キャラメルの木 (講談社の創作絵本)上条 さなえ講談社このアイテムの詳細を見る |
あの不幸な戦争の記憶を持った世代が、だんだんと減っていきます。次の世代に語るべき話も、語られることなく消えていったものが少なくないと思われます。
子ども達には、絵本という形でも、戦争の記憶が伝えられて行って欲しいと思います。
本書のキャラメルの木というのは、当然、実在しない木です。
一人暮らしのおばあちゃん、正確にはチワワのクッキーと暮らしていますが、孫のしんのすけが泊まりに来ました。まだ、おねしょの治らないしんちゃんは、お母さんから、これから生まれてくる弟か妹に笑われると言います。
おばあちゃんの家に着くと、おばあちゃんは仏壇にキャラメルをお供えしました。
しんちゃんは、そのあと、おばあちゃんから、キャラメルの木の話を聞くことになります。
戦争が始まってしばらくすると、子どもだったおばあちゃんの住む村にも、食べ物がだんだんと少なくなっていきました。おばあちゃんには、高氏という弟がいましたが、病気になって寝込んでしまいます。薬もなく、毎日ひもじい思いのなか、たかしの夢は、戦争の前に一番好きだったお菓子のキャラメルを食べることでした。でも、戦争中は、お菓子など食べることができませんでした。身体が弱っていくたかしに、おばあちゃんはウソをつきます。庭の木は、実はキャラメルの木で、もうすぐ、キャラメルの木の実がなるって。
結局、やせ衰えていく一方だったたかしは死んでしまいました。
それから、おばあちゃんは、このウソをついたことがいつも頭を離れることがありませんでした。
しんちゃんに妹ができてから、3日後に、おばあちゃんが倒れたという知らせが来ました。
病院で寝たきりになったおばあちゃんのもとに、しんちゃんとパパは、おばあちゃんの家のあのキャラメルの木の枝に、たくさんのキャラメルをぶら下げたものを持っていきました。
その木を見せながら、おばあちゃんはウソつきではなかったんだと、しんちゃんがいいました。おばあちゃんの目から、涙が流れ落ちました。
まだ、しんちゃんはおねしょをしていますが、クッキーを抱いて、朝、おばあちゃんの写真の前に、キャラメルを一粒お供えしました。