天地わたるブログ

ほがらかに、おおらかに

鷹在籍最長・景山而遊の句境

2024-06-05 05:30:29 | 俳句
   


今月29日、鷹は60周年記念大会を新宿京王プラザホテルで催す。
すでに配布された作品集を見ると、487名が投句している。この数に驚いた。月例の中央例会が220名程度、通常の全国大会が340名程度ではなかったか。
「鷹60周年」と銘打ったこの大会は、主宰小川軽舟が並々ならぬ意欲をもって参加を呼び掛けたので小生はもしかして400名に達するかと推量した。政党の幹事長ではないが400名を集めたら成功ではないかと個人的に考えた。高齢者も多く来たくても身体がままならぬ人も多いから400なら御の字。それが450を超え500に迫ろうかという人数。
鷹2代目の優秀さ、非凡さを立証した数字であろう。この数字で成功といっていいだろう。政治も俳句も畢竟数なのである。
さて、その鷹60年で誰が一番長く在籍しているかずっと気になってきて、前回、59年在籍の高橋正弘さんが最長とお知らせした。だが鷹6月号が来て、それが誤りであることを知った。
月光集同人・景山而遊さんである。
鷹6月号の「特集・鷹のベテラン勢はいま」という企画に而遊さんは「思い出の種々」なるレポートを書いている。そこで、昭和39年7月「鷹」の創刊に3月遅れの10月に入会した、と記している。その年の入会なのである。正弘さんは翌年であったから彼を凌ぐ。
鷹発足時の賑わい、大変さを小気味よくまとめている。
一番おかしかったのが次の箇所。
四十四年、五月、4阪神方面の活動を促すため、編集長倉橋羊村、須藤妙子二名の大阪への派遣。私たち会員の増加は遅々として進まず、この時の出迎えは私の他僅か二名。遠路来阪二名に申し訳なかった。その後も私たち少数会員のお苦しい状態が続く。梅田東の寺提供の部屋は、地元結社の句会で一杯。私たちのスリッパの数と見比べて無念でならず。そこで私がスリッパ入れからいくつか持ち出し、部屋の前へ足したものだ。後日動力車会館での同人総会にこの話をして、会場の笑いを呼んだ。

而遊さんは年配で、数年前、小生がまだ中央例会へ皆勤していたころたまに雛壇にいらっしゃるのを遠望した。細谷ふみをさんと親しく話し合っておられたのを拝見したが、ふみをさんほどしかと風貌を記憶していない。

而遊さんは以下の10句を鷹へ掲載している。
自選10句
湘子選
 かばかりの土用鰻を恃まんや
 薪割りの薪撥ね跳んで旧端午
 燕去ぬ千年杉に雷の痕
 わが墓は要らぬと思ふ墓洗ふ
 郭公や苔の青衣の崖仏
軽舟選
 母の杖われに短し草の花
 媾曳の度肝抜きたり威銃
 菱の実やつくづく昭和育ちなる
 鶏小屋を尻より出づる雪解かな
 天頂と顱頂のあはひ秋あかね
大雑把なことを言えば、湘子時代の句より軽舟時代になってからのほうが句は深く、おもしろくなっているように思う。
「媾曳」の句は単純明快でおもしろい。あり得ることである。「鶏小屋」はさらにおもしろい。小屋は立って入れるほど戸が大きくない。水や餌をやるための戸で屈んで出入りする。中は狭いので反転するのが厄介。ゆえに入った形のまま出る。付けた季語も振るっている。この場合選択の余地はかなりあるが「雪解」はレベルが高い。春の光に水が飛び散って光っている。「天頂」に「顱頂」をぶつけたのは諧謔の極み。おもしろくしようとせず結果的におもしろいのが最上のユーモアである。

「天頂」の句と同じセンスの秀句に
 へうたんのくびれの上と下とかな
がある。而遊さんといえばまずこれを思う。彼の代表句だと思うのだがなぜ本人は落としたのか。
湘子時代の句ではなかったか。湘子がおもしろさをべた褒めしたように記憶する。そのとき小生は俳句の浪漫性に惹かれていて、この句のよさについて行けなかった記憶がある。作者が別に何も言っていない。俳句の神髄がわからない人はそりゃそうだよね、瓢箪ってそういうものだよ、で終わってしまう。けれど文字にしたことで瓢箪という物の存在にぐっと引き込まれる。文字にしたからおもしろいという俳句の逸品である。
小生はこの境地にいつか到達したい気持ちがある。なぜ作者この逸品を外したのかわからない。大会で会う機会があったら聞いてみたい。


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1 コメント

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大会参加 (YS)
2024-06-05 17:00:51
大会に参加します。
お目にかかれれば幸いです。
人数が多そうなので、見つけるのが大変かも知れません。
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