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赤目四十八瀧心中未遂

2020-02-11 11:08:11 | ⑤エッセーと物語
貧乏人からは絞れるだけ絞り取り、富裕層や大企業には手厚く処遇する。
これでは格差が拡がるばかりだ。
最近、こうした格差社会を扱った映画が目につく。
ケン・ローチ監督の「わたしは、ダニエル・ブレイク」、「万引き家族」、
「ジョーカー」、そして「パラサイト(ビデオ化されたら観ます)」・・・・・・。
観ていて胸が張り裂けそうになる。

この小説の主人公も、社会の底辺で生きている。
私は詩人の高橋順子さんの文章から、夫の車谷さんを知った。
車谷長吉(くるまたに・ちょうきつ)著『赤目四十八瀧(あかめしじゅうやたき)
心中未遂』を読む。

尼崎にたどり着いた主人公は、老朽アパートの狭い一室で
一日中、病死した牛や豚の臓物を切り刻んで串に刺している。
エアコンのない部屋で、腐臭がきつい。
そこで生活するうちに、様々な職業の人間を知ることになる。
彫物師、元パンパンをしていた人、ヤクザなど。
私小説のジャンルに入るようだが、そこで繰りひろげられる生活は
まるで節穴から覗いているように生々しい。
臓物から発する腐臭が、今も頭の中にへばりついている。
寺島しのぶ主演で映画化されているようなので、観ようと思う。

映画を観た。
小説にないエピソードや自然描写があり、またお金の額が違っていたりして
このようにして映画化されるのか、と興味深く観ていた。
ところが段々違和感が生じてきた。
最初にあった乾いた感じは終わりになるにつれて、まるで純愛物のような
小説とはかけ離れたものになっていったのだ。
寺島しのぶも最初にあった凄みが消えて、可愛いキャラになってしまった。
分かりやすさを押し付けるあまり、電車の中で彼女がキャラメルを食べるシーンは
全くもって無用の長物、と思う。
こうした分かりやすさがないと、日本アカデミー賞はもらえないのでしょうか、
岡田裕介名誉会長殿。
(第43回日本アカデミー賞で、「新聞記者」が3賞に選ばれた。
 今年は気持ちのいい風が吹いたようだ。
 2019年12月24日のブログ「新聞記者」です。)
         ↓
https://blog.goo.ne.jp/keichan1192/e/4eebc8757947115ed0f6aea37392782c


その中で勢子ねえさん役の大楠道代は、小説の世界そのままに生きていた。
この映画には2つのポスターがある。
①のポスターにクレームが付いて、②のポスターになったのだろうか。
①は小説の世界にふさわしく、②はこの映画の最後のシーンのような
清らかな純愛物のようだ。
あんなに小説では臭いが充満していたが、映画では全く感じなかった。
映画の自然描写は、観光案内のようにきれいでした。






















(画像はお借りしました)

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