
岡山市にあるシネマクレール丸の内では、アイルランドの映画が2本同時上映されています。
それも飛び切りの2作です。
映画を楽しみながらアイルランドのことを学べるチャンスでもあります。
アイルランドの歴史に詳しい日本人はそういないと思います。もちろん、学校では教えてくれません。
しかし、少し学んでおけば、映画の深みや広がりは違います。私はWIKIで学びました。
簡単にいえば、英国のそばにあったことで大変な思いをしてきたということです。
英国に占領され植民地になったこともありました。18世紀には植民地経済(英国に搾取され食べるものがなくなった)で餓死した人100万人、海外移民が100万人で200万人の国民が失われました。急激な人口減少から今も回復していないそうです。
アイルランド人は英国嫌い、米国好きです(英国に反抗した)。
しかし今でも英国に依存していると言わざるをえません。忸怩たる思いでしょう。
さて、『シング・ストリート』です。
時代設定は1980年半ば。この時もアイルランドは不況です。
主人公はコナーという名の男子高校生。
両親はケンカばかりで離婚寸前です。
父親が失業し、兄は大学中退、コナーは金のかからない公立の学校に転校させられます。
この学校がシング・ストリートという名です。荒れています。
コナーは生徒や校長に目の敵にされます。
アイルランドの大人は相当保守的です。宗教はローマカソリックを信仰する人が多く、子たちたちにとっては住みずらい国といっていいでしょう。
そんなコナーの前に、一人の女性(ラフィーナ)が現れます。
自称モデルです。
コナーより1歳年上ですからハイティーンです。
厚化粧でそんなに美人とは思えないのですがね。でも後半は素敵な女性に変身していきます。
コナーは、ラフィーナと親しくなるためにバンドをやっていると言います。
ここからバンドを創ることになります。校内で募集をかけ個性的で磨けば光るかもしれない
バンドができます。
コナーも見よう見まねで作詞作曲を始めます。
助言者は兄のブレンダンです。音楽に詳しく、兄弟で「ディラン・ディラン」のMVを見ています。
「ディラン・ディラン」のMVにはセクシーな女性が登場します。
自分たちのMVにはラフィーナに登場させたいという魂胆です。
とにかく、まずはコピーから始まります。
コピーは服装やメイクにも表れます。懸命さはわかるのですが相当可笑しい。
ラフィーナの夢は、ロンドンに行きモデルになることです。
可能とはとても思えないのですが、彼女は怪しげな男とロンドンに旅立ちます。
しかし夢破れ一人帰国します。
一方、トニーもロンドンに行きたいという思いを強く持っています。
アイルランドの若者にとって、未来は国内にはないと思っているのです。
貧しい彼らにとって、ロンドンだって簡単には行くことができません。
ヨーロッパ大陸に渡りフランスやスペインに行くのは夢のまた夢です。
日本の若者とは違いました。
そういえば旅先でアイルランドの人々に出会うということはほとんどありませんでした。
私たちがアイルランドを知るのは音楽からでしょう。
ケルティック・ウーマン、エンヤ。
彼らは世界に誇れる音楽文化を持っています。
ケルトの音楽とロックやパンクの融合が1980年代の試みられていました。
トニーが育った時代です。
LPレコードやカセットテープがまだ現役でした。
この作品はジョン・カーニー監督の生い立ちに近いそうです。
『ブルックリン』は1950年代、アメリカへの旅立ち。
『シング・ストリート』は1980年代、英国への旅立ち。
アイリッシュの思いは時代を超えて受け継がれていきます。
『シング・ストリート』、お薦めです。
できれば2作ともご覧ください。
アイルランドに行きたくなりました。