金色銀色茜色

生煮えの文章でゴメンナサイ。

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昨日今日明日あさって。(どうしてこうなった)22

2024-04-21 12:31:56 | Weblog
 ベティ王妃はケーキを味わいながら考えた。
バート斎藤侯爵は元々が美濃の寄親伯爵。
歴史ある一族の生まれ。
それも、嫡男の不祥事で美濃での影響力は一掃された。
ところが伝手が残っていると言う。
おそらく一掃されたのは、斎藤伯爵家由来の貴族だけで、
平民クラスが残っているのだろう。
現在の美濃代官とも接触があるとも言う。
これまでの経緯から、親密度までは期待していないが、
それでも無いよりは良い。
「その代官はカールかしら。
ポール細川子爵の弟の」
 珈琲を飲んでいたバートが上目づかいで頷いた。
「はい、そうです。
弟のカール細川子爵殿です。
兄弟揃って爵位が同じで面倒臭いですな。
そろそろポール殿の爵位を上げてはどうですかな」
 バートの言葉に棘はない。
「そうね、・・・。
今回の騒ぎで深手を負わせてしまったわ。
お詫びも上乗せね。
ところで、貴方はカールとは親しいの」

 バートはカップはテーブルに下ろした。
「ええ、伝手の者達が代官所やギルトに転職しておりまして、・・・、
お陰で助かってます」
 伝手とは、かつて彼に仕えていた平民の文武官に違いない。
助かってますとは言うものの、忸怩たるものがあるのか、言葉に力がない。
「カールとは親しいの」
「まあまあですな」
 ベティは突っ込んだ。
「寄親伯爵とは」
 ダンタルニャン佐藤伯爵だ。
バートは頭を傾けながら応じた。
「そうですな、親しいのかと問われると、・・・。
顔を合わせる機会があれば、挨拶する程度です。
何しろ相手は子供ですからな」
 確かにそうだ。
相手は子供。
共通の話題などないだろう。
この言葉にも棘はない。
「その佐藤伯爵だけど、レオン織田伯爵とは親しいそうね」
 彼の娘婿、レオン織田伯爵。
バートは胡乱な目色。
「ああ、あれですか。
三河の一件ですな。
忙しそうなので詳しくは聞けておりませんが、支援を受けたそうで、
それに大いに感謝している、そう申しておりました」

 これ幸いだ。
彼に頼んでおこう。
「貴方に内緒でお願いがあるの」
「何でしょう」
「なるべくで良いから、佐藤伯爵との接触を増やして欲しいの。
相手が子供だから大変なのは分かるわ。
それでも、彼の為人を、第三者の目で調べて欲しいのよ」
 バートは苦笑い。
「ええ、努力しましょう。
・・・。
本気で王配にとお考えなのですか」
 王宮に出仕している者達は、佐藤伯爵を将来の王配、そう噂していた。
それはベティも彼女の周辺も聞いていた。 
ので、ベティは笑顔で応じた。
「まだそこまではね。
・・・。
今は好ましい子供だけど、先は分からないわ。
人はちょっとした事で変わるだしょう」
 バートの嫡男もそうだった。
子供時代は利発だった。
それで油断していた。

 黙ってしまったバートを無視してベティは続けた。
「取り敢えず、近い将来、織田伯爵と佐藤伯爵を私の両輪とするつもりよ。
走らせて走らせて、イヴの時代の礎を築いてもらうわ」
 酷使するとまでは言わない。
「承知しました。
佐藤伯爵との接触を増やします」
「ええ、お願い。
その代わりと言っては何だけど、貴方の孫世代には配慮するわ」
 言外に侯爵家の、現在の後継者候補は頼りなし、
つまり、一世代飛ばして孫世代を考えなさい、そう匂わせた。
これにバートも困った表情。
他人に言われると腹が立つのだろう。
されど言葉の主は王妃。
溜息を漏らすので精一杯、渋々頷いた。
「何卒良しなに」

 遠慮はしない。
ベティは珈琲とケーキをお替りした。
モンブランではなく苺が運ばれて来た。
苺ショートを一口、これも美味い。
珈琲で口を潤した。
「苺も良いわね。
これも瓶詰かしら」
「ええ、卸す程の量はありませんが」
「モンブランにしても苺にしても、
卸せるようになったら真っ先に後宮に入れて欲しいわね」
「承りました。
・・・。
それで本日の御用向きは」
 ベティは笑いで誤魔化した。
「ふっふっふ、そうだったわね」

 ベティは本題を切り出した。
「今月の評定衆の月番は侯爵殿ですわよね」
「はい、不肖某が」
「貴方に頼みがあるの」
 彼に否はない。
「なんなりと」
「そろそろ反乱を終息させる時期が来たと思わない」
 王弟を旗頭にした島津家の乱、王兄を旗頭にした尼子家の乱、
そして関東代官の乱。
「思います、そろそろかと。
そういえばですな、噂ではあの子供伯爵殿が三好侯爵と毛利伯爵に、
似たような意見を具申されたとか聞き及んでおりますが」
「そうなのよ、あの子が申すように時期が来たのでしょうね。
それで貴方には評定衆をその方向で動かして欲しいの」
 パートは苺を口にした。
味見するようにゆっくり味わう。
「三好侯爵と毛利侯爵には」
「明日、二人と合う予定を組んでるわ。
あの二人に同意させる、心配しないで」
「そうですか」
「最新の島津方面の情報よ。
実はね、島津が外国の傭兵団が雇っているそうなの」
「まさか」
「事実よ。実際に戦場で傭兵団が目撃されてるの。
これは砂漠の向こうからの進軍ルートが確立された証よ。
このままでは拙いわ」
「確かに」
「急いで乱を終息させる必要があると理解してくれた」
「ええ、理解しましとも。
早速中間派を集めて意志の統一を図ります」

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