医療介護ＣＢニュース 9月4日(水)22時28分配信を転載します。
要支援、地域支援事業への移行を提案－厚労省、「新しい総合事業」創設へ
社会保障審議会介護保険部会（4日、東京都内）
厚生労働省は4日、社会保障審議会介護保険部会(座長=山崎泰彦・神奈川県立保健福祉大名誉教授)に、要支援者に対する介護予防給付を地域支援事業に移行させる案を示した。案では、介護予防事業の移行に加えて、地域支援事業の生活支援サービスの提供体制を強化した「新しい総合事業(要支援事業・新しい介護予防事業)」の創設を提言している。
厚労省は、現在の介護予防給付では見守りや配食、外出支援など、介護以外のサービス提供への対応が難しい点を課題として指摘。さらに、中長期的には介護保険料の上昇が見込まれる中、要支援者に対するサービス給付を効果的で効率的なものにする必要があるとした。
その上で、課題解決のため、介護予防給付を実施主体が市町村である地域支援事業に移行させることを提案した。移行によって介護保険法に定められた一律のサービスしか提供できなかったものが、ボランティアやNPO、民間企業などの地域資源を活用した多様なサービスを、地域の実情に合わせ柔軟に提供できるようになる。サービス提供を受ける際、要支援認定やケアプラン作成などが必要な点は、従来と変わらない。
その一方で、介護予防給付ではサービスの質を保つため、人員配置基準や運営基準が全国一律で定められていたが、地域支援事業では一律の基準はなくなり、人員配置や運営の基準も市町村の判断に委ねられる。移行を終える時期については、受け皿となる事業の整備を終えるまでの期間も考慮し、「2016年度から18年度を想定している」(同省関係者)という。
さらに厚労省は、地域支援事業における生活支援サービスを拡充するため、要支援者らのニーズと地域資源のマッチングなどを行う「生涯現役コーディネーター」(仮称)や協議会の設置なども提案。介護予防給付を移行させ、生活支援サービスを充実させた地域支援事業を「新しい総合事業」と位置付けた。
■地域支援事業化を懸念する声、相次ぐ
この提案を受け、委員からは、介護予防給付事業の裁量を自治体に委ねることに対する不安の声が相次いだ。内田千恵子委員(日本介護福祉士会副会長)は、「要支援者に対するアセスメントやケアプラン作成が十分にできるのか」と懸念を表明。勝田登志子委員(認知症の人と家族の会副代表理事)も、「人員配置基準や運営基準がないサービスで、認知症の人に対応できるのか」と述べたほか、結城康博委員(淑徳大教授)は、「全国の市町村のサービスに地域間格差が生じる懸念がある」と警鐘を鳴らした。一方、土居丈朗委員(慶大教授)は、「介護予防給付を地域支援事業として市町村に委ねることで、市町村の能力をはぐくんでいくことも必要なのではないか」と指摘した。
岡良廣委員(日本商工会議所社会保障専門委員会委員)は、「介護予防給付の地域支援事業への移行は、給付の抑制など、ある程度の財源効果を期待したものか」と厚労省にただした。これに対し厚労省は「介護保険制度の長期的な持続可能性の確保も重要な視点。こういった視点を抜きに行うものではない。財政効果も併せて考えていかなければならない」とした。
大西秀人委員(全国市長会介護保険対策特別委員会委員長、高松市長)は、「自治体によっては生活支援サービスなどの受け皿となる組織をつくるために、国からの何らかの支援が必要。また、介護予防給付と地域支援事業で確保されている約6000億円の財源は、今後も確保してほしい」と要望した。大西委員の要望に対し厚労省は、いずれの財源も確保するための努力をする方針を説明。さらに、介護給付見込額の3%以内などに定められている地域支援事業費の上限設定については、介護予防給付の移行に伴い見直す必要があるとした。
■地域支援事業として「認知症初期集中支援チーム」の設置など提言
この日、厚労省は地域支援事業の一環として、「認知症初期集中支援チーム」を編成し、認知症の初期段階の人やその家族を適切に支援することや、地域包括支援センターに「認知症地域支援推進員」を置くことも提案。また、介護人材確保のために必要な視点として、▽新たな人材の参入促進▽キャリアパスの確立▽職場環境の整備・改善▽処遇改善-を提示。処遇改善については、介護報酬改定を通じてさらに改善を図るほか、事業者による取り組みの促進や施設長・人事労務管理者らに対する研修の実施の検討などを具体策として提示した。【ただ正芳】
要支援、地域支援事業への移行を提案－厚労省、「新しい総合事業」創設へ
社会保障審議会介護保険部会（4日、東京都内）
厚生労働省は4日、社会保障審議会介護保険部会(座長=山崎泰彦・神奈川県立保健福祉大名誉教授)に、要支援者に対する介護予防給付を地域支援事業に移行させる案を示した。案では、介護予防事業の移行に加えて、地域支援事業の生活支援サービスの提供体制を強化した「新しい総合事業(要支援事業・新しい介護予防事業)」の創設を提言している。
厚労省は、現在の介護予防給付では見守りや配食、外出支援など、介護以外のサービス提供への対応が難しい点を課題として指摘。さらに、中長期的には介護保険料の上昇が見込まれる中、要支援者に対するサービス給付を効果的で効率的なものにする必要があるとした。
その上で、課題解決のため、介護予防給付を実施主体が市町村である地域支援事業に移行させることを提案した。移行によって介護保険法に定められた一律のサービスしか提供できなかったものが、ボランティアやNPO、民間企業などの地域資源を活用した多様なサービスを、地域の実情に合わせ柔軟に提供できるようになる。サービス提供を受ける際、要支援認定やケアプラン作成などが必要な点は、従来と変わらない。
その一方で、介護予防給付ではサービスの質を保つため、人員配置基準や運営基準が全国一律で定められていたが、地域支援事業では一律の基準はなくなり、人員配置や運営の基準も市町村の判断に委ねられる。移行を終える時期については、受け皿となる事業の整備を終えるまでの期間も考慮し、「2016年度から18年度を想定している」(同省関係者)という。
さらに厚労省は、地域支援事業における生活支援サービスを拡充するため、要支援者らのニーズと地域資源のマッチングなどを行う「生涯現役コーディネーター」(仮称)や協議会の設置なども提案。介護予防給付を移行させ、生活支援サービスを充実させた地域支援事業を「新しい総合事業」と位置付けた。
■地域支援事業化を懸念する声、相次ぐ
この提案を受け、委員からは、介護予防給付事業の裁量を自治体に委ねることに対する不安の声が相次いだ。内田千恵子委員(日本介護福祉士会副会長)は、「要支援者に対するアセスメントやケアプラン作成が十分にできるのか」と懸念を表明。勝田登志子委員(認知症の人と家族の会副代表理事)も、「人員配置基準や運営基準がないサービスで、認知症の人に対応できるのか」と述べたほか、結城康博委員(淑徳大教授)は、「全国の市町村のサービスに地域間格差が生じる懸念がある」と警鐘を鳴らした。一方、土居丈朗委員(慶大教授)は、「介護予防給付を地域支援事業として市町村に委ねることで、市町村の能力をはぐくんでいくことも必要なのではないか」と指摘した。
岡良廣委員(日本商工会議所社会保障専門委員会委員)は、「介護予防給付の地域支援事業への移行は、給付の抑制など、ある程度の財源効果を期待したものか」と厚労省にただした。これに対し厚労省は「介護保険制度の長期的な持続可能性の確保も重要な視点。こういった視点を抜きに行うものではない。財政効果も併せて考えていかなければならない」とした。
大西秀人委員(全国市長会介護保険対策特別委員会委員長、高松市長)は、「自治体によっては生活支援サービスなどの受け皿となる組織をつくるために、国からの何らかの支援が必要。また、介護予防給付と地域支援事業で確保されている約6000億円の財源は、今後も確保してほしい」と要望した。大西委員の要望に対し厚労省は、いずれの財源も確保するための努力をする方針を説明。さらに、介護給付見込額の3%以内などに定められている地域支援事業費の上限設定については、介護予防給付の移行に伴い見直す必要があるとした。
■地域支援事業として「認知症初期集中支援チーム」の設置など提言
この日、厚労省は地域支援事業の一環として、「認知症初期集中支援チーム」を編成し、認知症の初期段階の人やその家族を適切に支援することや、地域包括支援センターに「認知症地域支援推進員」を置くことも提案。また、介護人材確保のために必要な視点として、▽新たな人材の参入促進▽キャリアパスの確立▽職場環境の整備・改善▽処遇改善-を提示。処遇改善については、介護報酬改定を通じてさらに改善を図るほか、事業者による取り組みの促進や施設長・人事労務管理者らに対する研修の実施の検討などを具体策として提示した。【ただ正芳】
