和井弘希の蘇生

桂信子先生に師事。昭和45年「草苑」同人参加。現在「里」同人「迅雷句会」参加

薫 風(五十六)小説「新・人間革命」

2012年04月06日 05時03分30秒 | 今日の俳句
    小説「新・人間革命」

【「聖教新聞」 2012年 (平成24年)4月5日(木)より転載】
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薫風58(4/5)

 懇談会のあと、山本伸一が向かったのは、学会員が営む緒高理容店であった。彼は、店主の夫人である緒高紗智子との約束を果たそうと、訪れたのである。

 ――三日前、緒高紗智子は、北九州市に下宿して大学に通う長男と、北九州文化会館の見学に行った。その時、会館の庭で、会員の激励にあたる伸一と出会ったのである。

 彼女が、佐賀で理容店をしていることを告げると、伸一は言った。

 「北九州の次は佐賀に行く予定なんです」

 彼女は、とっさに、こう言ってしまった。

 「その時には、うちで散髪してください」

 伸一は、笑みを浮かべて答えた。

 「時間が取れたら、お伺いします」

 妻の紗智子から、その話を聞いた、夫の武士は、“俺は、学会員として大した活躍もしないでいる。そんな俺の店に、本当に山本先生は来られるのか……”と半信半疑であった。

 それだけに、伸一が姿を現し、「こんばんは! ご主人ですか」と、握手を求めて手を差し出すと、武士は、現実とは思えず、頭の中が真っ白になった。思わず両手を合わせ、合掌のポーズをとってしまった。

 すると、伸一も微笑んで合掌し、それから再び握手を求めた。

 散髪が始まった。武士が、チョキチョキと軽快なリズムで、髪を整えていった。彼は、腕には自信があった。髪の毛を触ると、その人の体調も、ほぼ察しがついた。
 伸一の髪を整えながら、武士は思った。

 “髪の毛にコシがない! 長年にわたって、心身を酷使し抜いてきた疲れが、たまっているにちがいない”

 伸一は、広宣流布という未聞の道を切り開くには、会長である自分が、捨て身になって戦わなければならないと心に決め、動きに動き、語りに語り、書きに書き、祈りに祈ってきた。会長就任から十七年、毎日、毎日が、死身弘法の敢闘であった。

 それがあってこそ、末法広宣流布という茨の道を、開き続けることができたのである。


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