金色銀色茜色

生煮えの文章でゴメンナサイ。

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白銀の翼(動乱)436

2015-04-22 20:55:51 | Weblog
 マリリンは困惑した。
パラレルワールドと聞かされても、理解し難い。
それを見透かしたようにヒイラギが笑う。
「パラレルワールドは立証されたものじゃない。
立証のしようがないからな。
・・・。
俺達が今いる世界はどこだ。
過去だろう。
古い言い方をすると、神隠しに遭い、時空を越えて過去に飛ばされた。
それでここに居る。過去に生きている。
これは夢でも幻でもない、現実だ。」
 それは分かる。過去よね。
でも、私達が知ってる歴史とは違っているでしょう。
「たしかに違ってる。
袁術だけじゃない。
前にも話したが、赤劉家の名が歴史に残っていないのが不思議だ。
赤劉邑がある徐州は三国志でも有数の激戦地だ。
徐州を我が物にせんと曹操、袁術、劉備、孫権、呂布等が入り乱れて奪い合った。
ところが、あれほどの規模の邑なのに、その名は全く出て来ない」
 そうよね、赤劉家の存在は疑問よね。
それに・・・、
それに私は酔っぱらっていたとはいえ、関羽と義兄弟の契りを結んだ。
加えて今は傍に呂布、許褚、華雄がいて、董卓や李儒とも親しい。
これはどういうことなの。
私も三国志の仲間入りなの。
「もしかすると俺達が来たことによって、ちょっとだが歴史に歪みが出た。
史実への干渉だ。
その犠牲が袁術なのかも知れない」
 袁術の評価は、ちょっと扱いなのね。
「当然だ。
・・・。
お前は今までは歴史に関わらぬように動いて来た。
実に腹立たしかった」
 はあ、何言ってるの。
「腹立たしかったが、それは冷静に考えると正しい。
この世界は俺達の知っている歴史通りには動かない。
すでに袁術が死んでしまった事で、それが証明された。
だからこののちも歴史に関わらぬように注意深く耳を澄まし、目を凝らし、
騒ぎに巻き込まれぬように生きて行くしかないだろう」
 乱世の時代では一番難しい生き方よね。
「長生きするには、それしかないだろう。
生き延びて、元の世界に戻る手立てを探すのが最優先だろう、違うか」
 確かに。
元の世界に戻るのが最優先よね。
でも意外よね。
アンタのことだから、てっきり私に天下を取れと言うのかと思っていたわ。
 ヒイラギが鼻で笑った。
「ふっふん。
人一人殺せないヤツに天下を求めるのは酷と言うものだ。
どうよ、俺に任せてみないか。
呂布や関羽を従えて、天下の主に収まってやろうか」
 嫌よ。
アンタに乗っ取られるのは嫌。
この身体を血で汚されたくない。
「まあ、好きにしな。お手並み拝見。
とにかく臨機応変に立ち回るんだぞ。
これは喧嘩だからな」
 はあ、喧嘩。
何言ってるの。
どうして喧嘩なの。
「それでは聞くが、お前は過去に飛ばされるような悪さをしたのか」
 してない。
「ここに居るのは自分の意志か」
 まさか。
「これはな、お前と歴史、時空との喧嘩だ。
売られた喧嘩だ」
 そういうことね。
時空、歴史との喧嘩ね。
でも相手が大き過ぎて漠然としているわ。
 ヒイラギの声音が変わった。
「隣で許褚がお前を心配しているぞ」
 慌てて振り向くと、許褚がマリリンを心配気に覗き込んでいた。
「大丈夫ですか」いつまでもマリリンに律儀に接する許褚。
「ちょっと気分が晴れないだけ。
どうして、ここにいるのか、不思議に思ったのよ」
 すると華雄が笑顔で言う。
「手柄を立てたからでしょうよ、師匠」
「敵味方、大勢が死んでも手柄なのね」
「都への進撃を止めたのは、大きな手柄ですよ」
 視線が前方の韓秀、韓寿、韓厳の親子を捉えた。
長男と次男の二人は参戦していないにも関わらず、堂々たる態度でここにいた。
赤劉家騎馬隊の手柄が認められ、
韓秀の指示で、その報奨を二人が代表して受ける事になっていた。
親馬鹿といえば、それまで。
なのだが、家臣の犠牲と引き換えなので、こういう儀式は仇や疎かには出来ない。
同時に息子二人の名も売れて、養子先探しには有利に働くだろう。
計算尽くと分かっていても、親心から出ていることなので、軽蔑する気にはならない。




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