マリリンは困惑した。
パラレルワールドと聞かされても、理解し難い。
それを見透かしたようにヒイラギが笑う。
「パラレルワールドは立証されたものじゃない。
立証のしようがないからな。
・・・。
俺達が今いる世界はどこだ。
過去だろう。
古い言い方をすると、神隠しに遭い、時空を越えて過去に飛ばされた。
それでここに居る。過去に生きている。
これは夢でも幻でもない、現実だ。」
それは分かる。過去よね。
でも、私達が知ってる歴史とは違っているでしょう。
「たしかに違ってる。
袁術だけじゃない。
前にも話したが、赤劉家の名が歴史に残っていないのが不思議だ。
赤劉邑がある徐州は三国志でも有数の激戦地だ。
徐州を我が物にせんと曹操、袁術、劉備、孫権、呂布等が入り乱れて奪い合った。
ところが、あれほどの規模の邑なのに、その名は全く出て来ない」
そうよね、赤劉家の存在は疑問よね。
それに・・・、
それに私は酔っぱらっていたとはいえ、関羽と義兄弟の契りを結んだ。
加えて今は傍に呂布、許褚、華雄がいて、董卓や李儒とも親しい。
これはどういうことなの。
私も三国志の仲間入りなの。
「もしかすると俺達が来たことによって、ちょっとだが歴史に歪みが出た。
史実への干渉だ。
その犠牲が袁術なのかも知れない」
袁術の評価は、ちょっと扱いなのね。
「当然だ。
・・・。
お前は今までは歴史に関わらぬように動いて来た。
実に腹立たしかった」
はあ、何言ってるの。
「腹立たしかったが、それは冷静に考えると正しい。
この世界は俺達の知っている歴史通りには動かない。
すでに袁術が死んでしまった事で、それが証明された。
だからこののちも歴史に関わらぬように注意深く耳を澄まし、目を凝らし、
騒ぎに巻き込まれぬように生きて行くしかないだろう」
乱世の時代では一番難しい生き方よね。
「長生きするには、それしかないだろう。
生き延びて、元の世界に戻る手立てを探すのが最優先だろう、違うか」
確かに。
元の世界に戻るのが最優先よね。
でも意外よね。
アンタのことだから、てっきり私に天下を取れと言うのかと思っていたわ。
ヒイラギが鼻で笑った。
「ふっふん。
人一人殺せないヤツに天下を求めるのは酷と言うものだ。
どうよ、俺に任せてみないか。
呂布や関羽を従えて、天下の主に収まってやろうか」
嫌よ。
アンタに乗っ取られるのは嫌。
この身体を血で汚されたくない。
「まあ、好きにしな。お手並み拝見。
とにかく臨機応変に立ち回るんだぞ。
これは喧嘩だからな」
はあ、喧嘩。
何言ってるの。
どうして喧嘩なの。
「それでは聞くが、お前は過去に飛ばされるような悪さをしたのか」
してない。
「ここに居るのは自分の意志か」
まさか。
「これはな、お前と歴史、時空との喧嘩だ。
売られた喧嘩だ」
そういうことね。
時空、歴史との喧嘩ね。
でも相手が大き過ぎて漠然としているわ。
ヒイラギの声音が変わった。
「隣で許褚がお前を心配しているぞ」
慌てて振り向くと、許褚がマリリンを心配気に覗き込んでいた。
「大丈夫ですか」いつまでもマリリンに律儀に接する許褚。
「ちょっと気分が晴れないだけ。
どうして、ここにいるのか、不思議に思ったのよ」
すると華雄が笑顔で言う。
「手柄を立てたからでしょうよ、師匠」
「敵味方、大勢が死んでも手柄なのね」
「都への進撃を止めたのは、大きな手柄ですよ」
視線が前方の韓秀、韓寿、韓厳の親子を捉えた。
長男と次男の二人は参戦していないにも関わらず、堂々たる態度でここにいた。
赤劉家騎馬隊の手柄が認められ、
韓秀の指示で、その報奨を二人が代表して受ける事になっていた。
親馬鹿といえば、それまで。
なのだが、家臣の犠牲と引き換えなので、こういう儀式は仇や疎かには出来ない。
同時に息子二人の名も売れて、養子先探しには有利に働くだろう。
計算尽くと分かっていても、親心から出ていることなので、軽蔑する気にはならない。
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それを見透かしたようにヒイラギが笑う。
「パラレルワールドは立証されたものじゃない。
立証のしようがないからな。
・・・。
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過去だろう。
古い言い方をすると、神隠しに遭い、時空を越えて過去に飛ばされた。
それでここに居る。過去に生きている。
これは夢でも幻でもない、現実だ。」
それは分かる。過去よね。
でも、私達が知ってる歴史とは違っているでしょう。
「たしかに違ってる。
袁術だけじゃない。
前にも話したが、赤劉家の名が歴史に残っていないのが不思議だ。
赤劉邑がある徐州は三国志でも有数の激戦地だ。
徐州を我が物にせんと曹操、袁術、劉備、孫権、呂布等が入り乱れて奪い合った。
ところが、あれほどの規模の邑なのに、その名は全く出て来ない」
そうよね、赤劉家の存在は疑問よね。
それに・・・、
それに私は酔っぱらっていたとはいえ、関羽と義兄弟の契りを結んだ。
加えて今は傍に呂布、許褚、華雄がいて、董卓や李儒とも親しい。
これはどういうことなの。
私も三国志の仲間入りなの。
「もしかすると俺達が来たことによって、ちょっとだが歴史に歪みが出た。
史実への干渉だ。
その犠牲が袁術なのかも知れない」
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すでに袁術が死んでしまった事で、それが証明された。
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騒ぎに巻き込まれぬように生きて行くしかないだろう」
乱世の時代では一番難しい生き方よね。
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確かに。
元の世界に戻るのが最優先よね。
でも意外よね。
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ヒイラギが鼻で笑った。
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嫌よ。
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「それでは聞くが、お前は過去に飛ばされるような悪さをしたのか」
してない。
「ここに居るのは自分の意志か」
まさか。
「これはな、お前と歴史、時空との喧嘩だ。
売られた喧嘩だ」
そういうことね。
時空、歴史との喧嘩ね。
でも相手が大き過ぎて漠然としているわ。
ヒイラギの声音が変わった。
「隣で許褚がお前を心配しているぞ」
慌てて振り向くと、許褚がマリリンを心配気に覗き込んでいた。
「大丈夫ですか」いつまでもマリリンに律儀に接する許褚。
「ちょっと気分が晴れないだけ。
どうして、ここにいるのか、不思議に思ったのよ」
すると華雄が笑顔で言う。
「手柄を立てたからでしょうよ、師匠」
「敵味方、大勢が死んでも手柄なのね」
「都への進撃を止めたのは、大きな手柄ですよ」
視線が前方の韓秀、韓寿、韓厳の親子を捉えた。
長男と次男の二人は参戦していないにも関わらず、堂々たる態度でここにいた。
赤劉家騎馬隊の手柄が認められ、
韓秀の指示で、その報奨を二人が代表して受ける事になっていた。
親馬鹿といえば、それまで。
なのだが、家臣の犠牲と引き換えなので、こういう儀式は仇や疎かには出来ない。
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