神なる冬

カミナルフユはマヤの遺跡
コンサドーレサポーターなSFファンのブログ(謎)

[SF] ペンギン・ハイウェイ

2010-06-11 22:42:35 | SF
『ペンギン・ハイウェイ』 森見登美彦 (角川書店)




郊外の新興住宅地。おそらく、地元の中心部よりも隣の大都市に近いような場所。札幌で考えれば、昔の石狩町とか北広島町みたいな感じか。何も無いところにぽつんと建つ家から、隣の家が建ち、マンションが建ち……。

そこに突然現れたペンギンの群れ。こうもり、シロナガスクジラ。ペンギンたちがどこから来たのかを研究する小学校4年生のこまっしゃくれたガキ、アオヤマくんの不思議な物語。

アオヤマくんはなんでも研究し、ノートに書き留める科学の子。ちょっと自信家だが、子供の頃はそんなもんだろう。昨日よりもちょっとだけ偉くなる。そうすると、大人になる頃には3748日分偉くなっているに違いない。まさにその通りだ。がんばれアオヤマくん。

ペンギン、ジャバウォック、〈海〉、そして、お姉さん。アオヤマくんと、ウチダくん、ハマモトさんの3人が解き明かした世界の秘密。ペンギン・ハイウェイ、プロジェクト・アマゾン、アオヤマくんが想像する世界の果ての風景。

子供時代、世界は謎に満ちていた。この水路の上流はどこに行くのか。この道はどこへ続いているのか。真夜中の街はどんな風景なのか。ご飯を食べないとどうなってしまうのか。それが今はどうだ。謎を謎と思わず、見過ごしてしまっていないだろうか。とにかく、アオヤマくんの感性がまぶしすぎる。

脇役のはずのウチダくんもすごすぎる。宇宙に憧れるけど、ブラックホールを怖がり、センスオブワンダーに鼻の奥が痛くなる少年。

おませなハマモトさんも科学の子だ。チェスが好きで、ちょっぴりだけオトナで、でもおっぱいはない(笑)

歯科医院のお姉さんもたいへんにステキだ。子供たちに真摯に向き合い、けして抑え付けず、邪険にせず。世界と自分の謎に興味を持ちながらも、恐れている……。

どうして登美彦氏は大学生を書いても、小学生を書いても、はたまた狸を書いても、かくあるべしという理想像を描くのだろう。自分も子供の頃はこうありたかった。思い返せば、ただの生意気な子だったよ。今でもそうだけど。

アオヤマくんは、このまま成長すると、立派な理系大学生になるだろう。そして京大なんぞに行ってグダグダの学生生活をおくるに違いない。いや、そうに決まっている。こんなモテモテ期に気づかないなんて!