トッペイのみんなちがってみんないい

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温かな少女の眼差し/絵本『ヨンイのビニール傘』

2010-08-02 00:53:46 | 絵本・児童文学
ヨンイのビニールがさ (海外秀作絵本)
ユン ドンジェ
岩崎書店

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 世界の絵本が紹介される中、韓国の絵本も紹介される機会が多くなってきています。この絵本は、いわゆる韓流ブームが起こるかなり以前の、1980年代に描かれた本だそうです。その頃、韓国は高度経済成長時代を迎えていましたが、まだまだ、庶民の生活は豊かではなかったと、物語の背景が本書の中で、説明されています。また、この絵本の中に出てくる「ビニール傘」というのも、同解説によれば、『日本でよく見かけるビニール傘とはちがっています。傘の骨は細い木で、ビニールもとても薄く、すぐに破けてしまいそうなものでした。布製の傘を買えない貧しい子どもたちは、このビニール傘を使ったのです。』と解説されています。

 この絵本に登場するヨンイは、韓国の小学生の女の子です。休み明けの月曜日の登校、雨がざあざあと降っていました。ビニール傘を指しての通学の途中で、文房具屋の傍の道端に、物乞いのお爺さんが、ずぶぬれになって眠っている姿を見かけます。お金をめぐんでもらうへしょげた空き缶は、雨水であふれていました。心ない子ども達は、寝ているお爺さんの身体をつついていきますし、文房具屋のおばさんも迷惑そうに不満を口に出していました。
 始業前の朝の自習の後に、ヨンイは、誰にも見られないように、学校を抜け出して、まだ、雨の中を眠っているお爺さんに傘をさしてあげました。

 下校時には、すっかり雨も上がり、空は晴れ渡っています。ヨンイが、あのお爺さんの眠っていた所に行くと、壁にビニール傘が立てかけてありました。「おじいちゃんが持っていってもよかったのに」

 最後のページに、傘をさして帰っていくヨンイの後ろ姿が描かれています。彼女の表情は観ることはできませんが、きっと、読者の皆さんの頭の中には、見えるはずですね。何気ないような情景を描いた作品ですが、人間の持つ優しさが、お爺さんも含めて描かれています。


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