(高知県メタンハイドレート開発研究会、鈴木朝夫理事長からの新年のご挨拶)
地球資源の使い方、今後の人類の暮らしぶり (2013/1/1)
高知県メタンハイドレート開発研究会(理事長 鈴木朝夫)
明けましてお目出度うございます。昨年はどのような年でしたでしょうか。新しい年が皆様方にとって明るく実り多き年であることを、心からお祈り申し上げます。
ところで、皆様はどのような初夢をご覧になったでしょうか。土佐湾沖のメタンハイドレート掘削に成功し、高知新港が賑わい、香長平野が忙しくなるといった夢を画く人も居たかも知れません。私の初夢は? 私の感じた地球の未来は?
日本の将来は? 高知の先行きは? を述べてみます。
昨年の10月末に「計測展2012 OSAKA、計測と制御で創る未来の地球」がグランキューブ大阪で開かれました。特別講演講師に招かれたのです。講演題目は「新エネルギー資源の使い方、 メタンハイドレート、地熱発電、そしてストレージ」です。後半の内容を見出しで紹介すると、5) 日本は資源大国(黄金の国、ジパング)、6) スマート・グリッドとビッグデータ、7) 事故は必ず起きる、8) 右肩下がりの下山の先は、です。メタンハイドレートが採れても成長戦略を基本に置くべきではないが論点です。
暮れの12月29日(土)、9:00~10:00にNHK総合で放映された「エネルギーシフトの挑戦 省エネ最新技術”自然エネ宝庫の日本、エイモリー・ ロビンスからのメッセージ」を見ました。ドイツやデンマークを例に挙げながら、「気象条件に左右される様々な再生可能エネルギーは各種の先端 技術との組合せで生きてくること」が骨子となっています。収益性を保ちつつ、エネルギー効率を上げること、再生可能エネルギーに恵まれた資源 大国の日本であるとの自信を持つこと、膨大な数の分散型エネルギー供給源のスマートな結合が優れているとの意識改革が必要なこと、従来の官僚 的・独占的なエネルギー政策の慣習を捨てて、オープンなものとすること、日本には世界をより健康で、安全で、心豊かな方向へ引っ張っていける 原動力をもっていること、などが論旨です。
12月16日の衆議院議員選挙では、当然のことながら、全ての政党が様々な景気刺激策を提案し、プラスの経済成長率を約束する公約ばかりでした。また、主要各国の指導者の交代が行われましたが、そこでも新機軸は出てはいません。勿論、直近の政策と長期的視野の政策とでは対象が異なり、仕方ない ことかも知れません。昨年、情報プラットフォームに{右肩下がりの下山の先は}
(No.298,7,2012)で述べたような危機感は何処に も見当たりません。さらに{人間社会もメタボでなければ}(No.302,11,2012)で長期的な目標設定の困難さを示しました。
元旦の高知新聞の「ズバリ!経済予測ダービー」では、6人の専門家の直近の2013年の経済予測を述べています。為替相場、日経平均株価、経済成長率などの予測です。連年ハズレの専門家は藤巻健史氏です。「水の入ったコップはテーブルの端まで来ている」と警鐘を鳴らしています。昨年に続いて経 済成長率を前期比4%マイナスと予測しているのです。危機感を持っているのは藤巻氏だけです。我々に経済学の勉強が必要です。
「池上彰のやさしい経済学」が目に止まりました。京都造形芸術大学で行った14回分の特別講義を ”BSジャパン”で年末から年初に掛けて再放送したものです。財政政策と金融政策との関連の重要性を示唆していました。「ブラックマンデー」や「リーマ ン・ショック」の話も印象的でした。確率統計の知識が重要であることも教えてくれました。この内容は日本経済新聞社から出版されており、年明 けに上下2冊を買ってきました。皆で勉強するには絶好の教科書と感じましたし、会員の中には専門家も居るはずと思いました。
ロングテール、ジップの法則、パレートの法則など、「ベキ分布」に関わる確率の知識が必要です。ベキ分布の具体例を示せば、乾燥したビス ケットを床に落としたとき、壊れた破片の大きさの分布です。小さな破片(粉)は無数、非常に大きな欠片(かけら)も混ざっています。巨大地震 や巨大事故は確率は低くても必ず発生することを示しています。「アクシデント、事故と文明」はポール・ヴォリオの著書です。ここで彼は「文明 は事故を発明する」と述べているとのことです。低確率巨大地震・津波や原発事故は何故想定外なのかを知りたいものです。皆で勉強する必要があ ります。また、「予言の自己成就」、「合成の誤謬」など、心理学との関わりも大きいようです。調べる必要があります。また、温故知新の実践と して、歴史の勉強も必要です。
ここで昨年のご挨拶の繰り返し、今年のご挨拶につないで行きます。この会は、メタンハイドレートを中心に、他の海底資源にも関心を向けて、技術開発・基礎 研究、インフラ整備に対する、高知県、高知県企業、高知県民の熟度を上げていくことを目的として発足いたしました。県民全員で勉強していきま しょう。
今後の会の展開方向は幅広いテーマについて活動するとしました。メタンハイドレートに限定するのではなく、より広い範囲を包括出来るようにしていくことが得策と考えています。県民を挙げて理解を深めましょう。
講演会だけではなく、講習会、実習・見学など形式にとらわれない活動を広く勧めていきす。皆様のお知恵を発揮して下さい。情報の共有の仕組みの構築とし て、ネット交流とオフ会の組み合わせを考えましょう。預託を受けた基金の有効な活用を検討しましょう。
県内外を問わず、活動している他の団体との協働を積極的に進めましょう。
「国際戦略部会」、「技術開発部会」などの未設置の部会の立ち上げを早めるための 支援・協力を行っていきましょう。国家プロジェクトと連携を密にしていくことが必要です。
本会の名称も広く考え直したいと思って居ます。どのような名称が望ましいか知恵を下さい。今年が発展につながる年であることを祈念いたします。
私の初夢は「世の中の問題には、受験勉強やクイズ番組とは異なり、専門家でも正解は出せないことを知り、それぞれが好奇心を持って調べ、意見を出し合い、 条件による最適解を決めている。ドイツやデンマークのように。」であり、「日本では高知がその先頭を走っている。」といったものです。人類の 軟着陸の手段として「メタンハイドレート」や「地熱エネルギー」を使いたいものです。高知から世界中に情報発信がで来る体勢を創りたいもので す。今年も宜しくお願いいたします。