俺は鑑定と探知を重ね掛けした。
周辺を調べた。
見つけた、見つけた。
こっそりと庭園に侵入した者達がいた。
ボルビン佐々木侯爵一行は陽動で、庭師集団が本命らしい。
庭園の木陰や岩陰を利用し、こちらに迫っていた。
三十五名。
戦闘に適したスキル持ちばかり。
となると・・・。
前方のボルビン佐々木侯爵一行に治癒魔法使いが三名いたはず。
察するに、イヴ様が怪我する事態を想定してのこと。
用意周到だが、ふざけるなと叫びたい。
幼児に怪我させる、これのどこに、正道があるんだ。
「下がるよ」
俺はエリスを促し、後方へ下がった。
「どうしたの」
「話しは後で」
ボルビンと庭師は、そんな俺達を気の毒そうに見送った。
もう手遅れだ、とでも言いたそう目色。
何とも余裕綽々ではないか。
円陣に戻り、俺は真っ先に光魔法を起動した。
周囲を半円形のシールドで覆った。
それに誰も気付かない。
透明のシールドなので、念の為、エリスを含めた全員に説明した。
「シールドで周囲を覆った。
全ての攻撃を弾き返すから安心して」
幾人かがシールドに触れて確認しようとした。
それより先に襲撃された。
十二本の矢と攻撃魔法五つが飛来。
狙いが定められていた。
それらをシールドが弾き返して無効化した。
遅れて、槍を構えた十八名が突進して来た。
それも簡単に無効化。
弾き返される攻撃の音のみが虚しく響いた。
幸い、イヴ様の周りを侍女やメイドが囲んでいて視線を遮っていた。
グッジョブ。
幼児に見せていい物ではない。
エリスが俺の方を見た。
「無詠唱でこれは凄いですわね」
俺は忙しいので答えない。
シールドを維持しながら、足裏から地面に干渉した。
おお良い感じ。
シールドの外に、攻撃魔法の放出口を確保。
時空魔法を起動した。
庭師三十五名をロックオン。
イメージは、時空の彼方へ飛んで行け。
それもこれもイヴ様に血を見せない為。
数は多いが、そう難しい事ではない。
さて、GoGoGo。
当人の俺も驚いた。
その威力に。
行き成り全員が消えたのだ。
そう、俺達を包囲攻撃していた三十五名が突然、掻き消えたのだ。
本当に掻き消えた、としか表現しようがない。
彼等に祝福を、アーメン、ナンマイダー。
脳内モニターに久々の文字列。
「ddフライを獲得しました」
意味が分からない。
けれど、時空の彼方へ飛ばした攻撃魔法の名称であるのは確か。
人が消えただけではない。
辺りを静寂が支配した。
見た者達全員が呆けていた。
ボルビンと庭師は危機回避能力が高いらしい。
呆けから早々に立ち直り、一行の方へ駆け戻って行く。
俺は二人だけでなく、一行も含めた全員をロックオンした。
おおっ、近衛軍や国軍の高官もいた。
ボルビンが首謀者で、他の連中は共犯者、その認識で間違いなし。
さて・・・、どうする。
彼等を生かして捕えれば、必ずや同じ派閥の連中に擁護され、
取り調べの後、早期釈放されるだろう。
それでは問題解決にならない。
ただの先延ばし。
彼等が機を見て再起を謀るのは確か。
そうか・・・、よし。
だったら俺がここで摘み取る。
時空魔法を再起動した。
ボルビン一行をロックオン。
血を流さない環境に優しい攻撃魔法。
ddフライ、やります。
あっ、人は別にして、大事な物は残して置こう。
敵方に奪われたイヴ様のイライザとチョンボのフィギア。
自分で言うのも何だが、攻撃の巻き添えにしたくない。
塵と同じように分別して回収しよう。
イメージは、人は塵に出して、フィギアは回収。
ddフライ、GoGoGo。
ボルビンの一行が掻き消えた。
静寂が続行された。
暫くして、立ち直ったエリスに寝起きのような声で尋ねられた。
「消えたわよね」
「ええ、そのようですね」
「何かしたの」
「えっ、何かって、誰が」
俺は恍けた。
エリスは頭を振った。
「そう、そうよね」
俺は彼等が消えた跡地を見た。
ポツンと残されたフィギア。
それが成功を物語っていた。
脳内モニターに文字列。
「時空スキルのレベルが上がりました」
俺は、時空魔法☆☆☆☆、を確認すると、光魔法のシールドを解いた。
皆に声を掛けた。
「王宮に向かうよ。
その前にここを囲んでる近衛の掌握が先だけどね」
途中でフィギアを拾い上げた。
イヴ様にそれを見られた。
ポテポテと駆けて来られた。
「わたしの」
拾い上げてイヴ様に手渡した。
「どうぞ」
「ありがとう、ニャ~ン」
イヴ様がフィギアを両手で抱え持ち、俺の隣に並ばれた。
この図は最強だ。
フィギアが盾、俺が矛。
どこにも、ほころびはなし。
俺達は庭園の出入り口で立ち止まった。
見遣ると、包囲していた近衛部隊が動揺していた。
肝心のボルビン一行が消えたので、俺達への対処に困っている様子。
俺は誰にともなく声を掛けた。
「イヴ様がいらっしゃる。
指揮官は直ちに前に来るように」
顔色の悪いのが俺達の前に駆けて来た。
エリスと同じ中尉の階級章。
その者が、あたふたしながら説明に務めた。
「かっ、管領のボルビン様より、この度わが小隊が招集され、
今回の、このような任務を命ぜられました。
イヴ様を保護するように、そう命ぜられましたので、
このような仕儀と相成っております」
自己保身に走っていた。
けれど軍は階級社会。
言い分としては正しい。
俺は中尉に尋ねた。
「その管領殿がいなくなった。
さて、どうする」
中尉は困り顔。
するとエリスが俺に並んで言う。
「管領はイヴ様の血を流しても確保するつもりだったのよ。
貴方もそのつもりだったの」
「いいえ、血を流すとは聞いておりません」
「だったら、イヴ様に従いなさい」
「はい、従います。
何なりと御下命を」
周辺を調べた。
見つけた、見つけた。
こっそりと庭園に侵入した者達がいた。
ボルビン佐々木侯爵一行は陽動で、庭師集団が本命らしい。
庭園の木陰や岩陰を利用し、こちらに迫っていた。
三十五名。
戦闘に適したスキル持ちばかり。
となると・・・。
前方のボルビン佐々木侯爵一行に治癒魔法使いが三名いたはず。
察するに、イヴ様が怪我する事態を想定してのこと。
用意周到だが、ふざけるなと叫びたい。
幼児に怪我させる、これのどこに、正道があるんだ。
「下がるよ」
俺はエリスを促し、後方へ下がった。
「どうしたの」
「話しは後で」
ボルビンと庭師は、そんな俺達を気の毒そうに見送った。
もう手遅れだ、とでも言いたそう目色。
何とも余裕綽々ではないか。
円陣に戻り、俺は真っ先に光魔法を起動した。
周囲を半円形のシールドで覆った。
それに誰も気付かない。
透明のシールドなので、念の為、エリスを含めた全員に説明した。
「シールドで周囲を覆った。
全ての攻撃を弾き返すから安心して」
幾人かがシールドに触れて確認しようとした。
それより先に襲撃された。
十二本の矢と攻撃魔法五つが飛来。
狙いが定められていた。
それらをシールドが弾き返して無効化した。
遅れて、槍を構えた十八名が突進して来た。
それも簡単に無効化。
弾き返される攻撃の音のみが虚しく響いた。
幸い、イヴ様の周りを侍女やメイドが囲んでいて視線を遮っていた。
グッジョブ。
幼児に見せていい物ではない。
エリスが俺の方を見た。
「無詠唱でこれは凄いですわね」
俺は忙しいので答えない。
シールドを維持しながら、足裏から地面に干渉した。
おお良い感じ。
シールドの外に、攻撃魔法の放出口を確保。
時空魔法を起動した。
庭師三十五名をロックオン。
イメージは、時空の彼方へ飛んで行け。
それもこれもイヴ様に血を見せない為。
数は多いが、そう難しい事ではない。
さて、GoGoGo。
当人の俺も驚いた。
その威力に。
行き成り全員が消えたのだ。
そう、俺達を包囲攻撃していた三十五名が突然、掻き消えたのだ。
本当に掻き消えた、としか表現しようがない。
彼等に祝福を、アーメン、ナンマイダー。
脳内モニターに久々の文字列。
「ddフライを獲得しました」
意味が分からない。
けれど、時空の彼方へ飛ばした攻撃魔法の名称であるのは確か。
人が消えただけではない。
辺りを静寂が支配した。
見た者達全員が呆けていた。
ボルビンと庭師は危機回避能力が高いらしい。
呆けから早々に立ち直り、一行の方へ駆け戻って行く。
俺は二人だけでなく、一行も含めた全員をロックオンした。
おおっ、近衛軍や国軍の高官もいた。
ボルビンが首謀者で、他の連中は共犯者、その認識で間違いなし。
さて・・・、どうする。
彼等を生かして捕えれば、必ずや同じ派閥の連中に擁護され、
取り調べの後、早期釈放されるだろう。
それでは問題解決にならない。
ただの先延ばし。
彼等が機を見て再起を謀るのは確か。
そうか・・・、よし。
だったら俺がここで摘み取る。
時空魔法を再起動した。
ボルビン一行をロックオン。
血を流さない環境に優しい攻撃魔法。
ddフライ、やります。
あっ、人は別にして、大事な物は残して置こう。
敵方に奪われたイヴ様のイライザとチョンボのフィギア。
自分で言うのも何だが、攻撃の巻き添えにしたくない。
塵と同じように分別して回収しよう。
イメージは、人は塵に出して、フィギアは回収。
ddフライ、GoGoGo。
ボルビンの一行が掻き消えた。
静寂が続行された。
暫くして、立ち直ったエリスに寝起きのような声で尋ねられた。
「消えたわよね」
「ええ、そのようですね」
「何かしたの」
「えっ、何かって、誰が」
俺は恍けた。
エリスは頭を振った。
「そう、そうよね」
俺は彼等が消えた跡地を見た。
ポツンと残されたフィギア。
それが成功を物語っていた。
脳内モニターに文字列。
「時空スキルのレベルが上がりました」
俺は、時空魔法☆☆☆☆、を確認すると、光魔法のシールドを解いた。
皆に声を掛けた。
「王宮に向かうよ。
その前にここを囲んでる近衛の掌握が先だけどね」
途中でフィギアを拾い上げた。
イヴ様にそれを見られた。
ポテポテと駆けて来られた。
「わたしの」
拾い上げてイヴ様に手渡した。
「どうぞ」
「ありがとう、ニャ~ン」
イヴ様がフィギアを両手で抱え持ち、俺の隣に並ばれた。
この図は最強だ。
フィギアが盾、俺が矛。
どこにも、ほころびはなし。
俺達は庭園の出入り口で立ち止まった。
見遣ると、包囲していた近衛部隊が動揺していた。
肝心のボルビン一行が消えたので、俺達への対処に困っている様子。
俺は誰にともなく声を掛けた。
「イヴ様がいらっしゃる。
指揮官は直ちに前に来るように」
顔色の悪いのが俺達の前に駆けて来た。
エリスと同じ中尉の階級章。
その者が、あたふたしながら説明に務めた。
「かっ、管領のボルビン様より、この度わが小隊が招集され、
今回の、このような任務を命ぜられました。
イヴ様を保護するように、そう命ぜられましたので、
このような仕儀と相成っております」
自己保身に走っていた。
けれど軍は階級社会。
言い分としては正しい。
俺は中尉に尋ねた。
「その管領殿がいなくなった。
さて、どうする」
中尉は困り顔。
するとエリスが俺に並んで言う。
「管領はイヴ様の血を流しても確保するつもりだったのよ。
貴方もそのつもりだったの」
「いいえ、血を流すとは聞いておりません」
「だったら、イヴ様に従いなさい」
「はい、従います。
何なりと御下命を」