和井弘希の蘇生

桂信子先生に師事。昭和45年「草苑」同人参加。現在「里」同人「迅雷句会」参加

奮迅14/小説「新 ・人間革命」

2013年05月20日 08時23分09秒 | 今日の俳句
      小説「新・人間革命」

【「聖教新聞」 2013年 (平成25年)5月20日(月)より転載】

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奮迅14(5/20)
 「中途半端にことを運べば常に失敗する」(注)――これは、山本伸一が青年時代から肝に銘じていたナポレオンの箴言である。

 伸一は、「支部制」を導入したからには、それが本格的に作動し、見事な成果をもたらすまでは、決して手を抜いてはならないと、深く心に決めていた。

 彼は、東京・杉並区の方南支部結成大会に出席したのに続いて、一月三十日には、立川文化会館で行われた第二東京支部長会に臨んだ。
これは任命式となる集いで、第二東京の全支部長・婦人部長、青年部の男女部長となる人たちが参加していた。

 彼は、支部幹部の出発に際して、リーダーの在り方などについて、語っておこうと思っていた。

 伸一は、「教学」と「信心」についての話から始めた。

 この前日、彼は立川市内の任用試験会場に、受験者の激励に訪れていた。
陰で試験を支えている役員をねぎらったあと、受験者を見守るように、そっと各教室を回った。

 ある青年は、答えに窮して、鉛筆の手を止め、顔を上げた。
すると、そこに、微笑む伸一の顔があった。

 伸一は、“大丈夫、大丈夫”と言うように静かに頷き、青年の肩をポンと叩いた。

 青年は、奮起したのか、再び勢い込んで、答案用紙に鉛筆を走らせていた。

 伸一は、試験会場の廊下では、本部幹部だという壮年と言葉を交わした。
壮年は語った。

 「私が勉強を教えた人たちも、今回、任用試験を受けています。
年末年始も返上し、一緒に勉強してきただけに、合格できるのかと思うと、じっとしていられない心境です」

 それから壮年は、意を決したような表情を浮かべ、こう報告した。

 「先生! 私は、十五日に行われた上級試験を受験したんですが、不合格になってしまいました。
不甲斐ない限りです」

 「いいではないですか! 試験は、まだこれからもあるんですから」


※ 小説『新・人間革命』の引用文献
 注 『戦争・政治・人間ーーナポレオンの言葉』柳澤恭雄訳 河出書房




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