嫁の肌が荒れて困っているから背高泡立草のつぼみを採ってくるよう妻がいう。
それを干して風呂に入れるそうだ。
妻は東城百合子の『薬草自然療法』のファンで、いつかは枇杷の葉を漬けるとかでその葉をたんねんに洗わされたこともある。
きのう路傍の痩せたつぼみを少し採っていくと、妻は「これは上物よ」と喜んだ。
満開でもつぼみはあるはずとの厳命を受けて今日も多摩川河川敷へおもむく。
京王線の鉄橋の下の日当たりの悪いところにまだ花開いていない泡立草がある。
背高泡立草の群落に分け入ってかくも熱心にこやつを見るのははじめて。ろくでもない侵入者と思ってきたが、役に立つとなると見方が変わる。
かなり採って帰宅すると昼風呂が用意されている。
蓋を取ると湯がやや黄ばんでいる。
袋に何か入っている。ははあ……きのう採った泡立草らしい。
泡立草の黄色と妻の凝り性と引き合うものがある。