金色銀色茜色

生煮えの文章でゴメンナサイ。

(注)文字サイズ変更が左下にあります。

昨日今日明日あさって。(どうしてこうなった)11

2024-02-04 09:05:59 | Weblog
 俺は鑑定と探知を重ね掛けした。
周辺を調べた。
見つけた、見つけた。
こっそりと庭園に侵入した者達がいた。
ボルビン佐々木侯爵一行は陽動で、庭師集団が本命らしい。
庭園の木陰や岩陰を利用し、こちらに迫っていた。
三十五名。
戦闘に適したスキル持ちばかり。
 となると・・・。
前方のボルビン佐々木侯爵一行に治癒魔法使いが三名いたはず。
察するに、イヴ様が怪我する事態を想定してのこと。
用意周到だが、ふざけるなと叫びたい。
幼児に怪我させる、これのどこに、正道があるんだ。

「下がるよ」
 俺はエリスを促し、後方へ下がった。
「どうしたの」
「話しは後で」
 ボルビンと庭師は、そんな俺達を気の毒そうに見送った。
もう手遅れだ、とでも言いたそう目色。
何とも余裕綽々ではないか。

 円陣に戻り、俺は真っ先に光魔法を起動した。
周囲を半円形のシールドで覆った。
それに誰も気付かない。
透明のシールドなので、念の為、エリスを含めた全員に説明した。
「シールドで周囲を覆った。
全ての攻撃を弾き返すから安心して」
 幾人かがシールドに触れて確認しようとした。
それより先に襲撃された。
十二本の矢と攻撃魔法五つが飛来。
狙いが定められていた。
それらをシールドが弾き返して無効化した。
遅れて、槍を構えた十八名が突進して来た。
それも簡単に無効化。
弾き返される攻撃の音のみが虚しく響いた。

 幸い、イヴ様の周りを侍女やメイドが囲んでいて視線を遮っていた。
グッジョブ。
幼児に見せていい物ではない。
エリスが俺の方を見た。
「無詠唱でこれは凄いですわね」
 俺は忙しいので答えない。
シールドを維持しながら、足裏から地面に干渉した。
おお良い感じ。
シールドの外に、攻撃魔法の放出口を確保。
時空魔法を起動した。
庭師三十五名をロックオン。
イメージは、時空の彼方へ飛んで行け。
それもこれもイヴ様に血を見せない為。
数は多いが、そう難しい事ではない。
さて、GoGoGo。

 当人の俺も驚いた。
その威力に。
行き成り全員が消えたのだ。
そう、俺達を包囲攻撃していた三十五名が突然、掻き消えたのだ。
本当に掻き消えた、としか表現しようがない。
彼等に祝福を、アーメン、ナンマイダー。
 脳内モニターに久々の文字列。
「ddフライを獲得しました」
 意味が分からない。
けれど、時空の彼方へ飛ばした攻撃魔法の名称であるのは確か。
 人が消えただけではない。
辺りを静寂が支配した。
見た者達全員が呆けていた。

 ボルビンと庭師は危機回避能力が高いらしい。
呆けから早々に立ち直り、一行の方へ駆け戻って行く。
俺は二人だけでなく、一行も含めた全員をロックオンした。
おおっ、近衛軍や国軍の高官もいた。
 ボルビンが首謀者で、他の連中は共犯者、その認識で間違いなし。
さて・・・、どうする。
彼等を生かして捕えれば、必ずや同じ派閥の連中に擁護され、
取り調べの後、早期釈放されるだろう。
それでは問題解決にならない。
ただの先延ばし。
彼等が機を見て再起を謀るのは確か。
そうか・・・、よし。
だったら俺がここで摘み取る。

 時空魔法を再起動した。
ボルビン一行をロックオン。
血を流さない環境に優しい攻撃魔法。
ddフライ、やります。
 あっ、人は別にして、大事な物は残して置こう。
敵方に奪われたイヴ様のイライザとチョンボのフィギア。
自分で言うのも何だが、攻撃の巻き添えにしたくない。
塵と同じように分別して回収しよう。
イメージは、人は塵に出して、フィギアは回収。
ddフライ、GoGoGo。

 ボルビンの一行が掻き消えた。
静寂が続行された。
暫くして、立ち直ったエリスに寝起きのような声で尋ねられた。
「消えたわよね」
「ええ、そのようですね」
「何かしたの」
「えっ、何かって、誰が」
 俺は恍けた。
エリスは頭を振った。
「そう、そうよね」
 俺は彼等が消えた跡地を見た。
ポツンと残されたフィギア。
それが成功を物語っていた。

 脳内モニターに文字列。
「時空スキルのレベルが上がりました」
 俺は、時空魔法☆☆☆☆、を確認すると、光魔法のシールドを解いた。
皆に声を掛けた。
「王宮に向かうよ。
その前にここを囲んでる近衛の掌握が先だけどね」 
 途中でフィギアを拾い上げた。
イヴ様にそれを見られた。
ポテポテと駆けて来られた。
「わたしの」
 拾い上げてイヴ様に手渡した。
「どうぞ」
「ありがとう、ニャ~ン」
 イヴ様がフィギアを両手で抱え持ち、俺の隣に並ばれた。
この図は最強だ。
フィギアが盾、俺が矛。
どこにも、ほころびはなし。

 俺達は庭園の出入り口で立ち止まった。
見遣ると、包囲していた近衛部隊が動揺していた。
肝心のボルビン一行が消えたので、俺達への対処に困っている様子。
俺は誰にともなく声を掛けた。
「イヴ様がいらっしゃる。
指揮官は直ちに前に来るように」
 顔色の悪いのが俺達の前に駆けて来た。
エリスと同じ中尉の階級章。
その者が、あたふたしながら説明に務めた。
「かっ、管領のボルビン様より、この度わが小隊が招集され、
今回の、このような任務を命ぜられました。
イヴ様を保護するように、そう命ぜられましたので、
このような仕儀と相成っております」
 自己保身に走っていた。
けれど軍は階級社会。
言い分としては正しい。
俺は中尉に尋ねた。
「その管領殿がいなくなった。
さて、どうする」
 中尉は困り顔。
するとエリスが俺に並んで言う。
「管領はイヴ様の血を流しても確保するつもりだったのよ。
貴方もそのつもりだったの」
「いいえ、血を流すとは聞いておりません」
「だったら、イヴ様に従いなさい」
「はい、従います。
何なりと御下命を」

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