金色銀色茜色

生煮えの文章でゴメンナサイ。

(注)文字サイズ変更が左下にあります。

金色の涙(鬼)56

2008-09-14 09:45:04 | Weblog
 雷鬼の右手が動く。
首を守る為に、顔の前に上げようとする。
予期せぬ攻撃に、それが手一杯の防御なのだろう。
 その右手を鈴風が両の前足で蹴り払う。
すかさず阿国が雷鬼の首を小太刀で一閃する。
骨を断ち切る手応え。
 首が音も無く落ちた。
それでも胴体は二本足でしっかりと立っている。
 間を置いて、血飛沫が胴体から噴き出した。

 首の切り口から抜け出したバロンは、噴き出す血に喜色満面。
慌ててそれを捕捉するために飛び上がる。
 拳大の光体となって力は弱まったが、相手が血であれば何の問題も無い。
薄い桃色の半透明の光体を精一杯拡げて、光の輪の内側に大量の血を包み込む。
 そして光の輪で絞り込むようにして吸収を開始。
選別して無駄な物は黒い血として、輪の外へ排出する。
 しだいに光の輪が色を変える。
赤味を帯びてくる。

 仁王立ちの胴体が膝から崩れ落ちた。
首の上に圧し掛かるようにして、うつ伏せに倒れる。
急激に生気が失われていく。
首を斬り離された瞬間に、鬼としての生を終えたのだ。
しかし執念は残っていた。
 雷鬼の亡骸から、青白い光体が抜け出した。
細長い紐のような状態で上昇を始める。
全長およそ10メートル。
雷鬼の亡霊なのだろう。
周囲に火花を撒き散らしながら、上空のバロンを目指す。
 少し遅れて銀色の光体も抜け出す。
これも紐状で、全長5メートル余。
どうやら銀鬼か。

 血の選別・吸収で忙しいバロンは、無警戒であった。
そこを青白い光体が、襲うようにして巻き付いた。
さらに銀色の光体。
 気付いたときには遅かった。
二体の光体に雁字搦めにされる。
いずれもがバロンの体内に侵入しようと試みる。
辛うじて防ぐが、脱出する手立ても無い。

 「金色の涙」は三者の絡み合いから発せられる気を分析した。
どうやら三者共に弱っていて、勝負がつきそうにない気配だ。
 それよりも気になるのは、この辺りの空気の重さだ。
みょうに圧迫感らしきものが漂い始めている。
 若菜がヤマトを覗き込む。
「どうなってるの」
「感じるのかい」
「なんか嫌な気がするの」
「そう、その通りだよ」
「・・・」
「どうやらこの争いが、怨霊達を呼び寄せたみたいだね」
「怨霊・・・」
「この世に怨みを持ち、成仏出来ない者達のことさ」
「いるの」
「いるさ。今のところは小物達が遠巻きにしてるだけだけどね」
「小物・・・、大物は」
「大物は地に封じられているよ」
 いつの間にか傍に萌来が来ていた。
「ヤマト、まるで別人だな」
 繁々と観察する。
「魔物だから、色んな顔を持つのさ」
「いいだろう。ところで、地に封じられた怨霊だが、目覚める兆しがある」
 ヤマトは若菜の胸から飛び出すと、地に伏した。
そして地中の気の流れを読む。
確かに地中を、異様な気が走っている。
闇黒の塊のようで、重苦しい。
「心当たりはあるのかい」
「京洛には無数の怨霊が封じられている。近いところでは『頼芳公』」

 封じられていない小物の怨霊達も、集団となって力を得たと勘違いしたのか、
露骨に姿を現し始めた。
 対して方術師達が怨霊退治を開始する。
これに狐達が加勢。各所で術でもって怨霊に当たる。
 狸達は無関係にポンポコリン。




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朝の食事の林檎と梨を、包丁で皮むきしたら、手を二ヶ所も切ってしまった。


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