けろっぴぃの日記

最近、政治のことをはじめとして目を覆いたくなるような現状が多々あります。小さな力ですが、意見を発信しようと思います。

激論クロスファイアの野中広務元官房長官を見て思う

2013-06-08 22:25:15 | 政治
先日も「尖閣棚上げ論者はその背景の戦略を示せ!!」にて尖閣棚上げ論について書かせて頂いたが、そのブログを書くきっかけになった野中広務元官房長官がBS朝日の激論クロスファイアに出演したので、どれほど尤もらしい説明をしてくれるのかと番組を見てみたが、結論としては普通の棚上げ論以上でも以下でもなく、単に、「自分は戦争経験者だから、戦争の何たるかを知っている」と自慢げに語り、だから中国をこれ以上刺激してはいけないという主張であった。

なるほど、そうですか。「では、あなたは北朝鮮から核ミサイルが本当に飛んできそうな今この時に、北朝鮮を刺激してはいけないから経済制裁を解きなさいと主張する訳ですね!?」と私は聞いてみたい。多分、中国と全面戦争になる可能性を本気で考えている人は、日本国内はおろか、中国国内にもいないだろう。日本との全面戦争は、米軍基地を日本各地に持つ以上、アメリカに対する全面戦争と同義語である。だから、仮に戦争になるとしても、局地戦以上の事態になる可能性は考えにくい。不慮の事故により局地戦が勃発した場合、直後に日米同盟が起動し、米軍が参戦して両者が竦み合い状態で時間が止まる。そこから先は外交戦となり、国際舞台での外交的な駆け引きが丁々発止行われ、事実上の休戦状態になるのは容易に予想できる。しかし、北朝鮮の場合にはどうか?多分、地味な通常兵器でのがぶり四つの戦を仕掛けても勝ち目はないから、沖縄、東京などに核ミサイルを打ち込んで日米が狼狽えている間に休戦交渉をして一気に優位にことを運ぶか、「窮鼠、猫を噛む」のことわざの如く、追い込まれた北朝鮮が自殺的行為として核ミサイルを撃つかの、どちらかのシナリオぐらいしか思いつかない。だから、戦争の恐怖を知る立場としての、相手を挑発することをたしなめるなら、経済制裁をあそこまでやって追い詰める行動の方が急を要する課題のはずである。しかし、まかり間違っても彼はそんなことは言わないだろう。だから、今日のテレビでの説明には説得力は感じられなかった。

また、先日の私のブログでもコメントしたのであるが、今日も朝日新聞特別編集委員の星浩氏も指摘していた「田中元総理の時は、日中国交正常化という大義が優先し、棚上げをすることのメリットがあった。しかし今は、日本が40年以上も実効支配を継続していたという現実をチャラにする棚上げなのだから、中国側に一方的にメリットがあり日本にはデメリットだらけである。状況が異なる中で、同じ議論はできないはず・・・」と指摘していたが、これに関しては野中氏がスルーするだけではなく、田原総一郎氏もスルーしていた。何故、この最も重要なポイントを議論しないのか?あまりにも、都合が悪いことには無視を決め込むという、ご都合主義が見え見えである。

大体、元官房長官ともあろう人が、外交の何たるかを知らないという点が問題である。番組の中でも紹介されていたが、矢吹晋著の「尖閣問題の核心―日中関係はどうなる」という本の中で、周恩来と田中元総理の間で棚上げの議論があったが、当時の外務省の橋本恕中国課長が記録を削除したと述べているという。ここでは、下記の様なやり取りがあったらしい。
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「周首相は『これ(尖閣問題)を言い出したら、双方とも言うことがいっぱいあって、首脳会談はとてもじゃないが終わりませんよ。だから今回はこれは触れないでおきましょう』 と言ったので、田中首相の方も『それはそうだ、じゃ、これは別の機会に』、ということで交渉はすべて終わったのです」
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このやり取りには、重要な意味が含まれている。その意味とは、日本側にも中国側にも外相文書にこの記録が残されていないということは、両者がこの話をしなかったことにすることで合意していたという事実である。例えば、安倍総理とオバマ大統領が会談をしても、そこで話し合われた全てのことが公にされたりはしない。ケリー国務長官が中韓の後に日本に来た時も、閣僚を交えた会合の後で、(通訳は例外だが)二人だけの会話の時間をもったということは、記録には残したくはないが、話さねばならぬ議案があるからそのようにするのである。だから、記録であったり発表されたりする情報は、それをオフィシャルな発言として認めることが出来るものであって、それが決して全てではない。もし本気で問題を解決しようと思うのであれば、相手と膝を突き合わせて、あーでもない、こうでもないと本音ベースで言い合いをしないと決して解決には向かわない。だから、何を話したかが問題ではなく、何を話したこととしているのかが問題のはずなのである。この様な視点で見れば、「記録に残さないことで合意」したということは、「棚上げすることで合意した」という意味には決してならず、「棚上げすることにはしていないことで合意した」という意味に本来はなるべきである。この程度のことが理解できないとはとても思えない。

また、上述の会話を詳しく読み解くと、周恩来は「今回は触れない」と言い、田中元総理は「別の機会に話そう」と言ったことになっている。つまり、日本は領有権を強く主張しないという意味の「棚上げにしましょう」とは決して読み取ることはできない上に、「日本政府としては、領有権に関しては決して譲歩などできないが、その議論は別の機会に行いたい」という意味にとることに不自然な点はない。だから、この会話は「棚上げ論」の肯定材料にはなりえないはずである。しかし、野中元官房長官はこれを「日本が棚上げ論に合意し、日中間に領土問題が存在することを認めた証拠」だと主張している。あまりにも、国語力がなさすぎると言わざるを得ない。

大体、今回のテレビ出演の中では、小泉総理の靖国参拝の舞台裏など、ギリギリの駆け引きがあったはずの一種の機密事項のはずなのに、ぺらぺらと喋りすぎている。それは、中国に塩を送る行為以外の何物でもない。つまり、「自分は大物である」、「今でも政界に影響力を与えうる存在である」と示したいがために、国益を売って屁の様な僅かな私利私欲に利用しようとしている。一緒に中国を訪問した面々を見ると、同じような思惑の人物が名を連ねている。悲しい限りである。

だから、もう一度彼の様な人物には聞きたい。尖閣棚上げ論の先にどの様なシナリオを考えているのかと。私はてっきり、未来のある時、中国が超親日的になって「尖閣なんかいらない」と言ってくれる日を夢見ているのかと思っていたが、それは全くの逆で、日本側から「尖閣なんていらない」と言い出す日を待っているかのようなシナリオに見える。厳密に言えば、「尖閣なんかいらない」ではなく、「二か国で折半しよう」という提案かも知れない。ならばはっきりとそう言って欲しい。はっきりとそう言えば、多分、賛同者などでないはずなのだから・・・。その覚悟があなたにはあるのか!(ないでしょうね・・・)

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