雷鬼の右手が動く。
首を守る為に、顔の前に上げようとする。
予期せぬ攻撃に、それが手一杯の防御なのだろう。
その右手を鈴風が両の前足で蹴り払う。
すかさず阿国が雷鬼の首を小太刀で一閃する。
骨を断ち切る手応え。
首が音も無く落ちた。
それでも胴体は二本足でしっかりと立っている。
間を置いて、血飛沫が胴体から噴き出した。
首の切り口から抜け出したバロンは、噴き出す血に喜色満面。
慌ててそれを捕捉するために飛び上がる。
拳大の光体となって力は弱まったが、相手が血であれば何の問題も無い。
薄い桃色の半透明の光体を精一杯拡げて、光の輪の内側に大量の血を包み込む。
そして光の輪で絞り込むようにして吸収を開始。
選別して無駄な物は黒い血として、輪の外へ排出する。
しだいに光の輪が色を変える。
赤味を帯びてくる。
仁王立ちの胴体が膝から崩れ落ちた。
首の上に圧し掛かるようにして、うつ伏せに倒れる。
急激に生気が失われていく。
首を斬り離された瞬間に、鬼としての生を終えたのだ。
しかし執念は残っていた。
雷鬼の亡骸から、青白い光体が抜け出した。
細長い紐のような状態で上昇を始める。
全長およそ10メートル。
雷鬼の亡霊なのだろう。
周囲に火花を撒き散らしながら、上空のバロンを目指す。
少し遅れて銀色の光体も抜け出す。
これも紐状で、全長5メートル余。
どうやら銀鬼か。
血の選別・吸収で忙しいバロンは、無警戒であった。
そこを青白い光体が、襲うようにして巻き付いた。
さらに銀色の光体。
気付いたときには遅かった。
二体の光体に雁字搦めにされる。
いずれもがバロンの体内に侵入しようと試みる。
辛うじて防ぐが、脱出する手立ても無い。
「金色の涙」は三者の絡み合いから発せられる気を分析した。
どうやら三者共に弱っていて、勝負がつきそうにない気配だ。
それよりも気になるのは、この辺りの空気の重さだ。
みょうに圧迫感らしきものが漂い始めている。
若菜がヤマトを覗き込む。
「どうなってるの」
「感じるのかい」
「なんか嫌な気がするの」
「そう、その通りだよ」
「・・・」
「どうやらこの争いが、怨霊達を呼び寄せたみたいだね」
「怨霊・・・」
「この世に怨みを持ち、成仏出来ない者達のことさ」
「いるの」
「いるさ。今のところは小物達が遠巻きにしてるだけだけどね」
「小物・・・、大物は」
「大物は地に封じられているよ」
いつの間にか傍に萌来が来ていた。
「ヤマト、まるで別人だな」
繁々と観察する。
「魔物だから、色んな顔を持つのさ」
「いいだろう。ところで、地に封じられた怨霊だが、目覚める兆しがある」
ヤマトは若菜の胸から飛び出すと、地に伏した。
そして地中の気の流れを読む。
確かに地中を、異様な気が走っている。
闇黒の塊のようで、重苦しい。
「心当たりはあるのかい」
「京洛には無数の怨霊が封じられている。近いところでは『頼芳公』」
封じられていない小物の怨霊達も、集団となって力を得たと勘違いしたのか、
露骨に姿を現し始めた。
対して方術師達が怨霊退治を開始する。
これに狐達が加勢。各所で術でもって怨霊に当たる。
狸達は無関係にポンポコリン。
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朝の食事の林檎と梨を、包丁で皮むきしたら、手を二ヶ所も切ってしまった。
首を守る為に、顔の前に上げようとする。
予期せぬ攻撃に、それが手一杯の防御なのだろう。
その右手を鈴風が両の前足で蹴り払う。
すかさず阿国が雷鬼の首を小太刀で一閃する。
骨を断ち切る手応え。
首が音も無く落ちた。
それでも胴体は二本足でしっかりと立っている。
間を置いて、血飛沫が胴体から噴き出した。
首の切り口から抜け出したバロンは、噴き出す血に喜色満面。
慌ててそれを捕捉するために飛び上がる。
拳大の光体となって力は弱まったが、相手が血であれば何の問題も無い。
薄い桃色の半透明の光体を精一杯拡げて、光の輪の内側に大量の血を包み込む。
そして光の輪で絞り込むようにして吸収を開始。
選別して無駄な物は黒い血として、輪の外へ排出する。
しだいに光の輪が色を変える。
赤味を帯びてくる。
仁王立ちの胴体が膝から崩れ落ちた。
首の上に圧し掛かるようにして、うつ伏せに倒れる。
急激に生気が失われていく。
首を斬り離された瞬間に、鬼としての生を終えたのだ。
しかし執念は残っていた。
雷鬼の亡骸から、青白い光体が抜け出した。
細長い紐のような状態で上昇を始める。
全長およそ10メートル。
雷鬼の亡霊なのだろう。
周囲に火花を撒き散らしながら、上空のバロンを目指す。
少し遅れて銀色の光体も抜け出す。
これも紐状で、全長5メートル余。
どうやら銀鬼か。
血の選別・吸収で忙しいバロンは、無警戒であった。
そこを青白い光体が、襲うようにして巻き付いた。
さらに銀色の光体。
気付いたときには遅かった。
二体の光体に雁字搦めにされる。
いずれもがバロンの体内に侵入しようと試みる。
辛うじて防ぐが、脱出する手立ても無い。
「金色の涙」は三者の絡み合いから発せられる気を分析した。
どうやら三者共に弱っていて、勝負がつきそうにない気配だ。
それよりも気になるのは、この辺りの空気の重さだ。
みょうに圧迫感らしきものが漂い始めている。
若菜がヤマトを覗き込む。
「どうなってるの」
「感じるのかい」
「なんか嫌な気がするの」
「そう、その通りだよ」
「・・・」
「どうやらこの争いが、怨霊達を呼び寄せたみたいだね」
「怨霊・・・」
「この世に怨みを持ち、成仏出来ない者達のことさ」
「いるの」
「いるさ。今のところは小物達が遠巻きにしてるだけだけどね」
「小物・・・、大物は」
「大物は地に封じられているよ」
いつの間にか傍に萌来が来ていた。
「ヤマト、まるで別人だな」
繁々と観察する。
「魔物だから、色んな顔を持つのさ」
「いいだろう。ところで、地に封じられた怨霊だが、目覚める兆しがある」
ヤマトは若菜の胸から飛び出すと、地に伏した。
そして地中の気の流れを読む。
確かに地中を、異様な気が走っている。
闇黒の塊のようで、重苦しい。
「心当たりはあるのかい」
「京洛には無数の怨霊が封じられている。近いところでは『頼芳公』」
封じられていない小物の怨霊達も、集団となって力を得たと勘違いしたのか、
露骨に姿を現し始めた。
対して方術師達が怨霊退治を開始する。
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