本文を読む

木口版画家・日輪尊夫の近くへ

2023年12月07日 | 芸術(映画・写真等含)
柄澤齊(からさわひとし)著『銀河の棺』のなかの「星より近き」に、すこし読み進むと日輪尊夫(ひわたかお)について書かれた、こんな文章がある。  ヒワさんこと日輪尊夫は1941年高知市に生まれ、1992年同市で不帰の人となった。現代の木口版画はこの人に始まる。 私がヒワさんの作品と出遇ったのは1970年、銀座の画廊で開かれた個展会場でのことである。友人からすすめられて初めて入った地下の画廊で、その版 . . . 本文を読む

『棟方志功展』その後

2023年11月30日 | 芸術(映画・写真等含)
前回のブログの最後に「MOMAT館(所蔵作品展)に足を伸ばした。身体がふるえるような、嬉しい驚きに遭遇したのである」と書き残した。そのことを書く前に、さらに嬉しいトピックを発見した。木口版画家の柄澤齊さんについては、これまで版画芸術家としてだけでなく、文芸・芸術評論やミステリー小説を書く多才な人としても再三紹介している。なので詳しいことは省くが、山梨南アルプスの麓に住む柄澤さんが、最近『棟方志功展 . . . 本文を読む

生誕120年棟方志功展から

2023年11月26日 | 芸術(映画・写真等含)
過日、竹橋の東京国立近代美術館で開催している『棟方志功展 メイキング・オブ・ムナカタ』に行ってきた。前回と同様に妻のたっての要望。祝日の前日、陽気はことのほか桂く、文句なしの散歩日和に思えた。疲れることは承知の上だが、ガウディ展のときのような混雑はないとの情報もあり、「まあ、行ってみるか」と重い腰を上げたのである。 棟方志功は、子供のころから知っていた。その頃は芸術に特に親しんでいたわけでは . . . 本文を読む

柳原義達について、もう少しの話

2023年08月09日 | 芸術(映画・写真等含)
前回の続き ジェルメーヌ・リシエについてIT検索していたら、興趣をそそられることが多々あった。ちょっと驚いたのは、後期の作品『蟻』(1953)が約3億3千万円で売買されていたこと。所蔵者は東京国立近代美術館、落札者は民間の美術関係会社。超高額だが、世界基準のリシエ評価としては、さもありなんと類推できる。そのほかの美術品の入札についても、想像をめぐらすこと多し。 ▲リシエ作『蟻』(1953) . . . 本文を読む

女性彫刻家ジェルメーヌ・リシエが遺したもの

2023年08月05日 | 芸術(映画・写真等含)
ジェルメーヌ・リシエ(1902~1959)とは、フランスの女性彫刻家であり、ロダン(1840~1917)の高弟であったアントワーヌ・ブールデル(1861-1929)のそのまた愛弟子である。ブールデルは日本各地で巡回展が催されたこともあるが、ロダンほどには馴染みがないかな? いや、「弓を引くヘラクレス」をはじめ多くの彫刻やレリーフなどが各地の美術館に所蔵され、目にされた人は多いのではないか。 また . . . 本文を読む

『末盛千枝子と舟越家の人々』に行く

2023年06月25日 | 芸術(映画・写真等含)
退院した翌々日、千葉県市原の「湖畔美術館」に行った。病室でEテレの『日曜美術館』番外編(15分)をたまさか観ていたら、展覧会案内の一つとして『末盛千枝子と舟越家の人々』が紹介されていた。なんとなんと、末盛千枝子と舟越桂が姉弟だったとは、ここで初めて知ることになる。 末盛さんは絵本・童話の優れた水先案内人兼発行人である。また、ターシャ・チューダーやゴフスタインの翻訳者、『人生に大切なことはすべて絵 . . . 本文を読む

ジム・ジャームッシュの『パターソン』を観た

2022年02月08日 | 芸術(映画・写真等含)
このところアメリカ映画をよく見ている(※)。ハリウッドの大作ではなく地味な佳品、通好みの映画を探し、その予告編を鑑賞して自分なりの基準でgoodなら見る。(ただし、イーストウッド監督のものはよく観ている) USAを一つの国として見る、それはもう無理だと気づいた。この齢になってそう思うのは、お恥ずかしい限り。何事も周回遅れの轍を踏む、我が人生といえる。ということで、アメリカのローカルな貧しい州、あ . . . 本文を読む

ルッキズムと人種差別(映画『グリーンブック』に触発されて)

2021年06月18日 | 芸術(映画・写真等含)
遅ればせながら、2018年米国製作・映画『グリーンブック』を観た。アマゾンプライムのPC版なので、映像のクオリティは割り引こう。竹下節子さんはじめこの映画の秀逸さを語る人は多い。小生も然り、アメリカ社会の人種差別構造をカリカチュアライズして表現していること、辛辣さとユーモアを交えて南部白人たちの差別原理主義、「人でなし」ぶりを象徴的に描いている点など、社会批評と娯楽性をいい塩梅に調合したロード . . . 本文を読む

アカデミー賞・監督賞のクロエ・ジャオについて

2021年04月30日 | 芸術(映画・写真等含)
このブログにも書いた映画『ノマドランド』がアカデミー賞の3冠を受賞した。作品賞、監督賞、主演女優賞である。作品の評価、前評判が素晴らしく、結果は順当だったという。ただ、主演女優賞のF.マクドーマンドは3年前の『スリー・ビルボード』でも獲得しており、今回とれば3つ目になるので敬遠されるかと思っていた。それが見事に受賞し、いい意味で予想をはずした。 授賞式の席で、マクドーマンドは最後に狼の遠吠えを真 . . . 本文を読む

映画『ノマドランド』に打ちのめされた

2021年04月01日 | 芸術(映画・写真等含)
前記事ですこしふれた映画『ノマドランド』を観にTOHOシネマズ上野に行った。先週の金曜日に公開され、アカデミー賞の各部門にノミネートされているという触れ込みにも関わらず客席は2割程度の入りだった(ちなみに、本作は2021ゴールデングローブ賞の作品賞と監督賞を獲得)。 監督は中国生まれのクロエ・ジャオという女性で、大学を出てから5年間ほどノマド的生活をした経験をもつ。前作「ザ・ライダー」は、中 . . . 本文を読む

映画『離愁』の儚き記憶

2021年03月17日 | 芸術(映画・写真等含)
敬愛する竹下節子さんのブログにジャン・ギャバンとシモーヌ・シニョレが共演した映画『猫』(1971年のフランス映画)を観た感想が書かれていた。監督はピエール・グラニエ・ドゥフェールである。この名前が、かつて観た『離愁』を想いだした。作品として強烈な既視体験はあるが、恥ずかしながら映像シーンのほとんどを覚えていない。実のところ、女優のロミー・シュナイダーの凛とした表情しか思い出さない。 その前になぜ . . . 本文を読む

映画『聖なる犯罪者』を観た

2021年02月24日 | 芸術(映画・写真等含)
人を殺した青年は、聖職者になりうるのか。モーセの十戒を犯した罪人は、神の赦しを絶対に受けられないのか。 ドストエフスキーが考えたとしてもおかしくないテーマである。この小説のような事件というか出来事が、カトリック90%のキリスト教国ポーランドにおいて実際にあったという。『聖なる犯罪者』は、ヤン・コマサ監督のポーランド・フランスのドラマ映画で、海外の2019年映画祭では数々の賞を受賞した作品。 以 . . . 本文を読む

映画『メッセージ』をレンタルで観た

2021年02月04日 | 芸術(映画・写真等含)
前回に続き、映画のネタ。いろいろ書き綴っているのだが、いずれも着地には至らない。今回もどうなるか心許なく、先が見えないまま書きすすめる。 不要不急の外出はまかりならんと、おとなしく自粛している今日この頃。そんなご時勢にもかかわらず、第1波とは違い映画は興行しているようである。席の間隔をあけて座るので、ゆったりと観覧できるらしい。しかしながら冒頭に書いたごとく、用事のない高齢者は家で音無しくするこ . . . 本文を読む