徳さんは飲み屋さんで何をしてるか？

無論、どんな飲み屋さんでもそんな事が出来るわけではない。
ある飲み屋さんにおいての話である。
カウンターだけの小さなお店の片隅に、徳さんたちが昔親しんだ百科図鑑が置いてある。
お店の客が、捨てるに捨てられない気持ちでお店に寄付したものだ。

気になる一冊があった。
『あしがたずかん』。
普段慣れ親しんでいる動物たちの、手型ならぬ足型を集めたもの。

ごくごく幼年の子供たちを対象にした図鑑である。
これが凄かった！

小さい子相手なので、小難しいこと一切なし。
事実をポンと差し出す。
それだけ。

これが象の足の裏だ。
骨格的にはつま先立ちをしているようなのだが、その重い体重を支えるために脂肪組織で埋め尽くされているという。

百数十億いる人類の中で、それを見た、それに注目した人は数百人にも満たないだろう。
ひょっとしたら数人だったりして、、、。

徳さんは、この事実に愕然とした。

生き物の、適応への妙、能力。

“あしうら”だけを観察しても、これだけの事が判る。

人間以外の生き物を愛し、観察、守る理由がここにある。
人間以外は皆人間以上なのだ、、、。

安倍防にジュゴンの生態記録を投げつけてやりたい気持ちになるのも、極く自然の成り行きだ。



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