《星界》シリーズ特集。
《星界》はそんなに思い入れのあるシリーズではなかった。アーヴ語も、返ってややこしいだけであまり魅力的に見えなかった。それでも、《星界》を読み続けていたのは、キャラクターやアーヴ語のような設定だけではなく、スペース・オペラとして面白いと思っていたのだろう。
しかし、新刊が出なくて久しくなり、すっかり忘れてしまっていた。もう出ないものだと思っていた。
それが遂に、復活である。SF作家クラブ50周年、ハヤカワ文庫JA 40周年ということもあるのか、いろいろなシリーズの新刊が企画、出版されている。これもその一つかと思いきや、本格的に復活するらしい。今回の『星界の戦旗V』で第一部完。続いて第二部開始が宣言された。
表紙イラストに引っ張られてラノベ的イメージが強い作品だが、ラノベ界の変遷によって、今の時代のラノベとは言い難い。だからこそ、ハード・スペース・オペラとしての《星界》に期待したい。
△「介入 星界の断章」 森岡浩之
アーヴらしいアーヴ。理屈はわかるが、感情がついていかないのもわかる。アーヴがどういう存在なのかということがわかりやすい。
○「エンジン」 ジェイムズ・S・A・コーリイ
成功したが故の事故という皮肉。長編の方も読んでみようか。
○「荒巻義雄のブヨブヨ工学」 タヤンディエー・ドゥニ
今年の日本SF評論賞はなんとフランス人。選評では日本語についての指摘が多くあったが、さすがに雑誌掲載分は修正済みなのでまったく違和感なく読めた。残念なのが、題材である荒巻義雄の「柔らかい時計」が日本ではいまいちメジャーじゃないところ。同時掲載してくれるぐらいのことがあっても良かったんじゃないのか。