今日のうた

思いつくままに書いています

二十二歳の自分への手紙 ~司馬遼太郎~1

2014-07-30 15:26:26 | ⑤エッセーと物語
NHK Eテレ「日本人は何をめざしてきたのか 知の巨人たち」
第4回は「二十二歳の自分への手紙 ~司馬遼太郎~」

 「どうして日本人はこんなにばかになったんだろう。二十二歳で敗戦を迎えた時の
  感想でした。
  昔は違ったろうというようなことを、もう私は本当に二十二歳の自分へ書いている
  手紙でした。
  そこからわたしの小説は始まるんです。
  『竜馬がゆく』もそうでしたし、『坂の上の雲』もそうでした。その後もそうでした。
  『日本人とは何ぞや』がテーマでした」

司馬は、私の父より1年早く生まれ(1923年)、父より2年早く亡くなりました。
(1996年) 享年72歳。
戦争に行った二人が、敗戦を22歳と21歳で迎えたことを考えると、
改めてその若さに驚きます。

私は歴史に疎く、また司馬の本は数冊しか読んでいません。
司馬の言葉を大局的に捉えることは難しく、未消化な部分も多々あります。
でも今だからこそ、司馬の言葉を書き留めて置こうと思います。

(1)1943年、学徒出陣

   何のために死ぬのかを悩み続けていた司馬に、次の質疑応答が胸に突き
   刺さる。ある若い将校が
  「本土決戦が迫ったある日、もし敵が上陸したとして、われわれが急ぎ南下する。
   そこへ東京都民が大八車に家財を積んで北へ逃げてくる。途中交通が混雑する。
   この場合はどうすればよろしいのでありますか」と聞いたところ

   大本営からきた少佐参謀は
  「軍の作戦が先行する。国家のためである。轢(ひ)っ殺してゆけ」といった。
   東京から避難して北関東に上がってくる人。そこにいる女の子、小さな子とか
   真っ先に死にます。死ぬために威張っていられる軍人・兵士は。
   ところがみんなのために死ぬんじゃなくて、みんなのほうが先に死ぬ。
   県民が先に死ぬ。何だろうと思いました。

   終戦の放送をきいたあと、なんとおろかな国にうまれたことかと思った。
  (むかしはそうではなかったのではないか)
   敗戦の時のこの思いが、のちの作家司馬遼太郎の原点となった。

   
(2)偏狭な日本人になりたくない
   
   司馬は、在日コリアンの鄭(ちょう)貴文から「朝鮮と日本の関係は古代では
   計り知れぬほど大きかったと思うのです。そういう主題で半学術雑誌のような
   ものを出すということは考えられないでしょうか」といわれ、
   「日本の中の 朝鮮文化」を出版する。

   外国の世界史を見たら、一番近い国のことを一番詳しく書いている。
   ところが朝鮮の歴史や文化はほとんど知らない。おかしいじゃないか。
   古代にこんなに友好的で、日本文化にたくさん古代の文化が生きているんだ。

   明治・近代以後、副産物が生まれた、日本は非常に偏狭になってきた。
   偏狭な日本人であるよりも、自分はアジア人でまずありたい
   アジア人の最も身近な存在は、朝鮮半島の人達だ。
   古代では非常に友好的だった漢族は、日本と同族ではないか。

(3)1910年の韓国併合について

   朝鮮半島では、35年に及ぶ日本による植民地支配が続いた。
   我々はいまだに韓国人・朝鮮人の友人と話をしておって、常に自分自身が引け目を
   感じておることは、堂々たる数千年の文化をもった、そして数千年も独立してきた
   独立国をですね、平然と合併してしまった。 合併という形で、
   相手の国家を奪ってしまった。

   こういう愚劣なことは、日露戦争の後で起こる。
   合併するというような、朝鮮人があと何千年続いても忘れない、
   そういうことを平気でやっている。

(4)坂の上の雲ミュージアム(松山市)の、展示場のあとがき

   日露戦争を境として日本人の国民的理性が大きく後退して狂躁の昭和期に入る。
   やがて国家と国民が狂いだして、太平洋戦争をやってのけて敗北するのは、
   日露戦争後、わずか四十年のちのことである。

   韓国併合した日本はやがて大陸に進出する。
   満州事変から日中戦争、そして太平洋戦争の時代を迎える。 
   2につづく (敬称略)


追記1
教科書を買って学び直そうと思ったら、下の定価762円の教科書が2592円でしか
買えない。増刷して頂けると有難いのですが……。
(2017年8月31日 記)

追記2
教科書が届きました。
半世紀以上前に中学生だった私は、まさか教科書がこんなに立派なものとは思いません
でした。A4サイズの教科書と増補が付いていて、おまけに箱に入っています。
定価は2400円と消費税が加算されて、2592円になります。
上に書いた定価762円は間違いです。
よく調べずにご迷惑をおかけして、申し訳ありませんでした。
カラーの写真や絵、そして新聞記事などの資料が多く、読み物としても楽しめます。
私は初めて復元した赤紙を見ました。
漢字にはルビが振ってあるので読みやすいです。
歴史がとても身近に感じられ、ひとことで言えば血の通った教科書です。
こんな教科書で勉強できる生徒たちがうらやましいです。
なぜ、いちゃもんをつける政治家がいるのか、全く理解に苦しみます。
私は学校で近代史を勉強せずにきてしまったので、秋の夜長に学ぼうと思います。
(2017年9月4日 記)


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