けろっぴぃの日記

最近、政治のことをはじめとして目を覆いたくなるような現状が多々あります。小さな力ですが、意見を発信しようと思います。

小室淑恵さん(株式会社ワーク・ライフバランス)の講話

2012-01-08 23:31:32 | 政治
少し前のことになるが、会社で企画された講演会で株式会社ワーク・ライフバランスの小室淑恵さんの講話を聞く機会があった。会社名からも分かるようにワーク・ライフバランスの話がテーマかと思っていたら、予想に反して「介護」がテーマであった。

非常に雑な説明で恐縮であるが、超簡単にその内容を要約すると以下のとおりである。これまでであれば、ワーク・ライフバランスと言えば女性の子育てのための育児の時間と働く時間の配分が最もホットな話題で、家族や趣味や自分の時間と仕事との両立などがそれに続く話題なのだろう。しかし、これからの時代は介護と仕事の両立が重要だという話だった。

私も父が要介護認定を受けて、ちょっと前までは結構手がかかっていた。我が家の場合にはたまたま運が良く、父が体調を崩した際に要介護4の認定となり、新設の特別養護老人ホームに幾つか応募したらそのうちのひとつが受け入れてくれることになった。月17万円弱とそれなりの価格ではあるが年金でまかなえる範囲であり、トイレ付きの個室で父曰く「ホテルの様だ」と絶賛の綺麗な部屋である。糖尿病の父の食事管理からインスリン注射の面倒まで見てくれる。カロリー制限があるのに、食事自体には父も十分満足している(当然、甘いお菓子が食べれないので「甘いお菓子が食べたい」と我侭を言ってはいるが・・・)。母は既に他界しているので、私の方の親の介護は概ね先が見えた感がある。家内の方は、3人兄弟で長男が両親の隣に家を構えているので、今後、介護のために「仕事もままならない状態」にはならないだろう。

しかし、これからの時代はこの様な幸運な家庭は少ないのであろう。若い世代は良いが、管理職の多くは40代、50代であり、その両親は70代に達する。元気でピンピンしているうちは良いが、数人にひとりは介護が必要となるのであろう。専業主婦の奥さんを持つ男性であれば、はじめのうちは奥さんにおんぶにだっこでなんとかなるが、大抵の介護が必要な高齢者は体の不自由からストレスが溜まり、我侭なことばかり言ったりする。私の父が病院に入院したときは、1ケ月の入院期間の後半はほぼ毎日、病院から会社の私に1日3回ほど電話が掛かってきた。父が駄々をこねて看護婦さんが困り果て、言われるがままに私に電話をしているのだと言う。この様な人の相手をしていると、5年もすれば多分、奥さんも潰れてしまうのであろう。しまいには旦那さんも会社を休まなければなくなり、究極には会社を辞めて介護に専念し、親の年金で食いつなぐ人生を送らねばならなくなる。

小室さんが強調していたのは、ワーク・ライフバランスの制度を確立するのは、企業としては単なる流行りものに飛びつくという位置づけではなく、将来の職場を維持するための生命線だという。管理職が片っ端から退職せざるを得ない状況を回避し、持続可能な状態を維持するためには男性といえども早いうちから親の介護に積極的に関与し、会社はそれをサポートするために仕事の時間と家庭で介護する時間を両立可能な制度を導入しなければならないという。

余談ではあるが、私は母の死後、父を実家から引き取った。父が健康な間は平日の5日間は私の自宅の近所のアパート住まいで呑気に暮らし、週末だけ私の自宅に来て同居するという生活だった。微妙なバランスが丁度よい生活だった。その後、父が体調を崩して入院し、歩行器でやっと歩ける程度まで回復して退院したときは目の前が真っ暗だった。とてもではないが、家内に血の繋がらない我侭な私の父の面倒を見させる訳にもいかず、入院中から近所の地域包括支援センターに足しげく通い、そこのケアマネージャーの方に相談に乗ってもらった。介護保険なしでも自腹でショートステイを探せないかと幾つか施設を当たったりもしたが、利用日直前に飛び込みで空き部屋があるほど甘くはなかった。しかし、ケアマネージャの方が「多分、病状は要介護4程度はあるので、入院中に要介護認定を受けなさい。判定は1ヶ月以上先になるが、認められれば申請時期に遡った遡及的な認定がおりる。それを前提で地域ケアプラザのデイサービスを受けることは可能だ。要介護4なら週5日はデイサービスを受けられる。デイサービスは朝9時から午後4時ごろまでで、入浴も週に2〜3回利用できる。ただ、(ありえないと思うが)認定が降りなかったら自腹を切ることになる。それでも良ければ退院した翌日からサービスを開始しても良い。」と言って下さった。殆ど、その方に後光が射して見えたものだ。

その後も私は積極的に父の面倒を見た。父は糖尿病なので食事制限が必要なのだが、週末に私が何種類もの大量の低カロリーの食事を作り、小分けにして冷凍庫で冷凍し、更にほうれん草や小松菜などの野菜を茹でてタッパに入れて冷蔵庫に保存した。子供用の食事と父の食事は全く別物となるが、しかし父用には味噌汁と魚の干物などを一つ焼けば残りは冷凍の食材をレンジで温めて対応できるようにした。そして運良く、たった1年ほどでその状態からも脱出することができた。「うぬぼれるな!」と諌められそうであるが、少なめに見積もっても介護の7割以上の稼働を私が背負ったという自負はある。

しかし、私は幸運であったし、この様に上手くいく例は稀であろう。システムとして対応することを考えれば、多分、在宅勤務制度の拡大は必須なのだと思う。私の職場は月に数回の在宅勤務を奨励している。もちろん、こんな介護を前提とはしていないので、制約はそれなりにある。しかし、私が提案したいのは、在宅勤務に限定して、「労働基準法を緩和する」という案だ。育児や介護の場合、大抵は昼間の方が負担が大きい。深夜の方が落ち着いて仕事ができる。昼間の空いた時間を使いこまめな昼寝で体を安め、夜の集中できる時間に短時間で仕事をこなす。例えば1週間や比較的短い周期で進捗を管理し、十分な進捗があればそれで良しとする。細切れな時間での仕事であれば、通常の勤怠管理の概念から大幅に外れるが、時間ではなく実績や成果で評価する。その代わり、ある程度の割合で、勤務時間の制限のない在宅勤務を許容するのである。さらには、職場の中では在宅勤務が可能な職場とそうでない職場が混在するが、個人の都合を聞き入れ、在宅勤務の必要な人は可能な限り配置転換を図るのである。ある程度のポストになると、中々この様な都合も効かないかも知れないが、働く時間帯の制約の緩和は少なくとも有効なケースが多いだろう。

私は話を聞いて初めてこの様なことが今後、社会の中で問題化してくることを知ったが、多分、この様な隠れた課題は多いのだろう。その様な課題を早期にあぶり出し、早く手を打つための専門のスタッフを政府は揃える必要があるのではなかろうか。

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