神なる冬

カミナルフユはマヤの遺跡
コンサドーレサポーターなSFファンのブログ(謎)

[SF] 任務外作戦

2013-04-09 22:48:09 | SF

『任務外作戦(上下)』 ロイス・マクマスター・ビジョルド (創元SF文庫)

 

《ヴォルコシガン・シリーズ》の最新巻。今度はなんとラブコメだ。

これまでもコメディ要素が強かったシリーズだけれど、今回は特にコメディ寄り。しかも、ベタなラブコメあり、ハチャメチャ系のドタバタありでもうてんやわんや(笑)

原題は『A CIVIL CAMPAIGN』で、なかなか含蓄があるなと思っていたら、副題が“A COMEDY OF BIOLOGY AND MANNERS”だそうで。そのままストレートじゃないか。

《ヴォルコシガン・シリーズ》としては、これまでマイルズが関わって来た人々のオールスターキャストという嬉しい展開。何しろ、マイルズが遂に結婚しちゃうわけだしな。

クローンのマークもすっかりヴォルコシガン家に馴染んで、恋人のカリーンとドタバタの嵐の目になる役割。

聴聞卿や国主代行としての仕事も、もちろん描かれていないわけではないが、それは二の次。何しろ、最後に事件を解決したのは、マイルズじゃなくって、なんとイワン(のバカ)だったというざま。マイルズはエカテリンにすっかりまいってしまったせいか、いつになくキレが悪い。マイルズは周りに振り回されるだけで、こちらも婚礼なグレゴール皇帝の方が活躍しているんじゃないか。そんなんじゃ、彼女を守りきれないぞ。

一方で、SFとしては副題の通り、生命工学が発展した先で出会うであろう倫理、慣習、法律の問題を取り上げている。卵子提供者の同意を得ない人工授精、DNA検査で明らかになった血統の断絶(つまりは不倫)、そして、性転換による女性の男系社会への挑戦……。あと、バター虫(笑)

これらの問題は、フィクションの世界だけではなく、現実問題として明日にでもおこりそうな事件ではないかと思う。このような問題に対して、どういうスタンスで臨むべきか。まじめに考えている人はどれだけいるだろうか。

実はこのネタは、進歩的な外惑星出身であるマイルズの母親が、封建的男系社会の貴族であるマイルズの父親と、いかにして出会い、文化のギャップを埋めて結婚に至ったかという長い話の一端でもある。

そして、バター虫といえば、我々はその前に、遺伝子組み換え作物に対してどのようなスタンスで臨むかという点をはっきりさせなければならない。遺伝子操作で生まれた怪しげな虫のゲロを食えるかどうかなど、その遥か先の議題だろう。

まぁ、そんな難しい話は無しにしても、とにかく楽しい話。懐かしきタウラ軍曹なんかも登場し、意外な人が恋に落ちたり、いわば、シリーズのボーナストラックのようなもの。もう、これで完結でもいいよと思えるくらい。

しかし、まだ未訳の作品が2冊も残っている。おチビなマイルズの冒険はまだまだ終わらないようだ。