金色銀色茜色

生煮えの文章でゴメンナサイ。

(注)文字サイズ変更が左下にあります。

白銀の翼(動乱)435

2015-04-19 06:50:05 | Weblog
 マリリン達の出で立ちに息を呑んだ観衆が、ざわめき始めた。
次第に大きくなって行く。
やがて大きな歓声に。
遊び心を理解したらしい。
その時にはマリリン達は遠ざかっていた。
 二階から見下ろしていた劉麗華達は顔を見合わせた。
マリリン達の出で立ちを、あれこれ見立てたのは姫五人。
観衆に受けるかどうかより、五人の趣味で見立てたもの。
それでも少しは観衆を気にしていた。
それが受けた。
顔を見合わせて喜ぶ。
 董卓将軍の隊列が途切れることなく進み、赤劉家の騎馬隊が現れた。
先頭に立つのは次期当主である劉芽衣の夫、韓秀。
直ぐ後ろには長男の韓寿と、次男の韓厳。
この三人は姫五人の見立てを拒否した。
「派手過ぎる。武人らしくない」と言い、愚直に鎧兜姿を選択した。
三人の後ろに従う赤劉家騎馬隊の面々もだ。
 姫五人だけでなく、守り役の者達も溜め息をついた。
予期はしていたが、目の当たりにして、やはり感。
良く言えば、隊列と一体感がある。
悪く言えば、隊列に埋没している。
だけど誰も口を開かない。
相手が劉麗華の父であり、兄弟であったので、言葉にするのは遠慮していた。
 事情が分からぬ華雪梅が言う。
「残念よね」子供らしい無邪気さ。
 みんなは苦笑い。
 この凱旋で内郭の門を潜れるのは将校以上の者に限られていた。
将軍と特に許された者は騎乗のまま。
他は徒歩で、武器は腰に下げた太刀のみ。
 マリリン達は当然、当初の予定通り、
内郭の城壁に沿って左回りで南門より退出するつもりでいた。
それを董卓が呼び止めた。
「王宮を見てみないか」と誘う。
 断る理由はない。
マリリンだけでなく、他の三人も同意した。
赤劉家の騎馬隊を待って馬を預け、内郭東門を潜った。
正面に建つ王宮に目を奪われた。
壮大であり、豪華絢爛。奥行きが窺い知れない。
いつもは城壁越しに見ていたが、こうして全容を間近にすると、別の感情が湧いてきた。
「まるで巨大な岩山。
よくぞここまで大量の石材を集めたもの。
人手だけでなく、莫大な費用も要しただろう」と関心した。
 韓秀親子も門を潜ったのだが、堅苦しい親子なので苦手、敢えて別行動にした。
郭夷達の姿を見つけ、そちらに向かった。
王宮正面広場の石畳に続々と武人が集まって来ていた。
他の三門より入城した者も多いので、様々な軍装で、まとまりには欠けていた。
マリリン達は行き交う者に奇異の目で見られたが、一向に気にはならない。
少々奇抜ではあったが、ただの鎧兜姿より、こちらの方が気が利いていた。
遊び心を大いに刺激された。
 途中、気になる噂を耳にした。
「袁術殿が亡くなった」というのだ。
 合流して郭夷に、その真偽を問い質すと、
「それは俺も聞いた。
なんでも、鮮卑の焼き討ちを受けた際、酷い火傷を負い、
家臣どもによって屋敷に担ぎ込まれた。
それが昨夜、息を引き取った」と説明してくれた。
 マリリンは唖然とした。
袁術が亡くなるとは。
三国志では主要な人物の一人。
不可欠の人が、「黄巾の乱」も始まらないのに亡くなってしまった。
 袁術がもっとも輝いたのは帝位に就いた時であった。
長安を脱出した皇帝が行方不明になるや、「後漢の命運が尽きた」と判断し、
最大の敵である袁紹を出し抜く為に自ら帝位に就いた。
皇帝を自称し、仲王朝を建てた。
寿春を都とし、諸侯に官位爵位を贈り、戦火に倦いた者達の歓心を買おうとした。
ところが麾下にあった孫策が反乱を起こした。
「我は後漢の臣である」として袁術を謀殺し、その遺領遺臣全てを奪った。
 魏、蜀、呉三国が相争う三国時代初頭に、
孫策の呉が領地を増やしたのは大きかった。
孫権の代になるや豊潤な領地を背景に、蜀と魏を滅ぼした。
ついで後漢の皇帝に禅譲を迫り、皇位に就き、呉国を建てた。
もっとも呉国は孫一族の内部分裂で短命に終わった。
分裂の間隙を突いて、孫策の軍師であった周瑜の子が反乱を起こし、
呉国を滅ぼして新たな国を建てたからだ。
 唖然としているだけのマリリンに、脳内に居候しているヒイラギが声を掛けた。
「大丈夫か」
 大丈夫な分けないでしょう。
呉国がないんだよ。
私達の歴史とは違うんだよ。
「そうか」
 そうかじゃないでしょう。
短命とはいえ、アンタの好きな呉国の建国が出来ないんだよ。
アンタは三国志の勝者が呉国である事を喜んでいたじゃない。
忘れたの。
「こういう時こそ落ち着いて、ようく考えるべきなんだ」
 どう考えれば良いの。
「たとえばパラレルワールドの可能性」
 はあ、パラレルワールド、何それ。
「我々のいた世界と同時並行して進む別の世界。
時間軸は同じだが異なる歴史の世界、とも言う。
ここは、もしかしたら、我々がいた世界と同時進行で進む別世界の過去ではないのか。
それなら納得が行く。
ここでは魏が勝者になっのかも知れない。
あるいは蜀が勝者になったのかも知れない。
それとも別の誰か・・・、そう考えると心がワクワクする」




ランキングの入り口です。
(クリック詐欺ではありません。ランキング先に飛ぶだけです)
にほんブログ村 小説ブログ ファンタジー小説へ




触れる必要はありません。
ただの飾りです。
PVアクセスランキング にほんブログ村

コメント    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 白銀の翼(動乱)434 | トップ | 白銀の翼(動乱)436 »

コメントを投稿

Weblog」カテゴリの最新記事